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【子育て】ヒゲ息子、宇宙人になる

私の家系は代々鼻が悪い。
子どもたちがまだ小さい頃は耳鼻科通いで大変だった。
上が治ったかと思うと、次は下が時間差で風邪を引く。
そのうち自分までも風邪を引き、負のスパイラルから抜け出せなくなるのだ。

当時、下の子はドラえもんをまねて、私がため息をするとすかさず「やれやれ。」と言うようになった。

全くこっちがやれやれである。

ヒゲ息子は未だに鼻炎があり、痰を絡ませる。
うっうん、と軽い咳払いをするのだが、たまにその咳払いが頻繁になる。
おそらく癖になっているのだろう。
何かストレス的な原因があるのかもしれない。

さすがに心配だ。
どこかのタイミングでまた耳鼻科か。

そう思っていた私なのだが、先日つい魔がさした。
在宅ワークに集中できずイライラしていたのだろう。

「もう!うっうんうっうん、うるさいんだよ!」

と、キレてしまったのだ。

はっと我に返り、一瞬反省しかけた私はしかし、すぐにその必要はなかったことに気づかされる。

彼はすぐさま反撃に出てきたのだ。

「うっうんうっうんうんうん。ううん?」

なんと彼は否定されたその咳払いを逆手にとり、まるで宇宙人のようにうっうんだけで会話を試みてきたのだ。

そう来たか。

降参しかけた私はしかし負けじと真顔で

「うっうんうん、うっうっうん!」

とうっうん返事をした。

しかし、こんなんで会話が成立するはずがない。
そのうちヒゲ息子がリアルに咳込んで終わると言う、なんとも締まりの悪い寸劇となった。

ここ一番、不毛なやり取りだった。

我が子ながら、悪いのは鼻だけではないなと時々思うのだが、困ったことに、たいして面白くもないのに不覚にも私は、彼のやることにいちいち腹を抱えて笑ってしまう。

そしてヒゲ息子はどんどん調子にのる。
同じことをバリエーションを変えていろいろ仕掛けてくるのだ。

ドラえもんがのび太に

「もう、のび太くんたらー。やれやれ。」

というその『やれやれ』には、そこはかとない愛が詰まっている。

そこにはドラえもんの、わかっていながら都度のび太くんを助けてしまう自分への諦めも入っているのだ。
ドラえもんの、のび太くんと自分に対する無条件の愛を感じられずにはいられない。

ヒゲ息子の様々なおバカぶりを目の当たりにする度に私はドラえもんになる。

全く呆れちゃうよ。
やれやれ、と。



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