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ラム肉パスタソースの罠

そろそろ昼食の準備しようと、台所に降りていくと、空腹に耐えきれない恋人がすでに料理を始めていた。ラム肉の強い匂い。ジンギスカン丼?と聞くと、トマトと煮込んでパスタソースをつくっていると言う。準備してくれててありがとう、という気持ちとともに、理由は説明できないのだけど、ラム肉でパスタソースは止めたほうがいいんじゃない?という気持ちが込み上げる。

「パスタじゃなくて、ブルグル(挽き割り小麦。クスクスが大きくなったようなもの)にする?」と提案してみるが、ブルグルはもうなかった。諦めてショートパスタを茹ではじめる。

ソースの味見をしてみると、匂いで想像した通り、脂っぽい。ラム肉はいつも塊で買って、切り分けて冷凍しておくのだけど、たまたま脂の多い部分だったのだろう。とりあえず、スパイスを増やしてもらう。

ただ、パスタが出来上がってみると、思ったほど臭みはない。牛蒡が入っていたのも功を奏したのか。まあ、ちょっと脂っぽいかな、程度で美味しく食べはじめた。しかし、おしゃべりしながら食べていると、だんだん口の中や唇の感触が気になってくる。口をさっぱりさせようと水を飲むと、グラスに唇のあとがくっきり残る。そこで、なぜパスタソースにラム肉は合わないんじゃないか、と思ったのかわかった。

そう、脂が固まってくるのだ。パスタという料理は、基本「ぬるい料理」だ。ソースが熱くても、茹で上げたパスタが熱くても、それらを混ぜ合わせれば、温度は下がるし、本場イタリアでもパスタとはそういう温度帯の料理だ。だとしたら、体温より低い温度で固まる羊の脂が、パスタソースと相性が悪いのは当然なのだ。

と、理屈で考えてやっぱりねと納得したのだけど、最初に「パスタソースにラム肉?」と思ったときには、理屈はなかった。きっと、これまでのラム肉の食体験から、直感的に辿り着いたのだと思う。食い意地張った人間の、こういう直感は侮れない。

【本日の教訓】
ラム肉をパスタソースで使いたければ、脂の少ない部分を使いましょう。


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