ベーシックインカムとは

この中で、政治の未経験者でありながらインターネットで情熱的な支持者を集めている民主党候補がいる。ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)を強く推している44歳のアジア系アメリカ人、アンドリュー・ヤングだ。
【2020米大統領選】ベーシック・インカムを唱えるアジア系候補アンドリュー・ヤング

ベーシックインカムとは、基本的には、累進課税や生活保護と同じく、「富の再分配」による貧困対策ですが、国民全員に一律にお金を配ることにより、他の方法よりもはるかに効率良く貧困対策をしようというアイデアです。

ベーシックインカムの話をすると、必ず「金持ちにまでお金をばらまくのはおかしい」という人がいますが、それは全くの勘違いです。

現在、私たちは収入に応じた税金を払っていますが、税率は収入に応じて増える累進課税なため、収入に対する手取りのカーブは下の図の左側のようになります。

ベーシックインカムとは、このカーブを右の図のように少し上にシフトさせ、収入がゼロの人にも最低限の生活を保証するお金が手に入るようにするシステムです。数学頭の私のような人にとっては、「収入の低い人達に『負の税』を課す」仕組みと言った方が分かりやすいと思います。

なぜこんなアイデアが出てきたかというと、現行の社会保障システムが欠点だらけだからです。

一つは日本でも良く聞く話ですが、ひとたび国から生活保護を受けると、そこから簡単には抜け出せなくなる、という欠点です。生活保護は収入に応じて払われるため、貧困から抜け出そうと働き始めても、最初のうちは働いた分だけ生活保護を削られてしまうため、「働かない方が得」という負のインセンティブが働いてしまいます。生活保護を受けている人たちの多くが、職を探さずにパチンコなどをして1日を過ごすことになってしまう理由がここにあります。

もう一つは、肥大化する官僚システムです。「必要な人に、必要な補助を提供する」という現行のシステムは、規則作りから始まって、実際の運用には審査などを含めて莫大なコストがかかります。それも、単なる低所得者向けの生活保護だけでなく、母子家庭のための育児補助、私立校への助成金、失業者のための教育サービスなど多岐にわたる行政サービスを提供すると、そのコストは雪だるま式に増えてしまいます。

三つ目は、「政府が出してくれるから」という理由で、無駄遣いをする人やそれに便乗するビジネスが増えることです。典型的なのが日本の老人医療で、整形外科がマッサージ代わりに毎日のように通ってくる老人たちで溢れているのが良い例です。

従来型の社会保障をやめてベーシックインカムに置き換えれば、収入の有無や家庭の事情など関わらず、国民一人当たり一律にお金を支給するため、審査などが一切不要で、大幅に行政コストを削減できます。従来型の社会保障と、それを提供するための行政コストだけでもかなりの財源になりますが、それでも不足な場合には、所得税や消費税の増税などで補います。

ベーシックインカムに反対する人たちは、「そんなことをしたら人々が働くなくなる」と主張します。確かにそんな行動に出る人たちもいるとは思います。しかし、従来型の社会保障と違って、働いたからといって政府からもらえるお金が減るわけではないので、今の生活保障と違って「より良い暮らしをするために働く」インセンティブも働くため、仕事を無くした人が少しづつ社会復帰することが、今よりもずっと楽になります。

ベーシックインカムについては、Youtube ビデオでも解説しているので、是非ともご覧ください。

この記事は、メルマガ「週刊 Life is beautiful」からの引用です。毎週火曜日、米国のIT事情やベンチャー市場、および、米国と日本の違いなどについて書いています。

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