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2022ベスト映画aka「人がわかり合おうともがく」映画6選

2022年映画ベストを作ろうとした時、「これって自分の好きなシュチュエーションめちゃくちゃでてる!」と発見したので、あえてそのシュチュエーション6選にしようと思います。

 まずシュチュエーションといえば、TBSラジオアフターシックスジャンクション山本匠晃アナの映画の中のフード描写。人が口に物を入れるEATシーンに興奮して、半ばサイコパスみを感じる語り口で、普段は冷静なアナウンサーが尺とパーソナリティを無視してそのシュチュエーションを描写する。ぜひ一度聴いていただきたい。

 では、私が興奮する大好きなシュチュエーションはというと、「人と人がわかりあおうともがく描写」だ。本来、他人同士でしかない人間同士が分り合うなんて無理からぬことだ。わかったつもりになることはあっても、100%わかるなんていうことはできない。何故なら、自分のことを100%理解している人間もいないからだ。ジョハリの窓のように、自分では見えない自分がいて、他人には見えない自分がいる。そんな他人同士もしくは自分で自分のことを、態度や言葉でわかろうとして伝えて、時には喧嘩をしたり愛し合ったり、そんな人間の深みの描写にめちゃくちゃ感動する。

まず1作目は深田晃司監督の『LOVE LIFE』


好きなシュチュエーションはエンディングでLOVE LIFEが流れる手前のシーン。子どもを事故で亡くし、夫の浮気と、嫁と元夫の逃避行を経て家に戻り、見つめあって横を歩きながら散歩するシーン。親子の愛情、夫婦の愛情、死への恐怖を語り尽くした後、正解は見えないものの、お互いに目を見て横を歩くカタルシス。言葉は交わさないものの、そこには言葉以上にわかりあうものが存在していて、横を歩く二人はお互い歩み寄ろうとしていた。


2作目はノルウェーの監督ヨアヒム・トリアーの『私は最悪。』

自分の将来を決めきれない中で、成功した彼氏のアクセルと結婚ムーブに押されるユリアだったが、時が止まるような時間を過ごした彼と浮気するも別れ、病気で余命少ないアクセルと対話をするシーン。アクセルが「君は最高だ。生涯の恋人だ。」という台詞。すでに終わった関係の二人だけど、それでも最後に言っておきたかった言葉がこれって!その後セリフがなく病室で過ごす二人の後ろ姿を涙なしには見られなかった。


3作目は豪田トモ監督のドキュメンタリー映画『こどもかいぎ』

こどもかいぎとは、幼稚園の年長さんたちが自分の疑問に思ったこと「水ってどこからくるの?」「赤ちゃんはどこからくるの?」「おとなになったら何になりたい?」といろんな疑問に対して特に大人が答えを出すわけではなく話し合う様子が描かれている。特に好きなシーンは、話が突飛でうまく議論できていない子が、年下の子に「言葉にできないことは、ちゃんと先生に相談するんだよ」と諭す場面です。うまく喋れなくても、ないが大切かちゃんとわかっているし、周りの先生が言っていることはちゃんと伝わっているという場面です。


4作目はフランス、シルヴィー・オハヨン監督の『オートクチュール』

Diorのオートクチュール部門で働くエステルがハンドバッグを盗まれて才能を見出したスラムに住む女の子ジャドをお針子に育てていく。好きなシーンというか、全体的に悪口が多いのに、世界最高峰のドレスを完成させるチームが好き。ジャドをいじめるお局さんは実はみんなに嫌われてるけど、しっかり仕事仲間として存在を認められているし、エステルは高級服に身を纏いながら人種差別的発言を繰り返しつつも、娘や他の人とわかろうと一歩踏み出す。「政治的に正しいことを言わないといけないわけ?」という不満を述べるリアルもありつつ、その不満すら包み込むような作品。


5作目はMyfffで上映された短編『勇気をだせ!』

バスで見かける女の子に詩を書くも、姉にSNSに投稿される13歳のマーディ。姉の恋愛指南を無視して、正直に愛の告白をするシーンと女の子の返答が最高。色々考えるよりも、正直にものを伝えるって大事だよねっていう教訓。

6作目はキャロリン・ビグナル監督の『セヴェンヌ山脈のアントワネット』


不倫中の彼の家族がロバで山を越えると知って、いてもたってもいれず単身追いかけてロバと心を通わせるフランスコメディ。人間の愛が欲しいのに、だんだんいうことを聞かないロバと心を通わせていくという斜め上の発想がこの上ない作品。言葉が通じない相手と心を通わせるっていう意味で『バジュランギおじさん』は話せない子どもの迷子を不仲な隣国に帰すまでに宗教や戦争を乗り越える話だったけど、言葉の通じない誰かとわかり合おうとする作品。今年初めて海外に行った自分にとって、割と興味のあるテーマだったりする。


まだまだいけますが、疲れてきたのでこの辺にしたいと思います。
ポール・ヴァーホーベンの『ヴェネデッタ』は隣人愛と宗教愛を右往左往して観客がヴェネデッタを理解することを強いる作品でしたし、白石晃士の『愛してる!』は地下アイドル、SM、プロレスという、アングラ文化の世界ですら普遍的な「愛してる」という言葉の重みを教えてくれる良い映画でした。『RRR』と『激怒』も最高でした。

もう少し好きなシュチュエーションについて解像度を挙げられる気がするので、今後はその視点で監督特集とか作品紹介ができればと思っています。

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