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事業再生のこと−6

個人店主が経営者になるハードルは高い。
経営というのは勘でするものではない。
「商売」と「事業」が別のものであるとわかっている人は少ない。
現在の若者達が我々の世代よりも有利なのは、我々の事業構築が積み上げ型なのに対して、これからの事業構築はネットワーク型であり未来先行型であることだと思う。

我々の時代は「信用」は積み上げないと作ることが出来なかった。現在でも多くの企業はこの方式に頼っている。
しかしここ数年、起業する事業者はプランそのものがいかに価値があるかを売り込んで多額の資金を呼び込む。
ただし、呼び込んだ資金を効率よく使い相乗的に効果を上げることができなければ経営者としての資質を疑われる。

10を20にせよ、20を30にせよ、という積み上げ型ではなく10を100にせよ、100を10000にせよと投資家に値踏みされる。
積み上げ型が悪いわけではない。
積み上げ型の事業は縮小するときも引き算になる。それに比べて相乗型の事業は縮小するときは割り算になる。成長するスピードと縮小するスピードがとても早い。成長し、維持するためには「シェアの確保」が決め手になる。
相乗型の事業はいかに早く、他社よりも同系列の事業の中でシェアを独占できるかが企業の安定の要になっている。
同じ性能の商品をどれだけ広範囲に大量にユーザーに渡すことができるか?
そうでなければ他社が真似のできないシステムを作り上げて、性能を飛躍的に改善し、他社が使えないシステムを作り上げることでシェアを独占するしかない。

他社が介入してきたときに、自分達はもうすでに次のステップに進んでいる必要がある。
積み上げ型の事業に利点があるとすれば、投下するべき資本を手に入れるときに業績が手堅ければ確実に必要な資本を動かせる点だろう。相乗型の事業には投資そのものにリスクがある。
その事業を確実に大きくしようとする資本は積立型に、多少のリスクは承知の上で飛躍的に利益を望むのなら相乗型に投資を図る。

最近では積み上げ型の事業であってもある程度のリスクを覚悟しなくてはならない。リスク要因の幅が大きすぎてどこからリスクが降りかかるか予測が難しい時代になった。
一度、既存の資本主義や社会のシステムから事業を切り離す必要があるのかもしれない。

現在は次々と相乗型の事業が現れているが、これらが淘汰されると再び積み上げ型の事業に変貌するかもしれない。そのことを考えると「安定成長型」の骨幹となる事業と「投資成長型」の実験的事業のハイブリッドな組み合わせがこれからの主流になっていくのかもしれない。

事業を起こすときの環境は様々だから、周りの環境を良く観察し考えてどんな事業形態が今ある環境で成長させることができるのか?を熟考する必要があるけれど、その事業がある程度成長したなら次にどこに投資をするべきかを考えた方が良い。
我々の事業も今は成長を続けているが、このまま成長し続けるとは考えていない。現在の方法ではいずれは頭打ちになるし、それ以上大きくするメリットは少ない。前述の市場を独占するような規模にすることにメリットのある事業形態ではない。

私たちの事業は良い均衡状態を維持することが目的で、そのためには市場を少しステージを上げる必要がある。

しかし、今後社会に必要とされ大きく成長させたいのなら、もっと根幹の社会に影響を与えるような事業を手掛けなくてはならない。そのことで企業価値が上昇し、新しい市場を生み出すことができるだろう。まずはそれが可能になる企業や事業の規模を確立させることが先だ。

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