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波乱万丈な僕がタルト専門店の店主になって再びクリエイターを目指す理由-25

「菓子店」はどこまで大きくなれるのか?」

2018年から始まったカフェはタルト専門店として生まれ変わり経営の変革は着実に進んでいた。2019年の末に書き上げた「経営計画書」の目標数値を大きく超えて実績を生み出していた。その業績の拡大は僕たちの想像を超えるような速さだった。コロナ禍にありながら幸運に恵まれていた。

小さな個人事業の店舗が2〜3年で大きくなってゆく過程で様々な軋轢が起こり始めていた。それまで行ってきた方法では事業規模に見合わない部分が生じ始めた。僕たちは自分たちの背丈を超えた企業との取引によって事業を拡大することができた。だから僕たちもそれなりに背伸びをして体裁を整える必要がある。

ここからは未来の話になる。問題はいくつもあるけれど、大切なことはわかっている。

「財務管理のシステム化」「財務バランスの正常化」「減価率と損益分岐点の再計算」「仕入れ在庫管理のシステム化」「広報宣伝力の強化」「生産力の強化」「組織の法人成り」etc.

僕たちが特に注目して力を注がなくてはならないのは「財務強化」だった。多くの融資を受けていて財務バランスが崩れている。資産のうち負債の割合が増えている状況を固定資産やを増やしてバランスを取らなくてはならない。そしてそれは2〜3年後に次のステップに向かうための布石となることがわかっていた。今の僕たちは売上と利益を伸ばしながら、社会的信用を得て次の行動に移さなくてはならない。それは2つ目のセントラルキッチン設営に向けての道筋だった。

僕たちの店舗の売り上げは2019年から2020年には約2倍。2020年から2021年には2.3倍。そして2021年から2022年には約1.8倍(予測)に増加する予定。つまり毎年約2倍の成長を続けている。2019年〜2022年にかけては実に約10倍に成長することになる。

僕たちにはある決め事があった。ただ単に会社を大きくすることだけを考えるのならば、多額の資金補助を得て機械化を推し進めてオートメーション化をしてゆけば良い。多くの上場している製菓メーカーはそうして大きくなっていった。でもそれって働いている人たちは「幸せ」なんだろうか?「やりがい」があるんだろうか?おそらく手作業によるものづくりをしている中小事業者の多くが一度は通る過程なのかもしれない。「効率性」を重視すればオートメーション化やデジタル化は必要なことだろう。問題は「自分たちが作っている」という肌で感じる実感と「効率性」「価格への反映」のバランスだった。僕たちはとことん生産性の効率を良くするというのではなく、従業員みんなが「やりがい」と「幸せ」「実感」を持って働ける職場作りを優先することにした。

それでも僕たちは強く、大きくなっていく必要があった。そのためには新しい企業の形を追い求めなくてはならない。

製菓業には「セントラルキッチン」が必要だ。そして多くの場合、そこに販売店が併設されていることが多い。例えば「セントラルキッチン」は何店舗分の商品供給が可能なのだろうか?大きな企業では巨大な「セントラル工場」があり、そこから何十店舗もの商品を供給している。場合によっては何百店舗、何千店舗への供給をしている。でも僕たちはその道は選ばないことにした。それには二つ理由がある。一つは地球温暖化による災害の多発。そしてもう一つは前述した従業員の「やりがい」と「幸せの実感」のため。僕たちはこの短い経験の中で現在の生産体制の規模がちょうど良い規模であると実感していた。それは離職率にも表れている。これまで就業して翌日に辞めたりする人たちや卒業する学生たちは別にして、現場で仕事を始めた人たちはほとんど離職せずにいた。手でものを作る喜びや充実感、学習して出来なかったことが出来るようになることの達成感を残しながら事業を拡大するにはどうすれば良いか?そのための道筋を考えていた。「製菓メーカー」ではなく「菓子店」として大きくなる方法。それが目標だった。

それが、サテライト型事業展開だった。

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