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AmazonのAIによる人事評価と退職勧告を考える
人事評価や退職勧告もAIがおこなう時代。それが、まさに現実になろうとしている。
Amazonは契約社員の人事評価から解雇まで一連のプロセスをAIで実行しているとされる。人が関わることなく、アルゴリズムが人事評価を担う。契約社員の数は400万人。Amazonは人がアナログに人事評価をおこなうことは不可能で、AIの導入が必須としている。一方、契約社員は、突然AIからメールを受信し、解雇を通告される。解雇が不当である場合は、契約社員はその理由を申し立てることができるが、判定を覆すことは難しいのだそうだ。現状は、配送や倉庫の作業などの定型業務が対象だが、今後は、非定型業務にもその範囲が拡大される可能性がある。リモートワークになり、顔が見えなくなった社員をどのように評価するかという問題に、AI人事評価技術が注目されている。
Amazonは2018年に、女性を差別するという機械学習面の欠陥が判明したことで、AI(人工知能)を活用した人材採用システムの運用取りやめを経験している。
それが、このコロナ禍によって、人材の採用のみならず、人材の人事評価および解雇までをAIに委託するようになったというのは、急激な変化である。コロナ禍によって、今後10年で起こるだろうとされた変化がたったの1年で起こったという議論はよく耳にする。それがいよいよ人材マネジメント領域にまで広がっているのだ。ぼくはこの大きな変化に直面し、自分がその変化に適応する大変さよりも、組織開発という変化を促す仕事の意義そのものに疑問をもつようになった。
コロナの一件で思うところがある。ぼくはこの十数年、組織開発や組織変革、人材開発に携わってきた。つまり、変化を起こす仕事だ。でも、コロナライフを前にぼくが起こせた変化というのはほんとうに微々たるものでしかないということを思い知らされた。コロナはぼくに深い内省を促している。
— 勝又康仁 人事と組織開発 HR&OD (@katsumata_en) April 28, 2020
ぼくがこの10数年がんばって起こそうとしてきた変化をコロナはいともたやすく成し遂げた。では、ぼくたち組織開発屋の存在意義とはなにか。コロナにしたら、ぼくが起こそうとしてきた変化は茶番に過ぎないだろう。最近、ものすごくそういうことを考えている。
— 勝又康仁 人事と組織開発 HR&OD (@katsumata_en) July 24, 2020
話を戻そう。AIによる人事評価や退職勧告の話だった。このことが意味するのは、人事評価の主役が人からデータへ移行するということだ。今もデータは使われている。ただ、そのデータをどう解釈されるかは人に委ねられている。でも、AIによる人事評価は人の解釈が捨象される。目標がデータによって管理され、データによって合理的に評価される。
もしかしたら、人が介在しない人事評価が可能になるかもしれない。忙しいマネジメントにしてみれば朗報とうつるだろうか。人事評価には多くの労力と時間を要するからだ。とはいえ、被評価者はどうだろうか。デジタルに弾き出された人事評価結果にどれだけ納得するだろうか。特に、悪い人事評価への納得性をどう引き出すかは大きな論点になりそうだ。
テクノロジーは多くの自由を与えてくれる。でも、その代わりに受け入れなければならない課題を持ち込んでくる。AIによる人事評価は、人事評価業務からの自由を与えてくれるだろう。同時に、ぼくたちは何を受け入れなければならないだろうか。そろそろそのことを真剣に考え始めねばならない時期なのかもしれない。
参考:
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