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子どもたちが「浮くこと」を学ぶことについて3つの視点から考える。

毎年、シーズンになると報道される水難事故。子どもたちを水難事故から守るために、子どもたちは、学校などで「浮くこと」を学びます。今日は、子どもたちが「浮くこと」を学ぶことについて、「水泳」、「ういてまて」、「ライフジャケット」の3つの視点から、少し掘り下げて考えてみたいと思います。

視点①「学校で教える『水泳』で浮くことを学ぶ。」

学校の水泳の学習の始まりは、今から66年前に香川高松沖で起こった「紫雲丸沈没事故」だと言われています。とんでもない大惨事で多くの犠牲者がありました。NHKアーカイブで、当時のニュースの動画が見れます。

学校水泳のスタートは、「泳ぐことを学ぶことで自分の命を守る」ということです。「水中での『自己保全能力』を高める」という言葉で表現されますが、「背浮きや浮き沈みで呼吸しながら、浮いて進むこと」を学ぶことが目標になります。

「水泳」という視点で見ると、水辺では「泳ぐ力を高めて、自分の身を守る」ということを追求するという立場になります。溺れないようにするために、泳法を学ぶということです。「紫雲丸沈没事故」という大きな事故の教訓から始まった「水泳」の学習の果たしてきた役割はとても大きいはずです。

視点②「もしもの時の『ういてまて』で浮くことを学ぶ。」

これは一般社団法人「水難学会」さんが提唱されているもので、不意に落水した時には、背浮きの姿勢で浮いて救助を待つというものです。

人間の身体が持っている浮力にプラスして、靴や服の浮力を利用して、仰向けの状態で力を抜いて大の字になり、浮いて救助を待つというものです。この「ういてまて」は、「服を着たまま落水してしまった時、どうすればいいのか?」ということについて学ぶ「着衣泳」として学校の水泳の学習でも、多く取り入れられています。

「ういてまて」という視点で見ると、水辺では「落ち着いて、浮いて待つことで、自分の身を守ることができる」ということを学ぶという立場になります。溺れないようにするために、「浮くこと」を学ぶということです。この「ういてまて」を学んでいて助かった…という事例がいくつも報告されています。

視点③「『ライフジャケット』を準備して浮くことを学ぶ」。

そして、最後の視点が「ライフジャケット」です。

人間の身体は息をしっかりと吸った状態で約2%が浮くといわれています。しかし、その浮力だけだとしっかりと呼吸を確保することができないことがあります。そして、息を吐いてしまうと、多くの人が沈んでしまいます。しかし、「ライフジャケット」によって、浮力を補助することで、しっかりと呼吸を確保することができます。水辺での遊びになじみのある方にとっては、「ライフジャケット」は当たり前のツールです。着用することで安全性は飛躍的に向上します。

「ライフジャケット」という視点で見ると、水辺では「事前に『ライフジャケット』を準備しておいて、着用することで自分の身を守る」という立場になります。この「ライフジャケット」の大切さは、2020年11月に香川県坂出市の与島沖で起こった「修学旅行旅客船沈没事故」が教えてくれます。衝突から30分ほどで完全に沈没してしまったにも関わらず、乗船していた坂出市立川津小学校の62名全員が「ライフジャケット」をしっかりと着けていたことで、奇跡的に無事に救助されました。

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2021年7月、事故のあった川津小学校では「ライフジャケット」を使った「水難防止教室」が開催されました。子どもたちが着た「ライフジャケット」は、事故の教訓を生かし、子どもたちの命を守りたい…という市民の有志の方々から寄付で寄贈された「ライフジャケット」でした。

2021年8月に発表されたスポーツ庁の「令和4年度概算要求主要事項」では、水泳学習のために「着衣泳」と並んで「ライフジャケットの活用」が明記されたこともあり、今後、学校での指導として、広がっていくことになりそうです。

3つの立場について”技術”と”もの”として考えてみる。

この3つの立場について、それぞれの立場を合わせて考えてみたいと思います。

「水泳」と「ういてまて」は、子ども自身が身につける”技術”になります。”技術”をしっかりと身につけることができれば、特別な”もの”を準備しなくても、水辺での安全性が向上します。ただ、この2つは”技術”なので、全員ができるようになる訳ではなく、できない子もいるということと、緊急事態やパニック状態になった時には、その”技術”が生かせないようになるかもしれないということが考えられます。

一方、「ライフジャケット」は、子ども自身が着用する”もの”です。「ライフジャケット」という”もの”を事前に準備して着用することができれば、特別な”技術”がなくても、水辺での安全性が向上します。ただ、”もの”は子ども自身が準備することができないので、周りにいる大人の意識にかかっているということと、「ライフジャケット」をつけるからこそのリスクもあるということを理解しておく必要があります。

おそらく、「ライフジャケット」という”もの”を準備する…というのは、これまでの水辺の安全について学ぶための視点としては新しい視点。しかしながら、安全性は飛躍的に向上するってことは間違いないので、大人としては考えておきたい視点です。

しかしながら、”もの”の準備できない子どももいるし、”もの”の準備がない時に不意に落水してしまうこともあるので、「水泳」や「着衣泳」、そして「ういてまて」も、身につけておかなればならない”技術”になります。

水辺はリスクの高い場所。カンペキはないということを意識する。

ボクもそうでしたが、みなさん意外と「人間の身体はどれだけ浮くのか?」ということについては、あんまり知られていません。簡単に説明すると、息をいっぱいに吸った状態で身体は約2%水面より上に出ます。反対に、息を吐き切ると、ほとんどの人は沈みます。

個人差はありますが、人間の身体は浮かないこともあるので、水辺では「一瞬で沈んでしまう…」ということも考えられます。このことを模型で説明した動画があるので、よかったらチェックしてください。

水辺はリスクの高い場所。これがあったらカンペキ!ということはありません。子どもたちには、リスクについてもしっかりと教えて、いろんな方法で自分の身を守ることについて教えていく必要があると思います。

今日お伝えした「水泳」、「ういてまて」、「ライフジャケット」の「浮くこと」を学ぶ3つの視点。それぞれ大切な視点であり、それぞれに限界があることを意識して、1つの視点だけで考えるのではなく、いろんな視点で安全について考えていくことがおくことが求められるでしょう。


実は自分自身も「ライフジャケット」にこだわって発信をしてきたので、それ以外の視点への理解が欠けていたかもしれない…と思っています。もしかしたら、「ライフジャケット」の良さを伝えることに必死になり、その他の視点を否定してしまって「ライフジャケット」の着用にこだわってしまっていた自分がいたことも否めない事実です。しかしながら、この夏、いろんな活動をされている方とオンラインでお話させていただくことができました。本当に学び多き時間でした。今日は、シーズンを通して学んだ視点についてまとめてみました。

これからも、立場の違う方、考え方の違う方と、対話して、学びを深めつつ、発信を続けていきます。子どもの命を守るために、必死で考えて、必死で学びながら、活動していきます。なので、これからも「子どもたちにライジャケを!」を応援いただけるとうれしいです。そして、周りの方々に活動のこと、そして「ライフジャケット」のことを伝えていただけるとうれしいです。どうぞよろしくお願いします!


思いはただ1つ…子どもたちの命を守ること。

「子どもたちにライジャケを!」
http://lifejacket-santa.com/

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