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古くて新しい組み合わせに出会う|風味の事典

先日「食べる世界地図」という本について書いた。異国の料理を食べたときに確かに感じている、その国の料理らしさ、みたいなものは、何によって規定されているのか、その個別性を明らかにしてくれる本として。

一方、この「風味の事典」は、ある食材ににどんなものを組み合わせるか、ということについて書かれている本だ。99種類の食材を16種の風味に分類した上で、それぞれの食材に何を組み合わせるか、ということを、各国の伝統料理から星付きレストランの料理まで、幅広い事例から集めている。つまり共通性に注目した本と言える。

私が、この本を開くのは、使う食材のひとつはすでに決まっていて、そこから、何か自分の引き出しにはない料理をつくれないか、というとき。クックパッドに食材を入れてレシピ検索をすることとの違いは、この事典で調べることによって、レシピが出てくるわけではないけれど、逆に自分で組み合わせを考えていくための切り口を与えてくれるところ。たとえばジャガイモの項には、アーティチョーク、アスパラガス、アンチョビ、ウォッシュチーズ、オイリーフィッシュ、オリーブ、貝・甲殻類...などと並んでいる。貝・甲殻類の説明は「この組み合わせには、すべての文化を見出すことができます。アメリカのチャウダー、ベルギーのムール・フリット、イタリア・ベニスのジャガイモのニョッキ、クモガニのソースがけなどがあります」から始まる。じゃあ、ツブ貝でもあわせてみようか、みたいに思考が広がる。

この本は私にとっては役にたつ実用書であるけれども、一方で、人が何と何を組み合わせたときに、美味しいと感じるかというのは、時代や国、地域を超えて普遍的であること(もちろん例外もあるけれど)に思いを馳せられる、ロマンティックな本でもある。


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