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もう2月も終わるという日、ついにぼたん鍋を食べた。

毎週買い出しに行くJAの直売所の精肉コーナーに、はじめて猪肉を見つけたのは12月だったけど、一度見送ったら、それっきり並ばなくなってしまった。恋人は、北海道の蝦夷鹿料理への対抗するかのように、どうしても私にぼたん鍋(猪鍋)を食べさせたがっていて、ずっと機会を狙っていたのだけど、ようやく手に入れることができたのだ。

まず、鰹と昆布でしっかり出汁を取り、そこに結構濃いめに味噌を溶き入れる。猪肉には、粉山椒を振っておき、最初から肉を入れて、とにかく煮込む。煮込めば煮込むほど柔らかくなるらしい。具材は味噌に合うものなら、なんでもということだったので、長葱、菊菜、コンニャク、椎茸、エノキ茸、焼豆腐など、を入れてみた。

最初に取り分けた猪肉の脂身は「お、硬い」という印象。ただ、いわゆる脂の印象がほとんどない。コラーゲンの塊という感じ。煮込めば煮込むほど、柔らかくなっていくのが想像できた。

時間が経つにつれて、肉、というより脂身が少しずつ柔らかくなっていくとともに、汁がどんどん旨くなっていく。決して強い味、濃い味ではないのだけど、旨味が重奏的に攻めてくる感じ。鰹昆布と、味噌に、このなんとも複雑な猪肉の旨みがとけあって、これまで味わったことのない味がする。

猪も蝦夷鹿も共に雑食ではあるけれど、雪に完全に覆われることのない、里山という環境のあるこのあたりでは、猪は一年中、いろいろなものを食べられるんだろうな、と思う。わかるはずもないのに、複雑な旨みの中に、蝦夷鹿は食べられなくて、猪は食べられるものの味の片鱗を探してしまう。雑さを承知で言えば、蝦夷鹿は厳しさゆえの強い味だとしたら、猪は豊かさゆえの柔らかい味という感じか。もちろん、どちらも好きだ。

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