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定期健康診断は企業の義務? 対象となる従業員の範囲や種類をわかりやすく解説

毎年必ず受診している健康診断。企業の担当者にとっては、受診する労働者はどこまでが対象なのか? そもそも義務なのか? という疑問もあるのではないでしょうか。

そこで、今回は健康診断についての義務や、企業として心得ておくべきポイントなどを解説していきます

健康診断は義務?

まず「健康診断は企業にとって義務なのかどうか」ですが、結論から伝えると「義務」です。健康診断は「労働安全衛生法第66条」によって、企業は健康診断を実施する義務があると制定されています

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法は1972年に成立した、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成促進を目的とする法律です。以下「安衛法」と表記して進めます。
第二次世界大戦後、高度経済成長期を迎えた日本では大規模工事が実施されていきます。その裏側で、1960年代の日本は労働災害による死者がなんと6000人を超えるという惨劇を迎えてしまうのです。
(参考:厚生労働省「第 12 次労働災害防止計画」より https://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-54/hor1-54-14-1-2.pdf)

このような背景により、当時の労働省や専門家が一丸となって労働安全衛生に関する法整備を整え、1972年に労働安全衛生法が成立しました。

因みに時を同じくして1960年代のアメリカでも労働災害の件数が増加し、医療費の増額が深刻化した背景から健康経営への道を歩むこととなります。

どちらを考察しても、過度な激務がいかに労働者の心身を危険に晒すのかが伺えるのです。

1972年に安衛法が制定されるまで、労働安全衛生に関することは労働基準法第5章によって定められていました。しかしながら、先述の労働災害増加を背景に、健康面から労働安全を法的に定める必要が生まれ、労基法とは独立した法整備へと進みます。

労基法から独立することによって、安全衛生管理体制の確立のために必要な措置や、労働災害を防止するための具体的な措置などが、より細かく法律によって制定されました

健康診断については安衛法第66条にて制定がされています。

2015年からはストレスチェックの義務化も

労働環境の変化により制定がされた安衛法は、直近では2014年に改正され、翌年2015年度より「ストレスチェック制度」が盛り込まれています

職場環境が理由でメンタルヘルス不調に陥ってしまい、長期に渡る休職や離職といった状況になる人が後を絶ちません。

どの業界も慢性的な人手不足が悩みの種となっている昨今、従業員の欠員は企業の生産性を低下させてしまいます。

長時間労働や、人的ストレスといった職場環境が原因で心身の健康状態を崩してしまわないよう、企業努力が求められる時代です。

メンタルヘルスに関する詳しい内容はこちらのリンクからお読みいただけますので、ぜひこちらも合わせてお読みください。
(「ストレスチェックとは? 制度やチェックリストを紹介します」
ストレスチェックとは? 制度やチェックリストを紹介します – ライフサポートサービス株式会社 埼玉県の健康経営・健康診断 (lifesupport-service.com)

健康診断の際に企業が気を付けるべきポイント

対象となる従業員に対して健康診断実施を怠った場合、企業は安衛法違反となります。健康診断の実施義務違反は、安衛法第120条により50万円以下の罰金が課せられますので、企業としての責任を遵守しましょう。

健康診断の費用は企業負担

健康診断の費用は全額企業負担です。法定健康診断の一般的な相場としては、従業員1人に対し8000円〜15,000円とされています。

公益財団法人 全国労働衛生団体連合会 検診品質の維持等に関する検討委員会が行った2016年調査では、回答のあった165の医療機関の法定一般検診料金を平均すると8,449円と発表されていますので参考にしてください。
(参考:公益財団法人 全国労働衛生団体連合会 検診品質の維持等に関する検討結果報告書
https://www.zeneiren.or.jp/cgi-bin/pdfdata/20200813145502.pdf

健康診断結果の報告義務

常時50人以上の労働者を使用する企業においては、健康診断の結果を所轄の労働基準監督署に健康診断の結果を提出する義務があります。(安衛法第52条)

安衛法では「遅滞なく提出する」ことを明記されていますので、健康診断を行ったら速やかに報告書を提出するようにしましょう。

報告書に関しては、厚生労働省のホームページより入力支援サービスを利用し作成することができます。安衛法に関する届け出や申請が必要な様式がインターネットで作成できますので、こちらのリンクからご活用いただけます。
(リンク:厚生労働省「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」
https://www.chohyo-shien.mhlw.go.jp/

電子申請はできませんので、必ず所管の労働基準監督署に提出してください。

健康診断の種類

医師による健康診断の実施は労働者の健康保持のため企業に課せられた義務です。健康診断は「一般健康診断」「特殊健康診断」とに分かれています。

一般健康診断 【全企業対象】

一般健康診断は全企業において義務であり、身長・体重や視力・聴力といった、恐らく多くの方が受けたことのある健康診断の内容が項目となっています。

詳しい項目については、別途解説をしていますので、そちらの記事で確認してください。
よくわかる健康診断検査項目の種類別一覧! 実施時期と対象も解説します

企業に義務付けられる健康診断は5つの種類に分かれています。

・雇用時の健康診断(安衛法第43条)

・定期健康診断(安衛法第44条)

・特定業務従事者の健康診断(安衛法第45条)

・海外派遣労働者の健康診断(安衛法第45条の2)

・給食従業員の検便(安衛法第47条)

雇用時の健康診断、海外派遣労働者の健康診断、給食従業員の検便について、かみ砕いて説明していきます。

まず企業は、従業員を雇用した際に健康診断が必要になります。

雇用時健康診断の対象者

雇用時の健康診断の対象となる従業員は

・雇用期間の定めのない人
・雇用期間の定めがあり、契約期間が1年以上の人、あるいは契約更新により1年以上引き続き使用される人
・1週間の所定労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上の者

となっています。

要は、一定時間働く従業員はパート・アルバイトであっても雇用時健康診断を受けさせる義務が企業にあると認識してください。

ただし、医師による健康診断を雇用前3ヶ月以内に受診している場合、健康診断の結果を企業に提出すれば、その項目は雇用時健康診断の義務から外れます。

海外派遣労働者の健康診断

海外に6か月以上派遣される労働者に対し、駐在、出張に関わらず健康診断を派遣前後に受けさせる義務が企業には課せられます。これは1989年に労安法が改正された際に新たに定められ、海外派遣前と派遣後の1回ずつの健康診断受診が義務とされます。

安衛法で定められている労働者の範囲は、あくまでも「国内の事業所」とされているため、海外の事業所で働く労働者には定期健康診断の義務は法律として適応外です。しかし、労働者の安全を考慮し、派遣先でも健康診断を受けられるように取り計らうことが望ましいとされています。

そのため、長期に渡り海外派遣をする労働者には、事前の健康診断で英文での健康診断結果を持参させておくことが良いでしょう。

給食従業員の検便

企業の食堂または炊事場で給食の業務に従事する労働者は、検便による健康診断を受ける必要があります。

検診の時期は、雇用時、配置換えの際が義務です。

民間企業においては、月1回以上の実施や、年1回の実施など統一した取り決めはされていません。しかしながら食中毒菌を体内で保菌していてもキャリア状態であると症状が出ないため、給食従業員には定期的な検便を実施することが望ましいとされています。


特殊健康診断 【特殊業務従事者のみ】

特殊健康診断とは、有害物質を常時取り扱い健康被害のリスクが高い従業員に対して行われる健康診断です。

以下の業務に従事している労働者が対象となり、特殊健康診断は安衛法第66条第2項にて定められています。

<特殊健康診断の対象となる業務>

・高気圧業務

・放射線業務

・特定化学物質を製造もしくは取り扱う業務

・石綿業務

・鉛業務

・四アルキル鉛等業務

・有機溶剤業務

・粉塵取り扱い業務

それぞれの詳しい項目については別途解説をしていますので、そちらの記事をお読みください。
よくわかる健康診断検査項目の種類別一覧! 実施時期と対象も解説します

特殊健康診断は原則として、雇用時、配置換えの際、6か月に1度が実施の時期とされています。


定期健康診断「1年に1度」とは?

定期健康診断は1年に1度の義務です。実施時期については企業でそれぞれが決定して問題ありません。

「必ず全年と同じ日時であること」などと厳格に決められているわけではありませんので、前回の定期健康診断より1年以内に設定しておきましょう。

仮に、従業員が「かかりつけ医で健康診断を受診し、定期健康診断の項目を全て受診するため社内検診を辞退したい」という場合があったとします。その際、前回の定期健康診断から1年以内の受診であれば、法的に問題はありません。

厳密に「1年以内」の範囲が決められているわけではありませんが、先述のとおり雇用時健康診断も「3ヶ月以内」が明記されています。ですので、個人で健康診断を受けたいという従業員に対しては、1年以内の誤差は3ヶ月以内を目安と考えるのが適切と解釈がされています。

再検査は義務ではない

健康診断で何らかの処置が必要な所見があった場合、再検査となります。再検査に関しては企業に義務付けはされていませんので、労働者の自費です。しかしながら、健康経営の「従業員の健康管理に積極的に関与していく」という考え方から、再検査にかかる費用を補助したり、出勤認定して再検査を受診し易い環境を整える企業も最近は増えています。

なお、特殊健康診断においては、再検査の実施は企業に義務付けられていますので、必ず労働者に再検査受診の措置を行ってください。


定期健康診断は従業員の心身を守る企業の義務

健康診断の実施は法律によって義務ですので、1年に1度必ず実施をしましょう。健康診断の義務を怠ると労働基準監督署より指摘がされ、改善がされない場合は書類送検の可能性もあります。

定期健康診断は労働者の健康を守るだけではなく、万が一労働者の健康状態が良くない場合であっても、早期発見が期待できます。早めの治療と療養は、従業員にとって最短での現場復帰が可能となるため、企業としても生産性の低下を最低限に食い止めることが可能となるのです。

企業の業績アップは従業員の健康からと言っても過言ではありません。安衛法に基づき従業員の心身を守りましょう。

弊社ライフサポートサービス株式会社では、企業様の法定検診・特殊検診についてのご依頼・ご相談をお受けいたしております。
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