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新たな呼吸機能の最適化デバイス「Airphysio」の生理学的効果?

LIFTING THE APEXの記事ではこれまで呼吸に関連したものをいくつかリリースしてきました。

リリースしてきた情報の中でも代表的な呼吸法として「ラングパッキング」が最も知名度のある方法となっているのではないでしょうか?

ラングパッキングをご存じない方は以下のリンクからご確認ください。

競技者であるほど、スクワット・ベンチプレス・デッドリフトにおける呼吸の重要性を理解しているのではないでしょうか?
吸気の仕方やセットアップによって試技の精度が変わってくるのが事実です。

呼吸方法というのは、言わばセットアップに近いものであり、即効力があります。

ですが、呼吸機能の向上にはトレーニングが必要であり、即効力がなくなります。

一般的に有名な呼吸機能を向上させるデバイスといえば

「パワーブリーズ」

が有名どころではないでしょうか?

このパワーブリーズは呼吸機能の中でも“呼吸筋”を強化するためのデバイスです。

私は長く呼吸リハビリテーションの分野に携わってきましたので、呼吸筋トレーニングであるパワーブリーズは呼吸筋力を向上させることに効果的であるとしたエビデンスを十分に有したものであると断言できます。

ただ、「呼吸筋力」の向上以外にも呼吸機能を最適化するための視点がもう一つあります。

呼吸機能には外的な要因と内的な要因の2つが関わってきます。

1つ目は外的要因として、呼吸筋力(吸気の力と呼気の力)

2つ目は内的要因として、肺実質の最適化が考えられます。


呼吸機能というと外的な筋力などに目が行きやすいですが、内的な部分からのアプローチも競技者レベルでは必要になってくる可能性があります。

この呼吸機能を内的に向上させるデバイスである

『Airphysio』

について、どの様に呼吸機能に作用するかを解説していきます。


1. 肺の構造について


“肺”の構造は左右の肺実質と気管支部に大別できます。

まず喉仏にある“気管”部分から左右の肺へ枝分かれする“気管支”に分岐します。

その後、気管支は何度も何度も分岐を繰り返して細く小さくなっていきます。

最終的に気管支は23回も分岐を繰り返し、その末端部分に位置するのが

「肺胞」

といわれるものです。

私たちは呼吸で酸素を肺内に取り込みますが、この酸素が体内(血液)に吸収され始めるのは気管支が約17回分岐した呼吸細気管支から23回分岐する肺胞までの間に限られています。この領域でガス交換が行われることで、酸素は体内に、二酸化炭素は体内から肺胞内へ移動します。

極めて重要なこととして、気管支の第17分岐までの長い経路はガス交換に一切が関与しないということと、17~23分岐の間だけがガス交換を行えるということです。


2. 肺の末梢


肺の末梢である『肺胞』について簡単に解説していきます。

肺胞では、当たり前ですが空気が出入りします。

入ってきた空気から酸素を受け取るために、肺胞には毛細血管が張り巡らされています。

その際に肺胞が“潰れない”ようにするために、我々の肺胞には肺サーファクタントという肺表面活性物質が潤っています。
この肺サーファクタントは肺をプルンプルンにする成分であり、圧力が加わっても肺胞が潰れないようにする役割があります。

肺胞が潰れる(専門用語で虚脱と言います)と、その肺胞領域ではガス交換(酸素の受け渡しと、二酸化炭素の受け取り)ができなくなり呼吸機能を果たさなくなります。

人間の身体にはいくつか虚脱領域はありますが、問題になることはありません。

これが病的状態(例えば、慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎、様々な肺炎)を引き起こし、肺胞虚脱領域が病的に拡大していけば、生命を維持できないほど危険な状態となってしまいます。

3. PEEPとは?


Airphysioを理解するためにはもう少し専門的な知見が必要となります。

肺胞虚脱が深刻化した入院患者さんなどは、酸素の取り込みや二酸化炭素の排出が体内でうまく行えず、体内の酸塩基平衡が破綻して死に至ります。

そうならないように、人工呼吸器などで肺胞虚脱を防ぐ治療が行われます。

代表的な物として

PEEP(呼気終末陽圧:Positive End-Expiratory Pressure)

が用いられます(人工呼吸器の使用ではマスト)

物凄く簡単に説明すると、息を吸って、息を吐く時に肺胞は萎んでいきます。
この萎んでいくときに病的肺は潰れてしまいます。

そうならないようにPEEPでは息を吐く最後の時に人工呼吸器が“抵抗”を与えます

抵抗を呼気の最後で与えることで肺が潰れないよう一定の圧を掛けておく

これがPEEPの役割です。

そうすることで、病的肺は虚脱を起こさず、ガス交換が遮断しないようにしています。


4. 呼吸仕事量とは?


この肺胞構造とPEEPが競技レベルで重要となってくるのはここからです。

肺が潰れないようにするPEEP

Airphysioのコンセプトとしては、健常者でも分泌物の移動促進や、肺胞の拡張が起こり、競技レベルでの呼吸機能向上に貢献すると考えられています。

健常者でもいくつかの領域で肺胞の拡張が促せた場合、それがどの様にして呼吸機能の最適化につながるのかは呼吸仕事量という考え方が関係してきます。

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