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コンプライアンスと「活躍」の不連続性


1986年、職場のジェンダー的不平等を解消するために、男女雇用機会均等法が施行されました。
1985年に社会人になった私は、彼女ら「第1世代」とともに働いてきたといえます。
 
この間、1997年には改正法で女性に対する差別を禁止し、ポジティブ・アクション、セクシュアルハラスメント(セクハラ)に関わる規定などが加わりました。
また、1999年には男女共同参画社会基本法が施行され、男女の人権の尊重、社会における制度や慣行についての配慮、政策等の立案・決定への共同参画、家庭生活における活動と他の活動の両立の保証が謳われるなど、男性側のありようについても方向性が示されます。
さらに2016年4月には、女性活躍推進法が施行され、少子高齢化により労働力人口不足が予見される中、女性たちが、無理なく活躍できる社会づくりを目指すことになりました。
機会均等から男女共同参画、そして女性活躍へと、時代は流れてきました。
 
女性の経営者への登用、その前段階としての女性の幹部(管理職)への起用などについては、菅官総理大臣が就任時に触れたことからも分かる通り、国としての大きなテーマとして認知されています。
過去の努力により、女性に対する不平等は少しずつ解消に向かっているように見えます。
とはいえ、その動きはあくまでも漸進的です。
 
しかし、それ以上にもうひとつ、厄介な問題が存在すると私は考えます。
コンプライアンスやセクハラ撲滅の延長に「活躍」はない、ということです。このふたつは不連続といっていい。
そしてここを誤解している経営者や企業幹部が多いのです。
マイナスをゼロにする努力は、その延長にプラスを創ることにはつながりません。
 
パラダイムシフトは、世代が交代しなければ成し遂げられないともいいます。
冒頭に述べた通り、私自身も「第一世代」であったはずですが、言葉を選ばずに言えば、女性を均等に扱わない(扱う意識に乏しい)先輩から、仕事を教わるだけでなく、社会人、企業人としての何たるかを学びました。
以来、ことあるごとにジェンダー・バイアスを払拭しようと努めてきたつもりですが、意識改革というのは難儀なもので、同世代の全てがそう考えるようになるわけではなく、年長の人々から私たちに、私たちからより若い世代へと継承されてしまうわけです。
そういう刷込みは、会社の先輩からだけではなく自分たちの親からもあるわけで、世代的意識の継承というべきで、それはグラデーション的にしか変化しないところがあります。
 
さらに、私たちから仕事の何たるかを教わった次の世代の一部にも、私たちを含む「先輩」のDNAは受け継がれ、心のどこかに、女性を軽く見たり、女性には管理能力が乏しい、女性は結婚・出産すると会社を辞めると刷込まれる人も一定割合続いてしまいます。
このことが女性活躍にブレーキをかけたり、変化を漸進的にしている側面は否めないと思うのです。
 
もうひとつ、「女性に雇用機会の均等を保証する」から「男も共同して参画する」、「女性の活躍」という流れにとっての「岩盤」は、日本企業、とりわけレガシーな大企業の躯体のなかに強固にビルトインされた一括採用、終身型雇用制度、年功序列的人事制度でしょう。
ここに大ナタを振るうことはなかなか難しい。
人事制度の不利益変更に対し、丁寧な対応を求められることは、ある意味大切ですが、「既得権益」の温存にもつながります。
人事制度の問題については別な機会に譲りたいと思います。
 
長くなりましたが、最後にもう一度、コンプライアンス問題を解決すると女性活躍が実現すると信じるボタンの掛け違いについては、強く指摘しておきたいです。
そして、それを解消するためには、ダイバーシティ&インクルージョン(私はふたつを融合させる意味で「インクルシティ」という言葉を提唱しています)のマインドが不可欠です。インクルシティが不連続性を連続性に変えるカギなのです。
インクルシティの実現は、個別のマイノリティ・グループについての課題を解決するのではなく、ひとりひとりが他人を尊重することと、自らのマイノリティ性の自認によってしか解決しません。
逆に、このふたつをクリアできれば、例えば外国人(移民)、障がい者、LGBTqも、それ以外の差別的意識に悩まされる人々についての問題を解決し、「活躍」できるための必要条件が整うことにつながるのです。
これは誰一人取り残さない(Leave no one behind)というSDGsの理念とも一致します。
「インクルシティ=ダイバーシティ&インクルージョン」がSDGs達成のためのインナー・マッスルだと私が主張する理由はそこにあります。
 
現代はVUCA(ブーカ)の時代と言われます。変化の激しい時代に、金太郎飴的組織からダイバースでインクルーシブな人々によって構成される組織に変わることは、人財の総力戦を闘い、サステナブルな経営をする上で一択だと思うのです。
 
世界経済フォーラム(WEF)は、毎年12月に各国の男女平等をランキングした「ジェンダー・ギャップ指数」を発表しています。昨年の日本は、前の年の110位から121位へと順位を落としてしまいました。30年以上の努力にもかかわらず、です。
さて、今年のジェンダー・ギャップ指数はどうなるのでしょうか。

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#ダイバーシティアンドインクルージョン #ジェンダーギャップ指数   #コンプライアンス #EDAS #インクルシティ

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