検察庁法の改正について<まとめ>

 すっかり長くなってしまったエントリーの<まとめ>です。

 ここまでの話をまとめます。

 忙しい方は、ここだけ読めば、概ねご理解いただけると思います。

<結論>

 今回の検察庁法の改正は、検察官の個別の定年延長について、内閣の恣意的な裁量判断を強めるという内容であるため、検察の政治権力への従属性を高める恐れが無視できず、検察の公平性や公正さを損なう恐れが強いため反対です。

<前提>

1 検察は、刑事手続きにおける起訴権をほぼ独占しているなど、極めて強い力を持っていることから、それを民主主義社会としてきちんと統制していくことは非常に重要なことです。

2 検察を統制する方法としては、法律による統制や司法プロセスによる統制、検察審査会などのような市民社会からの統制など、様々な手法が既に実装されています。人質司法等の問題を重視する立場からは、さらに制度的な統制を強める必要も指摘されています。

3 行政による人事的統制は、こうした制度的統制の一つであり、実際に、検察の任命権は内閣(法務大臣)が持っている以上、任命権による一定の統制は既に図られています。ただし、内閣の人事的支配が強すぎると、検察の公平性や公正さを損ねかねないので、検察官は定年までは懲戒事由がない限り原則として職を追われないなど、その独立性を相当程度担保する仕組みがあります。

<反対理由>

1 検察官の定年年齢を一律に引き上げるのでなく、その延長や役職定年の時期を内閣の裁量によって決定することができる仕組みを法的に作れば、内閣がそれを盾に検察官に対する支配力を大きく強めることが可能となります。こうした手法は、検察の公平性や公正さを担保するための民主的統制の強化を目的とするものとはみとめられません。

2 政治権力による検察支配が強まると、検察は政治権力に対する忖度を迫られ、公平かつ公正な職務遂行ができなくなる恐れが強くなります。また、政治権力の側は、自分たちにだけは忖度してくれるならば、一般国民との関係における検察の権限強化に抵抗感がなくなってしまいます。

3 国家公務員法の改正に伴い、検察官もそれに合わせるという目的であれば、一律に、定年年齢を引き上げれば足ります。それにもかかわらず、内閣による裁量的な定年延長の判断という仕組みを導入する必要性、合理性は全く示されていません。

4 政府が、検察に対する制度的統制を、今以上に強めたいと考えるのであれば、それは、刑事訴訟法の改正による検察官の裁量の縮小や、司法プロセスの透明化等を含め、大いに議論すべきです。しかし、こうした問題の本質を無視し、単に内閣の検察支配を強める効果しか生まない裁量的な定年延長制度を導入することには、害悪しかありません。

5 このように、この法律は、安倍内閣の政治的性格を抜きにしても、およそ成立させるべきものではありません。さらに、今まさに、黒川検事長の定年延長をめぐり、行政の裁量を超えるような一方的な法解釈の変更を強行し、政治権力に近い人間を検事総長に据えようとしている政権に、およそ運用させて良い法律ではありません。


 はい。まとまりました。はあ、ずいぶん長くかかった。

 次回は、補足として、今国会で成立を見送ればそれでよいか?という話です。



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