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【子育て】ヒゲ息子の和音

ヒゲ息子がついにヒゲを剃った。

だからもうヒゲ息子ではないのだが、なんとなく愛着がわいてきたので、これからもヒゲ息子と呼ぶことにする。

その彼が14歳にして初めて、ピアノを習いたいと言ってきた。

きっかけはYouTube。
ピアノが弾けたらちょっとモテそうだというお気楽な考えだ。

私自身は実のところ、習い事としてのピアノにものすごいトラウマがある。
とにかく嫌な思い出しかないのだ。

だから、我が家にはピアノを習うという選択肢もない。

それが、ここに来てヒゲ息子、まさかの懇願ときた。

しかし、飽きっぽい性格だ。
すぐにOKを出すわけにはいかない。

まずは弾いてみろと、娘のおもちゃのピアノを手渡した。

「えっと、、、」

ヒゲ息子は不器用にドレミと弾き出したが、ソまで小指を連続で使うのでラ以降がグダグダだ。

「こうやるんだよー、もう〜。」

と、ファのところで指をくぐらせるだけなのに、私はドヤ顔で説明を続ける。

「じゃあ、次ドミソの和音やってみて!」

2問目でいきなり和音が来るとは思わなかったらしく、ヒゲ息子が、待って待ってと頭を抱えて考え出した。

「和音?和?ってことは足すんだよね?」

ヒゲ息子が真顔で尋ねる。

「そうだよ。簡単でしょうよ。今ドレミやったじゃん。」

すると、しばらく考えた後、ヒゲ息子は自信満々に

「わかった!こうだ!」

と言って、音を出した。

・・・単音がにぶく響き渡る。

私は耳も目も疑い、その後腹を抱えて大爆笑した。

彼が出したのは『レのシャープ』だった。

和ときいて、ヒゲ息子は頭の中で「音」を計算したのだ。
もう、馬鹿なのか天才なのか私にはわからない。

「ドミソ」だから、真ん中をとって「ミ」という単純な計算ではないところには天才を感じる。

レのシャープという微妙な音だ。
なんだか言われてみたら、数式で編み出した感満載である。

いや、単に♯という符号のせいか。

とにかく、ピアノに関しては彼の力が基礎以前の問題であることだけは判明した。

しかし同時に、発想があまりにも奇想天外で、これはヒゲ息子の意外な才能ではないかと思い始めている自分が怖い。

そして、今になって私の「和音の定義」の方が間違ってるのではと不安になり、思わずググッてしまった。

子どもはすごい。
それがヒゲの生えた大人と子どもの中間のヒゲ息子であってもだ。

大人になると固定概念でガチガチになって、頭も心もいつの間にかカチコチだ。

ドミソの和音 = ド+ミ+ソ = レ♯

式のイコール(=)ってなんだろう。
正解じゃない方が世の中面白いかもしれない、と思った夜であった。



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