見出し画像

こんな赤ずきんちゃんは嫌だ(だけどハッピーエンド)

あるところに、赤ずきんちゃんがいました。

スーパーの野菜の袋のテープを貼ってみたら、わりとかわいかったので。

赤ずきんちゃんは、森のおばあさんの家に行きました。

「おばあさん、こんにちは。赤ずきんです」

するとおばあさんは言いました。

「ケーキは?」

「・・・ないです」

赤ずきんちゃんは、なんだか悲しい気持ちになりました。

次の日赤ずきんちゃんは、ケーキ屋で働くオオカミさんのところに行って、おばあさんの家での出来事を話しました。

オオカミさんは言いました。

「どうしておばあさんのおうちに行こうと思ったの?」

赤ずきんちゃんは言いました。

「今のうちからこの村で1番のお金持ちのおばあさんのところに遊びに行ってたら、お正月にお年玉をたくさんもらえるかなと思って」

「ふむふむ」

オオカミさんはうなずきました。そして言いました。

「あのおばあさんはお金持ちだけど、ものすごくケチなんだ。きっとお年玉はもらえないと思うよ」

「えっ!そうなの!?」

「もしお年玉が欲しければ、山のおじいさんのところに行くといいよ。山のおじいさんは優しくて、面倒見がいいんだ」

「そうなんだ!オオカミさん、ありがとう」

赤ずきんちゃんは自分用のケーキを1つ買って、うれしそうに帰って行きました。

その日の夜、オオカミさんはおばあさんの家にお金の相談に行きました。

「おばあさん、こんばんは。オオカミです。ケーキを持ってきました」

「おやおや。いつもありがとう」

このオオカミさん、自分のお店を持つのが夢で、ケーキ職人になるために色んなところで修行を積んできました。

だけど「あのケーキ屋さんに行くと、オオカミに食べられるから絶対に行っちゃダメだよ」といった噂をされることもあり、何度も悔し涙を流してきました。

それでも努力して腕を上げていきます。やがて森のおばあさんと出会うこととなります。

おばあさんは元はバリバリの経営者。ケーキが大好きなおばあさんは、オオカミさんのがんばりを知って、無料で起業相談を受けていました。

おばあさんは、経費を削るためのアドバイスをします。

「新しいお店の見積だけど、内装にかかる費用が高いのが気になるの。私の知り合いに、小規模店舗向けにコストを抑えて素敵な内装デザインをしてくれる人がいるから、今度紹介しようかしら」

おばあさんからとっても良くしてもらったおかげで、オオカミさんは念願のケーキ屋さんをオープンすることができました。そしてたちまちケーキ屋さんは大人気になりました。

最近は家にこもりがちだったおばあさんも、オオカミさんのケーキ屋さんへとたびたび出かけるようになりました。そしてオオカミさんやケーキ好きのお友達と楽しい時間を過ごしました。

さてさて、山のおじいさんのところに足繁く通った甲斐があって、赤ずきんちゃんはお年玉を5万円貰えました。

「おじいさん、どうもありがとう!」

赤ずきんちゃんはにっこり微笑みました。

おじいさんは言いました。

「喜んでもらえてうれしいのう。ところで、お年玉で何を買うのかい?」

赤ずきんちゃんはキラキラした表情で答えました。

「夜行バスで東京に行って、渋谷で新しい赤いずきんを買うの!!」

おじいさんは少し戸惑って答えました。

「赤いずきんかぁ・・・わしは若い頃、東京の大学に行ってたけど、きっと渋谷には赤いずきんは売っていないと思うぞ」

「えぇっ!!!!」

赤ずきんちゃんはショックを受けました。

テレビで見る渋谷はまぶしくって、おしゃれなお店がたくさんあって、そんな渋谷にいけば素敵な赤いずきんがあると思っていたのに・・・

「渋谷には赤いずきんは売ってないの?」

「グリム童話は、19世紀にまとめられたものだからなぁ」

「19世紀に行かないと素敵な赤いずきんは買えないの?」

おじいさんは真面目な顔になって言いました。

「いいかい、赤ずきんちゃん。世の中の頭のいい科学者の中には、タイムマシンは作れるはずだと考えて研究している人もいるんだよ。もしかしたらいつか、過去へタイムトラベルすることもできるようになるかも知れないよ」

「すごい!!すごいわおじいさん!!!」

赤ずきんちゃんの目は輝いていました。

「私もタイムマシンも作ってみたい!」

「そうかい、そうかい」

おじいさんはにっこり笑ってうなづきました。

「タイムマシンを作りたいのであれば、大きくなったら最先端の科学が学べる研究室に行くといいよ。どうたい、わしも少しは勉強を教えられるから、今度来るときはペンとノートを持っておいで」

「分かったわ。おじいさんありがとう!」

それから赤ずきんちゃんは山のおじいさんに勉強を教わるようになり、やがて東京の大学に現役合格しました。

おじいさんの噂は口コミで広がり、勉強を教えてほしい人が集まるようになり、おじいさんは学習塾を開くことになりました。

赤ずきんちゃんは東京での大学生活をスタートさせると、渋谷のコスプレショップで赤いずきんを見つけました。コスプレにはまり、趣味に熱中する一方で、物理学の勉強にも励み、充実したキャンパスライフを送りましたとさ。

めでたしめでたし。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?