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第5話 スモックグロース

地下都市OTOYK(オトイク)のエリアLTは、静かで穏やかな、まるで未来の楽園のような場所だ。エリアLTの住民たちは、知識欲に溢れ、互いに尊敬し合いながら生活している。労働という概念がなく、好きなことを追求できる自由がここにはあった。

文化人類学者ノドノルもまた、その自由を存分に享受し、過去の文化や歴史を探求することに生きがいを感じていた。ノドノルは、タイムマシーン「EMIT EFIL(エミットエフィル)号」で2024年から戻ってきたばかりで、手に入れたばかりのSMOCK GROWTH(スモックグロース)を大切に着こなしていた。

歴史的背景

ノドノルは、このシャツの歴史的背景を理解するために、エリアLTの中心にある巨大な図書館に向かった。ここには、地上世界のあらゆる知識が集積されており、どんな研究も可能だった。彼は、人類の文化における進化の過程をさらに詳しく調べるため、古い書物やデジタルアーカイブを片っ端から読み漁った。

図書館での一日が終わる頃、ノドノルはある古い文献に目を留めた。それは、20世紀末から21世紀初頭にかけての地球の経済と社会の変遷を記したもので、その中にSMOCK GROWTHの原型となるSMOCK FROCK(スモックブロック)に関する興味深い記述があった。どうやら、このシャツは単なる衣服ではなく、当時の社会的な変革を象徴するアイテムであったらしい。地球が急速な経済成長から資本主義の衰退へと移行する過程で、多くの人々が求めた「シンプルで実用的な生活の循環」を体現するものとして、2015年に作られたものだった。

2015年へ

ノドノルは、その記述に感銘を受け、もっと深くこの時代を理解したいと思うようになった。彼はエミットエフィル号を使って2015年に戻る決意を固めた。単にSMOCK FROCKを手に入れるためではなく、その時代の人々と触れ合い、彼らの暮らしや価値観を直に感じ取るためだった。

数日後、ノドノルは準備を整え、エミットエフィル号に乗り込んだ。タイムマシーンが静かに動き出し、2015年の地球へと戻る旅が始まった。到着すると、彼は当時の都市の喧騒とエネルギーに圧倒された。人々はスマートフォンと呼ばれる旧式の情報機器を片手に、忙しそうに歩き回っていた。ノドノルは、あらゆる情報を吸収しながら、SMOCK FROCKの背景にある社会的変革を探るために多くの人と会話を重ねた。

真の意味

ある日、偶然入った小さな喫茶店で、2015年にSMOCK FROCKを作った二人の男性に出会った。彼らは、「このシャツは、私たちが失いかけているシンプルな生き方の象徴なんだ」と語った。

彼らは、当時の急速なテクノロジーの進化と、それに伴う社会の複雑化に疑問を持っていて、だからこのデザインを生み出したという。そして、SMOCK GROWTHは、その時代の新しい風を取り入れながら形を変えて発展させた形なのだと。

新たな一章

エリアLTに戻ったノドノルは、その経験を仲間たちに伝えた。彼の話は多くの住民に感銘を与え、SMOCK GROWTHが持つ象徴的な意味は、ヴィンテージを越えたヘリテージとして再評価されている。

ノドノルの研究は、地下都市オトイクの文化に新たな視点をもたらし、住民たちは自分たちの暮らしに新たな価値を見出すようになった。こうして、ノドノルは地下都市オトイクの歴史に新たな一章を刻んだ。

※ この物語はフィクションです。


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