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天才ヴァイオリニストと消えた旋律

音楽とミステリーは親和性が大変良い。またヴァイオリンを題材にした作品にハズレはない。『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』もまた、そんな私の持論を裏切らなかった作品のひとつである。

予告編のヴァイオリンの音色につられ、またフライヤーのあらすじを読んで、これは好きなタイプの映画に違いないと、公開日を心待ちにしていた作品だ。

舞台はロンドンだが、現代と第二次世界大戦下の時間軸が交錯するので、時間の流れどおりのストーリー展開を好む人は苦手かもしれない。だが、私はこういった作品が大好きである。時間の流れが行ったり来たりしながら物語の伏線の出現と回収を繰り返す。そして最後にすべてが明らかになるという、そういった手法のミステリー映画を好む。この点で言うと同じく最近公開した『悪なき殺人』も素晴らしい。

さて『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』の方に話を戻すと、個人的にはどこか『戦場のピアニスト』を思わせるところがある。ヴァイオリニストのデイヴィッド(ドヴィドル)がユダヤ人で、ワルシャワ出身ということもあり、度々ポーランドの話題が出るせいもある。そして何より、戦時下の重々しいストーリーの合間に織り交ぜられる美しいヴァイオリンの音色が、『戦場のピアニスト』でのピアノの旋律を彷彿とさせる。

邦題は『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』だが、原題は『The song of the names』だ。最初はなんでこんなタイトルなんだろうと思っていたが、話が進むにつれてそれが腑に落ちる。(邦題も原題の邦訳じゃダメだったのだろうか…というのが映画や文学の海外映画あるあるだと個人的には思っている。)

これは絶対に映画館のいい音響の中で観てほしい作品である。美しい音色、重厚なストーリー、ハッとするセリフの数々。アクションが多かったり、派手だったりわかりやすい演出の映画もいいが、私は観終わったあとに少し考えさせられるような映画がやはり好きである。


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