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ライフリンク・メディア報道・2023年を振り返る①

2023年も残りわずかになりました。今年1年の自殺対策を振り返ります。1月には、厚生労働省と警察庁から前年の自殺者数(速報値)が発表されます。2022年の速報値を伝える1月20日の新聞各紙の見出しは、ほぼ同じ「自殺者増 2万1584人 昨年 男性13年ぶり増」でした。

厚生労働省と警察庁は20日、2022年の全国の自殺者数(速報値)が、前年より2・7%(577人)増の2万1584人となり、2年ぶりに前年を上回ったと発表した。男性が13年ぶりに増加に転じ、全体を押し上げた。失業者や年金生活者ら収入が少ない人の自殺が増えており、厚労省は長引くコロナ禍が影響した可能性があるとみている。
 男性は全体の約7割を占める1万4543人(前年比604人増)。女性は3年ぶりの減少となる7041人(同27人減)だった。

2023年1月20日 読売新聞

各紙とも、清水康之代表のコメントを掲載しました。

清水康之代表は「雇用対策や生活支援の取り組みを一層強化し、各地域でも自殺の実情を踏まえた支援を行うべきだ」と提案した。

毎日新聞

清水康之代表は「コロナ禍以降、相談内容がより複合的になっている。経済や家庭の状態など様々な面から生活全体の基盤が低下している」とみる。

朝日新聞

清水康之代表は「コロナ禍が長期化し、経済的な不安や家庭内の不和など複合的な要因で追い込まれる人が増えていると感じる。職場や地域社会で小さな変化に気付いてあげられる仕組みが必要だ」と指摘している。

読売新聞

福岡市西区の海岸で2月、26歳の男性の絞殺遺体が見つかりました。男性がSNSで一緒に自殺する人を募集し、殺人容疑で逮捕された大阪市の男子高校生(17)が応じたことが発端とみられています。SNSへの自殺関連の投稿が事件につながるケースが後を絶ちません。この事件の背景を、3月17日読売新聞が報じました。

  <月曜の朝は恐怖しかない 辛(つら)くて辛くて42たい><42たいよ。刺してほしい>
 ツイッターにあふれる自殺願望。「42たい」は「死にたい」の意味だ。<口だけじゃなくて、本気で42たい人いませんか?>などと、一緒に自殺する人を募るような投稿もある。
 西区の事件では、男性が事件の数日前、SNSにこうした内容を投稿し、男子生徒が応じた。男子生徒は「ロープで(男性の)首を絞めたのは間違いない」「一緒に自殺するつもりだった」と供述しているという。
 「匿名性が高いインターネット上で、自分と同じ価値観や思考を探す人は多い」。SNSで悩み相談に応じる相談員を育成する「全国SNSカウンセリング協議会」(東京)の浮世満理子常務理事は、こう指摘する。その上で、「不特定多数の人とつながることで感情が増幅され、自殺などの行動にも移行しやすい」と注意を呼びかける。

「ヤフー」は07年、自殺の方法などのキーワードを検索すると、検索結果の上位に相談窓口を表示する取り組みを始めた。
 フェイスブックも16年から、自殺をほのめかす投稿をした利用者に対し、相談窓口や友人への相談を促すメッセージを表示。17年からはAI(人工知能)を活用し、自殺願望がある投稿を検出する取り組みも行っている。
 ただ、対策は追いついていない。警察庁が委託する民間団体「インターネット・ホットラインセンター」(IHC)は18年から、「自殺を手助けする」といった投稿を確認した場合、サイト管理者などに削除を要請している。しかし、IHCのホームページによると、21年までの4年間に削除を依頼した1万1443件のうち、要請から一定期間内に削除が確認されたのは6247件(54%)にとどまる。

電話とSNSで相談に応じているNPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」(東京)には、1日平均で電話で約500人、SNSで約300人から相談が寄せられる。約300人の相談員が交代で応じているが、相談員が足りず、実際に相談できるのは電話が約130人、SNSが約100人だという。
 また、SNSでのやり取りは、相談者の表情や声のトーンが分からないうえ、文字だけでのやり取りとなるため、誤解を招かないよう、より繊細な対応が必要になる。そのため1回の相談にかかる時間は平均約1時間で、電話相談の倍の時間がかかるという。

朝日新聞の連載「追い詰められる女性たち」(2023年6月26日)清水康之代表のインタビューが掲載されました。

――コロナ下での女性の自殺の増加をどうみますか?
 コロナ下で人の移動が難しくなりました。人間関係が閉じて固定化された中、より「家父長」による支配関係の効力が強まった可能性があります。G7の中で女性の自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)が最も高いのは、社会的な男女格差が大きいことが影響していると考えられます。
 ライフリンクが調べた実態調査では女性は159人でした。若年女性は自殺未遂歴がある人が多かったのも特徴です。5回以上といった回数の多さも目立ちました。そして、女性は男性と比べると、自殺の要因となったものを抱えてから死に至るまでの平均年数が長くなっています。
 男性は経済困窮が大きな要因になることが多いのですが、女性は人間関係や精神疾患などが原因で、時間をかけて死に至る傾向が見えました。ただ、この調査の対象が無作為抽出ではなく、主婦が71人と多かったことも影響している可能性があります。

次回も2023年を報道から振り返ります。

写真は、岩手県立美術館にて。


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