年商10億円のベーカリーがコロナ禍の2年で利益9,000万円回復した話-1

はじめに取組んだのは、今起こっていることを「見える化」することでした。「何のために」「何を」「どう」見えるようにしたいか、改善したい事柄や目的が明確になっていれば、そのために必要な情報が何かを見つけていくことはそう難しくはないですが、因果関係が曖昧なことや、そもそも改善の意識が希薄な現場の場合、または正しく現場を把握できていない管理者が思い込みや誤った認識で現場をとらえている場合はスタート地点の設定に時間がかかることがあります。

たいていの企業において確実に実績が見えるものと言えば決算書ですが、私は毎日現場で起こっていることを確認するのには、管理会計レベルでいかに早く、正確に情報をつかめるかが肝要だと思っています。会計、という視点で見る時に店舗の営業活動で重要になってくる数字は、売上、仕入、原料原価やロス率、人件費や備品類、設備のメンテナンス費などですが、管理会計に基づきそれらを日々コントロールすることができるようにするためには、客数、商品別の生産、販売実績、勤怠管理、発注、在庫管理などがどのようなルールの基に管理され、実際の現場ではどう判断され、動いているのか、をひとつひとつ確認していく作業が必要になります。

例えば、小規模の店舗を除いて、POSシステムを使用してレジ業務を行っている小売店がほとんどだと思いますが、その中で、蓄積された膨大なデータを分析し、正しく業務に反映させることができている店舗はどのくらいあるのでしょうか。システムにもよりますが、たいていの機種ではPOSデータから、一日の売上や商品の販売点数だけではなく、時間帯別の販売数や客数の記録をひきだすことができます。単品別で見た時のよくあるABC分析やカテゴリ別の販売構成比などは、レポートが自動で作成されるものもあるようですが、ABC分析の判定基準などは、本来店舗の販売戦略と関連付けて判断されるべきものですので、多少の手間をかけても独自の判定基準に基づいて分析したほうが、役立つ情報を得られることが多いのではないかと思います。

自分の店舗の売上がどんなふうに構成されているのか、を知りたい時に見るべき数値は概ね以下のものです。

①売上高(年商、月商、日商、曜日別時間帯別、商品別など)…店舗の集客の傾向や商品動向の実態、ピークタイムなどがわかります。可能な限り時間を横軸に、数値を縦軸にしてグラフ化すると視覚的にとらえやすいです。

②平均単価(総売上高÷総販売点数、または設定したプライスポイント)…来店するお客様の価値観の指標となります。自分の店舗が、平均いくらの商品を買うための店舗として認知されているのか、客観的な現状を知ることができます。また、新規商品投入や価格改定の際には新たな値決めの一つの目安となります。

③構成比(点数基準、売上高基準)…実数だけでは読み取りにくい全体のバランスを把握するのに便利な数値です。例えば、「ある商品の販売点数が増えた」という事実だけでは、総客数が増えたことで相対的に増加した数値なのか、または単品の販売数が伸びている結果なのか判断できませんが、販売点数や売上高の中に占める割合として見ることで、全体の商品群の中のどの位置にある商品なのかが明確になります。

④支持率(販売点数÷レジ客数)…商品の需要や人気を探るときに便利な数値です。逆数を取ると何人に1人の割合で購入されているかがわかります。価格改定などで販売構成比が変わってきた時に、購入する客層に影響が出ているかどうかを簡易的に見る指標になります。特に、原価見直しによる値上げの影響や値引き販促の効果を判断したい時に使用します。

⑤客単価(総売上高÷レジ客数)…店舗の主要客層の買い方を知る1つの目安です。また、時間帯別や曜日別の特徴をとらえておくと、品揃えの目安(商品の種類が魅力的であったか?または満足できたか?)にもなります。機会損失が多い時点では顕著に客単価が下がります。

⑥買上点数(販売点数÷客数)…こちらも店舗の主要客層の買い方を知る1つの目安です。また、レジ袋などのサイズの検討や、売場用のトレイやカゴのサイズ、枚数を決める時にもある程度の想定があった方が望ましいです。曜日別時間帯別の数値を把握できていると、レジ対応の人員配置を考える時にも役立ちます。また、時間帯別などのデータは客単価同様、品揃えの目安(商品一つひとつの陳列ボリュームは適正か?)にもなります。

特に、各商品の売上構成比を把握し、コントロールすることは、商品政策上たいへん重要なポイントです。軽減税率の適用で店内飲食が発生すると管理が非常に複雑になりますが、この数値をよく見て、効果的な戦略を練り込み実践していくことが、結果的には商品の販促や原価管理のムダをなくすことになり、短期間で着実に成果を積み重ねやすくする店舗運営に直結します。

次回からはより具体的な数値管理の実践内容について触れていきたいと思います。

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