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ブランディングのメモ帳-4

「お客様を惹きつける『意図』をブランドに込める」

ブランドを立ち上げる時に誰もがいつも悩むことがあります。それは「商品」が先か?「顧客」が先か?ということです。

「ブランド」とは「良い商品」とその商品を好む「顧客」との結びつきで成立します。その成立過程では「良い商品」が先に生まれ、その商品に相応しい「顧客」が集まって自然発生的に「ブランド」が生まれる場合と、先に「顧客層」の嗜好性に合わせて「商品開発」をしてその嗜好性の「顧客」を囲い込んで「ブランド」を成立させる場合があります。

「商品」が生み出されるとき、それを製造する事業主の「意図」が大きく反映されます。その商品が持っている特徴が「高級感」であったり「利便性」であったり「可愛らしさ」であったり「先進性」であったり「ナチュラル感」であったりするのは製造者が意図的に加えた特徴であるとすると、その事業主の思惑や嗜好性が反映するのは当然のことです。それが製造工程でたまたま反映されたものであるか?あるいはそれを反映させるために意図的に創造したものであるかは状況に応じて様々だと考えられます。ただし「ブランドが立つ」という言い方ではなく「ブランドを立てる」という言い方をする場合はそれが意図的であるということを意味します。ではまた村のチーズ店の話で例えてみましょう。

「村のチーズ店」ストーリー5(ブランドが立つ場合)

その村は片方を海、もう片方を山に囲まれていました。そしてそれぞれ海の村、山の村と呼ばれていました。海の村は海産物が豊富で魚や貝、エビやカニが良く採れました。村の人たちはそれを大きな鍋で豪快に料理してトマトソースで味付けしていました。その料理は海の村の名物になっていました。山の村は農業が盛んで様々な野菜や果実を使って料理を作りました。秋になると山には美味しいキノコがたくさん生えて、村人たちはそれを採ってきてたくさんの野菜とオリーブオイルであえてサラダを作りました。それが山の村の名物でした。海の村と山の村の間に小さなチーズ店がありました。そこの店主は頑固ですが働き者で一種類のチーズだけを丹念に作っていました。そのチーズは時間をかけて熟成され濃厚な旨味と塩気の強い味が特徴でした。ある日海の村の村人が通りかかりました。「そのチーズ分けてもらおうかな?」一切れのチーズを持って村に帰りました。家では今日もあの海鮮鍋を食べました。その残り汁にご飯を入れて雑炊を作りました。「そうだあのチーズを入れてみよう」そしてそこにチーズを入れると芳醇な香りが広がりました。一口食べてみるとこれまで食べたことがない美味しさでした。海の村人たちは噂を聞いてそのチーズ店に群がるように殺到しました。こうしてそのチーズは海鮮料理にはなくてはならない材料として飛ぶように売れるようになりました。

それでは意図的にブランドを立てる場合はどうでしょうか?

「村のチーズ店」ストーリー6(ブランドを立てる場合)

海の村と山の村の間にはもう一件チーズ店がありました。そのチーズ店の店主は頑固者のチーズ店の店主の弟でした。チーズの製法は兄と同じ先祖代々受け継いできた伝統的な手法でした。チーズの味は兄のお店のものに引けは取りません。でも兄の店が有名なのでチーズの売れ行きはイマイチでした。弟は一つだけ気が付いたことがあります。兄のチーズは海の村では良く売れるけれど山の村では全く売れなかったのです。弟は山の村にチーズを持って行きました。でも山の村人たちは怪訝そうにこう言いました「そのチーズ知ってるけど塩辛くって山の幸には合わないんだよ。新鮮でフルーティな山の幸にはもっと甘みがあって熟成していない方が良い」弟はお店に帰って新しいチーズの加工に取り掛かりました。山の村人に合わせたさっぱりとした甘味の強いチーズを完成させると、再び山の村に出かけました。「うん、美味しいね。山の幸にぴったりだよ」こうして弟の店に山の村から客が押し寄せました。弟の店が有名になると海の村からも客が来るようになりました。海の村人には伝統的な味のチーズをすすめました。こうして弟の村は国じゅうで有名な店になりました。

弟が成功したのは、別の顧客(山の村人=ターゲットユーザー)に合わせた商品開発をしたからです。それまで作っていたチーズは品質は兄のチーズに劣っていませんでしたが、兄のチーズはすでに市場を独占していました。新しい商品を意図的に開発することで兄の市場独占を打破することができました。

ブランドの初期段階では柔軟な視点が必要です。そして開発した商品やブランドはターゲットユーザーを裏切らず期待に添わなくてはなりません。

これまでは小さな村のお話でしたが、次はもう少し大きな商圏について考えたいと思います。


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