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Jホラーとの比較から見る『呪詛』

  Twitterでホラー映画がバズってると聞いたら、ホラー映画好きとしては、反射的にみてしまうわけです。Netflixも加入しているし、時間も空いているので準備万端。しかも台湾の民族的なアジアンホラー。これまでの台湾ホラーは気になる物があっても、レビューが低くて敬遠していたので、絶好の機会!


 見終わった感想は「これは、確かにバズる!」一言で言えば不幸の手紙をゆるくしたもの。ストーリーは、ルオナンが養子として子どもを迎えて二人で暮らすが、子どもが呪われてしまう様子と、呪いの原因となった過去に禁足地へ足を踏み入れたことがクロスカットで進んでいく。この合間に挟まれる子どもを助けられる呪文が、なんとも怪しい。

 見終わったら呪われるといえば、『リング』の呪いのビデオが有名でしょうが、これはどちらかというとチェーンメールや不幸の手紙に近い。「これを読んだあなたは呪われました。でも、他の人に見せたら大丈夫ですよ。」のような構造。ほぼネタバレのように聞こえますが、完全にこの構造を取らずにどちらとも取れる演出をしているのが上手いところ。詳しくは是非見て欲しい。TwitterRetweetしたくなるはず。

 さらに、没入感を与える手法として『ブレアウィッチプロジェクト』のような、一人称視点の手持ちカメラで怖いところは進み、ドキュメンタリー映像のように見せるモキュメンタリーという手法が取られている。ちなみに、誰かが残した映像を誰かが見つけるファウンドフッテージものとして、『本当にあった呪いのビデオ』シリーズの方が早い。禁足地の集落や洞窟に踏み込む映像は、さながら『バイオハザード』を強制プレイさせられているような怖さ。実際に探索するときは手元にカメラが寄り、画面が切り替わったらいきなり男が現れる。さらにモキュメンタリーという手法をとることで、映画を体験しているような感覚に陥る。

 モキュメンタリーといえば、『ノロイ』や『コワスギ』シリーズで有名な白石晃士監督。投稿映像を調査する中で怪異に合うというシリーズをヒットさせ、『貞子VS伽倻子』で「化け物には化け物をぶつけるんだよ!」で一躍有名。今作は養子を迎え入れる様子を記録したホームビデオ、禁足地の実像を暴くリポートビデオ、ルオナンから私たちに向けた訴えの映像が用いられている。これらが編集されていることから、映画としての安心感と見やすさを担保しつつ、ルオナンが私たちに向けて呪文の真実を伝える編集には、作為的な不気味さが伺える。

『呪詛』は近年稀に見る良質的なホラーといえるが、母と子の要素を付け加えることでホラー要素は少しマイルドになって共感できる話になっている。『仄暗い水の底から』で見られたような、子どもを守るために母親はどんなことでもするという要素。これは『リング』にも見られた。しかし、これがさらに人間としての狂気を増幅させている。ルオナンは子どもが呪われていると信じて祈祷師に見せ「七日間何も食べさせるな」と言われる。当然栄養失調になるわけだが、助けようと自分で点滴を打ち、子どもは感染症のような症状を見せる。この、母親の狂気のようなものは『着信アリ』でもミュンヒハウゼン症候群として取り上げられた。少しやり方は違うが、母親の愛が狂気へと変わる演出は共感を超えて恐怖へと変わる。

 これらJホラーの怖い設定を、細やかに踏襲しつつ、混乱しないストーリーと編集、さらに呪文というサスペンスを残した本作は、ぜひ見ておくべき一作。さらにNetflixのオリジナルという点にも注目したい。Netflixはオリジナルのホラーは多いものの、大ヒットしたものは少ない。しかしここで流れが変わり、良質なホラー作品が量産されるきっかけ、アジアンホラーのムーブの先駆けとなるかもしれない。この時代の波に乗り遅れるな!!

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