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台湾の矯正歯科事情と思いがけない出来事①

前回の記事でお話しした通り、私は歯の矯正器具をつけたまま台湾へ来たため、ほかっておくわけにもいかず、どうしても矯正歯科を探さなければいけませんでした。しかし半ばやりかけの矯正を続きから見てくれる矯正歯科を探すのは簡単にはいきません…。

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台湾で本格的に住む家に引っ越して間もなく、私はネット上での評判もまあまあ良い家の近くの矯正歯科で相談の予約をした。ここの歯科では受付費(掛號費)も医師への相談料(諮詢費)もレントゲン(X光片)による検査も全て無料で請け負ってくれた。(いくつか病院を回って後から気付いたが、こんなに良心的な歯医者は他にない。)中国で矯正を始める前に撮ったレントゲン写真や資料の全てを私のスマホに送ってもらってあったので、それも見せた。

その結果、この病院で勧められたのがインビザライン(隱適美)への乗り換え。見た目を気にしなくても良い最近人気の透明なマウスピース矯正であり、台湾でもこちらが主流になってきているらしい。話を詳しく聞くと、今私が付けている矯正装置の取り扱いがこの病院にはなく、選択肢としては装置をこの病院で取り扱っている金属ブラケット(傳統矯正)に変えるか、インビザラインに乗り換えるかの二択だということ。しかし、金属ブラケットに変える際の費用は13万元インビザラインだと17万元かかる(インビザラインへの乗り換え割引適用後)と言われた。私が中国で最初に支払った矯正費用が台湾元にして約15万元なので再び同じ費用を払わなければいけないのは私にとって痛かった。

しかし、私のビザの期限が残り11ヶ月であり、期間内に矯正を終わらせるのは厳しいため、インビザラインであれば日本へ帰国後もマウスピースを送ってあげることができるという説明には納得がいき、私の心も少しインビザラインに揺らぎ始めた。とりあえずまだここが1軒目だったので、他の病院にも聞きに行こうとその病院を後にした。

近くにあった他の矯正歯科2軒も尋ねてみたが、受付に1000元、レントゲン検査に3000元かかると言われたため、だったら評判の良い矯正歯科を厳選して相談に行ったほうが良いなと思ったので家に戻った。

私にとって最もお金や時間をかけずに矯正を続ける方法は、今つけているのと同じ矯正器具を取り扱う矯正歯科を探すことだった。しかし、これはとても骨の折れる作業である。私はまず、台北市内の評判の良い矯正歯科を13軒ピックアップし、片っ端から電話をかけて私のような複雑な事情を持つ患者を受け入れてくれるか尋ねた。その結果、3軒には最初から断られ、残りは病院に行って医師に相談してみないと分からないと言われた。私は同じ矯正器具の取り扱いがあるかどうかが聞きたいだけなのだが、受付で聞くだけでは分からないと言われてしまった。大体どこの歯科も相談料1000元、レントゲン等の検査料が3000元と言われたので安易に相談に行けるわけではない。再び矯正歯科の厳選作業が始まった。

厳選後行った初めての矯正歯科でもまたインビザラインを勧められた。ここの医師からは、日本へ帰国後はマウスピースを台湾から郵送するのではなく、紹介状を書くから日本でまたインビザラインを取り扱う矯正歯科を探したほうが良いと言われた。本来であれば、定期的に診察へ行き歯の様子を確認しながらマウスピースを受け取るからだ。残念ながら結局ここでも同じ矯正器具の取り扱いはなかった。ここで提示されたインビザラインの額は(乗り換え割引適用後)18.5万元。幸い相談料は取られず、受付料の100元だけだった。この時私は既に今はめている矯正器具で矯正を続けることを諦めかけていた。同じ矯正器具を取り扱う矯正歯科探しなんて無謀なんじゃないかと思い始めた。

しかし、次に行った病院で私の状況が一変。ここは台北でも最も評判の良い矯正歯科の一つだった。今までも多くの患者がこの病院にお世話になっており、評価の数も他とは桁が違った。受付へ行くとまず受付料と相談料で1150元の支払いを要求され、ここは金儲け目的の矯正歯科なんじゃないかと失礼ながら疑ってしまった。しかし評判が良いため、相談してみる価値はあると思い、言われるがまま支払いを済ませる。

診察へ案内されると60代くらいの男性医師が出てきた。今まで行ったところは30〜40代くらいの若めの医師だったため、新鮮だった。診察台に座るよう指示があり、早速医師が私の歯を見る。起こされると医師が一言、

「うちは同じ矯正器具の取り扱いがあるから、このまま続けてあげることかできるよ」

と…!!
今まで私がずっと聞きたかった言葉である。私は興奮を抑え、聞き漏れのないよう予め準備しておいた質問事項を書いた紙を取り出すと、医師が覗き込んできた。そこには「総費用はいくらほどかかるか」「中国にある最初の病院で矯正費用を全て支払ってしまったが、コロナの影響でその病院へ戻れなくなり返金もしてもらえないという経験をしたため、都度払いにしてもらえないか」等の質問が中国語で書いてある。そして、それを見た医師がありえないことを言い出した。

「私はお金を取らない。」

私は自分が聞き間違えたのではないかともう一度聞いた。しかし医師は、

「最初の病院でお金払ったんでしょ?だったらうちではお金はいらない。」

と言う。
その瞬間私はこの病院の全てを疑い始めた。最初にお金を取らないだけで後から高額の治療費を請求されるのではないか。私の歯が何かの実験台にされるのではないか。治療に失敗しても何も責任を取ってもらえないのではないか。一瞬にしてたくさんの疑問が浮かびあがってきた。

...その後私がどうしたかはまた次回お話しします。


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