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“ティール組織”旋風に対する一抹の不安

最近、組織開発や組織論において“ティール組織”が旋風を巻き起こしている。

発達理論をベースにした組織論ということで、この風潮がますます広がり、発達心理に注目が集まることを期待している。

ロバート・キーガンにはじまり、ビル・トーバート、日本では加藤洋平氏が、発達理論の書籍を出版し、ティール組織旋風が巻き起こる種はまかれていた数年間だったと思う。

一方で、一抹の不安を覚えている自分もいたりする。成人の発達理論について十分な議論がなされることなく、ティール組織の表面的なことだけがとりあげられ、このトレンドそのものが下火になってしまうのではないか、と不安を抱いているのだ。

“ティール組織”で語られている組織の形態は、ある意味、理想郷とも思える内容だ。ティール組織へ移行するブレークスルーのポイントは、“自主経営・全体性・存在目的”とされている。どう見てもビジネスパーソンの理想の組織だろう。平たく言ってしまえば、「自分が思うように、あるがままで、自己実現ができそう!な組織が現れたら最高!」という話だ。この話に飛びつかない人はいないと思う。

一方で、発達理論の“意識の発達”と呼ばれるものがどれだけ難しく、相当な実践をともない、ときには大切な価値観を手放す必要があり、苦痛をともなうかが十分に議論されているとは思えない。

“ティール組織”について書かれた記事のほとんどは、その組織形態、結果しか触れていません。どのように組織を変えたらいいか、そのハウツーばかりだ。組織をどうしたとか、権限移譲して云々とか、上っ面だけを取り上げても、機能不全に陥っていくだけではないか。

なぜならば、組織構造に人がアジャストできないからだ。ティール組織は、意識の発達レベルの低い人にとってみれば、苦痛でしかない。仕事の進捗およびその成果責任について問われ、嫌われる勇気をもって本音で主張し、高い次元の存在目的による動機によって職務を遂行する。相当難易度の高い仕事ぶりが求められる。

意識の発達レベルを高める方法について語られており、かつ組織内の仕事の様子を書籍にしてくれているのがロバート・キーガンだ。キーガンの書籍が流行る前にティール組織がこれだけ流行るのは順序が違うのではないか。表層的なもっとも取り入れやすい内容だけ取り扱っていないか。そのように思われるのだ。

キーガンの書籍は正直、読者にとっては厳しい内容である。大きく自己の変容を求められる。だからこそ、そこまで注目されなかったという背景があるのではないか。手っ取り早いガワだけ注目されたのがティール組織なのではないか。

私は“ティール組織”を否定しているわけではない。むしろ、ティール組織がどんどん出てくることを望んでいる。だからこそ、一過性のトレンドにだけはしたくないのだ。組織形態も重要だ。同時に、個人が意識の発達に向けて実践をするということも促していきたい。切にそう思う。

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