土産物を全国に流通させるのはやめろ!

現地でしか買えないからこそお土産としての価値が成立するのであって、何処でも買えてしまっては意味がない。

私には、土産物に関して嫌な思い出がある。
中学校の修学旅行。東北を観光し、最後に青森のアスパムなる三角形の建物でお土産を買う時間が設けられた。私は嬉々として目をつけていた商品を買い漁った。特に、林檎を丸ごと入れたアップルパイの「気になるリンゴ」は、青森らしく素晴らしいお土産だと感嘆したものだ。
帰宅後、家族親戚にそれらを配り、話は終わるはずだった。

しかし帰宅直後の休日に、まさかの出来事が。
家族に頼まれ、自宅から徒歩3分のスーパーへ買い物に行った。そこに、青森でわざわざ買った土産物が全て売られていたのだ。しかも、キリのいい内税表記にしたためか現地より数十円安かった。
一応は期間限定という形ではあったが、どこでも買えてしまうなら旅行の土産として商品を買ってくる意味がなくなるだろう。

私の地元は北海道なのだが、帰省した際はいつも北海道の銘菓買ってから関東に戻っていた。しかし結局、六花亭もルタオもナイヤガラワインも、各地のデパートやアンテナショップで買えてしまう。通販すら必要ない。
「白い恋人」だけは滅多に道外に流通させないと聞いていたが、最近はどこでも見かけるようになった。

こういった経験から、カナダへ語学研修に行った際は細心の注意を払って土産を選んだ。私より前にカナダへ行った後輩の話ではとあるブランドのブラウニーがお勧めらしいが、それはプラザに売っていたので却下した。また、現地で生産していないグッズも避けた。
結局私が買ったのは、現地の有名ブランドの紅茶とチョコレート、日本に流通していないと思われるカナダワインとカナディアンウイスキー、滞在していた大学のロゴが入ったパーカーとTシャツ(この2つはパキスタン製だが欲しかったので仕方ない)だった。
多くの学生がメープルサンドクッキーを買っていたが、日本のあらゆる店で売っている物だったので買わなかった。というか何故みんながそれを買うのか理解できなかった。

流通が盛んになっただけでなく、商売として多くの客に売りたいという当たり前の考えが、「お土産」の価値を低下させているのだろうか。
お土産とはわざわざ買いに行くから意味があるのであって、何処でも買えるならば少し高価な商品でしかなくなる。

お土産も年賀状やハンコと同様、時代の中で廃れていく文化になってしまうのかもしれない。
いやそれは無いか。

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