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「かくれてしまえばいいのです」がめざすこと|NPO法人ライフリンク

NPO法人ライフリンクは、自殺対策強化月間にあたる2024年3月1日に、オンライン上に「かくれてしまえばいいのです」をオープンしました。

このWeb空間の創設は、ライフリンクがめざす「誰も自殺に追い込まれることのない生き心地の良い社会」を実現するための自殺対策(生きる支援)の一環です。

かくれてしまえばいいのです」は、公開から6日でアクセス数が50万を超えました。連日SNSで話題になったり、メディアで報道されたりと、必要とする人に広く届いていることはうれしくもありますが、大きな反響はそれだけこの社会に過酷な現実があるのだと受け止めています。

本記事では、「かくれてしまえばいいのです」を立ち上げた背景やめざすこと、世界観をつくるための工夫、そして必要とする人に届けるためにできることについて、お伝えします。


子ども・若者を取り巻く現状


2024年のいま、日本の自殺問題は依然として深刻な状況にあります。とりわけ、子どもの自殺はきわめて深刻です。小中高生の自殺者数は、自殺者総数が減少傾向にあった中でも増加傾向が続いており、2022(令和4)年には過去最多、2023(令和 5)年も前年に続き500人を超えました(暫定値)。

「自殺したいと思ったことがある」という人の割合が、20歳代で近年顕著に増えていることを示すデータもあります。

「自殺したいと思ったことがある」割合の年代別推移|「自殺対策に関する意識調査」(平成20,23,28,令和3年)よりライフリンク作成

こうした現状を反映するように、ライフリンクが運営するSNS相談「生きづらびっと」には、アクセスが殺到しています。毎月1万人前後の人がアクセスしており、そのうち半数以上が子ども・若者です。

膨大な相談数に対応できるよう体制強化を図っているものの、相談現場はパンク状態で、対応しきれない相談も多くあるのが現状です。また、そもそも相談することに拒否的な子ども・若者も少なくなく、そうした人たちの受け皿となる場をつくることは社会としての喫緊の課題と言える状況です。

「どこにも居場所がない」「生きる場所がない」と、生きることにしんどさを感じている子どもや若者に、「ここにおいで」「ここにいていいんだよ」「生きてていいんだよ」と、そんな言葉をかけるべくつくられたのが、「かくれてしまえばいいのです」です。

「かくれが」がめざすこと


「かくれてしまえばいいのです」は、いま「死にたい」「消えたい」と思い悩んでいる子どもや若者への私たち大人からの提案です。

「いまのつらさに耐えられない → この世から消えて楽になりたい → 死にたい」といった思考ではなく、「いまのつらさに耐えられない → この世から消えて楽になりたい → であれば、まずは一度、この世からかくれてしまいましょう」という提案です。

「かくれが」は「死にたい気持ちを抱えながらも安心して存在することができる場所」です。ここでは、安心して死にたがれることを通じて、逆説的ですが、「生きていていいのかも」「もう少し死なずに生きるか」と思ってもらうことをめざします。

他の人が書いた死にたい気持ちを読んでみたり、死にたい気持ちを抱えたセンパイから「死にたい気持ちのやり過ごし方」を教えてもらったり。 「かくれが」で過ごすことによって「自分はひとりじゃないんだな」と感じてもらえるような工夫を散りばめています。

「死にたい」気持ちはそう簡単にはなくなりません。でも、「死にたい」気持ちを抱えながら生きることはできるし、「死にたい」気持ちを抱えているからこそ生きられる人生もある。そんなことをひとりでも多くの子どもや若者に感じてもらえたらと願っています。

「かくれが」内で読むことができる、むかんけいばあちゃんの小話の一コマ

「かくれが」の世界観について


「かくれが」のコンセプト策定や全体の世界観・コンテンツ制作などには、絵本作家のヨシタケシンスケさんに全面的な協力をいただいています。

ヨシタケさんは、ローンチに先立って2月21日に行われた記者会見の場で、自身も「生きづらさ」を抱えてきたこと、そんな自分のような人にとっての一つの居場所になればという思い込めた、と話されていました。

「この世が嫌なときにあの世以外の場所があれば、そこに一時的に避難して、またこの世に戻ってくればいいじゃないか。この世でもあの世でもない『その世』という選択肢を作ってみたかったんです」

2月21日に行われた記者会見で制作意図を話す絵本作家 ヨシタケシンスケさん(左)
「かくれが」の全体地図

また、「かくれが」は「この世の生きづらさ」から解放されるための世界観を具現化するため、以下のような工夫をしています。

●安全な空間で、安心して死にたがることができる
●「生きているのがしんどい」からこそ入場できる(肯定される)
●SNS上に溢れている「きらびやかさ」をめざさない
●「いいね」の数を競わない/ポイントはたまらない
●「成長すること」をめざさない/成長を求められない
●目的地に一直線に進まないこともある
●常に誰かいる(話しかけると反応してくれる13人のモブキャラも)
●しんどいニュースは流さない

このように、「かくれが」は「生きるのがしんどい、この世から消えてしまいたい」と思ったとき、まずは一度「かくれてしまう」ことができる――そんな世界観をめざしてつくられました。

必要とする人に届けるために


必要とする人に「かくれが」が届くために、ライフリンクでは様々なものを用意しています。いずれの素材も自由に活用していただいて問題ありませんので、ぜひ必要とする人に届くよう、ご協力いただけたらと思います。

■1分動画

「かくれが」の概要を1分の動画でまとめています。

■印刷用ポスター

学校の掲示板や保健室、職場(建物)のトイレやエレベーターの中など、「かくれが」を気になった人がそっと見つめられるような場所に、ぜひ掲示してもらえたらと思います。

■QRコード

印刷用ポスターの中にも掲載していますが、「かくれが」のQRコードです。

■SNSアカウント

X(旧Twitter)とInstagramに「かくれてしまえばいいのです」のアカウントがあります。様々な情報を発信していくので、ぜひフォローやスキなどしていただけたらと思います。

● 「X(エックス/旧Twitter)」

● 「Instagram(インスタグラム)」

※ かくれがに関して投稿する際は「#かくれが」とつけて発信していただけると、うれしいです。

■取材に関して

必要とする多くの人に「かくれが」が届くよう、可能な限りで取材をお受けしたいと考えており、取材を希望する方は以下よりご連絡いただけますと幸いです(3月7日現在、多くのメディアから取材の依頼をいただいており、取材時期などはご相談させていただけたらと思います)。

kakurega●lifelink.or.jp (「かくれてしまえばいいのです」事務局)
※ ●を@に変えてください

NPO法人ライフリンクについて


「かくれてしまえばいいのです」は、NPO法人ライフリンクが管理・運営しています。

ライフリンクでは、「誰も自殺に追い込まれることのない生き心地の良い社会」の実現をめざし、自殺対策(生きる支援)を社会全体で推し進めるための様々な事業や活動に取り組んでいます。

ライフリンクのこれまでの取り組みやこれからめざす社会については、note「自殺問題・自殺対策、2024年の現在地」の記事をご一読ください。

いろいろな立場の大人たちが力を合わせて、同じ時代に生きる子どもや若者を支える場に、「かくれが」がなれたらと願っています。同時に、「かくれが」をきっかけとして、ぜひ多くの方に自殺問題に対する関心を持っていただき、一緒に歩んでいただけたらと思っています。様々なかたちでぜひ参画をお願いします。

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