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勇気を届けたい - 仕事が辛くてたまらないあなたへ

「仕事は辛くてあたりまえ」「お給料をもらっているんだから耐えるもの」そんな言葉は過去の遺物になりつつあります。少なくともわたしはそう思っています。

新たに入社を控えている人、入社2年目に向けて先の見えない将来に悲嘆にくれる若手、悲しいまでのnoteが最近目について心を痛めています。ほんの少しポジティブな想いにでも変換できるように最近の兆しのみたいなものを紹介できればと思います。

※ この記事は過去に書いたものですが、改めて書き直しています。


「今」が決して正解ではない

周りの若手を見て思います。決して努力を惜しんでいるわけではないということ。スキルアップのために学ぶ意欲もあるし、将来につながる仕事のために自分のやりたいことの我慢もしています。

それでもなお仕事の辛さが残るのは、努力が足りないせいではありません。職場に魅力がなくなっているのです。わたしの叔父や高齢の上司の話を聞く限り、かつて日本の職場は終身雇用でゆるいつながりをもった「場」だったのではないかとわたしは思っています。良い意味で将来の安心を与えてくれる「場」として機能していたのです。近年、人材の流動性が増し、成果主義だ、評価制度の導入だ、事業に対する費用対効果だと、職場の環境は激変しました。ところが一方で「場」の在り方はここ何十年も変化していません。むしろ安心した「場」を提供する能力が低下している、もしくは時代に即した「場」を提供できずにいるのです。

「好きなことを仕事にしよう」という考えも、わたしは好きではありません。なぜなら、(仕事は辛いものだから)好きを仕事にして労働を和らげようというネガティブな発想を起点にしているから。

もちろん好きなことを仕事にしても構いませんが、好きなことは趣味としてやり続け、仕事は趣味とは別に更に楽しめばよいのです。仕事には自分の周りにはいないタイプの人間関係があり、経験したことのない冒険があります。そのための努力はワクワクするものであってほしい。

仕事を辛く耐え難い労働と信じる理由は本来ありません。今の社会のほころびがどこに出ていて、どういった方向に進むべきなのか、noteしてみたいと思います。

報酬は想像力を阻害する「モチベーション3.0」

長い間無視され続けてきたテーマですが、お金は成果につながりません。よりよい人材を獲得するために企業からはより高い報酬が提示され、雇用される側もよりよい職場を目指してより高い年俸を要求したりしますが、「高い給料は高いモチベーションを維持し、良い報酬はより良い品質やクリエイティビティを生む」なんてことはありません。

むしろ報酬によるモチベーションコントロールは目的を見失わせ、人の想像力を阻害します。

ダニエル・ピンク氏のモチベーションについての鋭い洞察があります。モチベーションの在り方は時代によっていくつかのステージを経てきました。

①生きるための生物としての欲求による動機づけの段階「腹が減ったから食べる」

② アメとムチによる動機づけの段階「報酬によって成果をあげる」

③より複雑化した社会組織のなかで、より内発的な動機づけが必要とされる。←いまここ。

これをモチベーション3.0と呼び、人類のモチベーションの在り方は新しいステージに向かいつつあると言います。

報酬こそがモチベーションの対価である、と言った悪習は早々に捨てたほうがよいのです。これに囚われていると、現状の苦しい「場」をあなた自身が将来にわたって引き継ぐことになります。

実際に、お金のために仕事をしてみて成果はあがりましたか?

年収400万以下の職場であれ、年収1000万超えの会社であれ同じです。「報酬があがればやる気があがる」は幻想です。同じく、「報酬をもらっているのだから、相応の成果をだしなさい」これも幻想です。

成果がでないのはあなたのせいではないことがほとんどです。この言葉に振り回されてはいけません。わたしたちはこの言葉によって隷従させられてきたのです。そこに自発的な創造力など発揮されるはずもありません。

よくある社長の言葉

「会社にとって社員の幸せってなんですか?」という質問にこんな回答をする社長がいました。

会社には多種多様の人がいて、それぞれに幸せの定義は異なる。だから一概に「社員の幸せはこうだ」などと決めつけることはできない。しかし、どんな社員もお金は必要だし、お金によって生活の質が上がる。

だから、会社にとって社員の幸せをサポートする唯一の方法があるとするなら、業界No.1の高い給料を目指すこと。そのための原資を稼ぐのにみなさんには相応の努力と貢献をしていただくことが必要なのです。

これは実際にわたしが社長に言われた言葉でもあります。

これを聞いてどう感じますか?みんなが頑張る → 会社が儲かる → 社員の給料が上がる → そうすれば、より会社の質もあがり → 従業員の質もあがる。よいスパイラルが起こる。だから、みんなで頑張って稼ごう!ってことです。

10年前、この言葉に違和感を持つ従業員はほぼ皆無でした。

いま思えば、この考えこそが偏ったモチベーション管理と仕事に対する意識の低下を招いているのです。

没頭する環境は作り出せる「フロー理論」

自分の好きなことをしているとき、時間が立つことも体が疲れることも忘れてしまうほどに、没頭する体験をしたことはありませんか?

「ハマってる」ものって、それ自体が楽しく四六時中そのことを考えてたりします。恋愛であれゲームやスポーツであれ「どハマリする」っていう体験は生活を大きく変えます。

こういう体験からこそ永続的な喜びが生まれます。

つまり、この「どハマりする」状態を作り出すことができないだろうか?ていうのが次の論点になります。

ミハイル・チクセントミハイという心理学者がいます。

彼は、この心理的状態を「フロー」と呼んで、いかに「フロー」状態が生まれるか研究を行っている学者です。彼によると「フロー」状態に入るためにはいくつかの条件があると言います。

フローに入るための条件
1|何をすべきか、どうやってすべきか理解している
2|日頃の現実から離れたような、忘我を感じている
3|ただちにフィードバックが得られる
4|活動が易しすぎず、難しすぎない(能力と難易度のバランスが適切)
5|その場を支配している感覚(自分が有能であるという自覚)
6|活動に本質的な価値がある(だから活動が苦にならない)
7|自分はもっと大きな何かの一部であると感じる

つまり、その条件を人工的に作り出すことができれば、「どハマり」する体験へ導く準備ができます。そして、見ての通り驚くほどにその条件は単純なのばかりなのです。

彼の研究の中でわたしが最も驚いた主張がこれです。

わたしたちの身の回りの活動で、娯楽や趣味より遥かにフロー状態に達しやすい環境がある。それはレジャーでもスポーツでもなく「職場」だ。

職場こそ条件が揃いやすい環境にあるという主張です。職場は本来楽しいはずのものというわたしの発想はまさにここから来ています。

条件さえ揃えば楽しみ没頭できるだけでなく、うまくこなせさえするのです。だとしたら、わたしたちがいま経験している忌々しい職場環境で起こっていることは、まったくもって非効率で謎めいた現象ですらあるのです。仕事は適切に「場」を管理し、提供することで楽しいアクティビティーへと変えることができるのです。

仕事とは関連性のない『遊び』だけを楽しめて、人生で取り組む真剣な仕事を耐え難い重荷として耐えなくてはならない、と信じる理由はもはや存在しない。仕事と遊びの境界が人為的なものだと気づけば、問題の本質を掌握し、もっと生きがいのある人生の創造という難題に取り掛かれる。

成果を最大化するための報酬に目を向けるよりも、個人と仕事との関係性についての「適切なバランス」に目を向けていくほうがよほど重要な課題なのです。このバランス調整を絶妙にこなすコーディネーターが増えれば、仕事はどんどん楽しくなっていくはずです。

仕事という常識を考える

耐え難いことに耐え続ける必要はない、ここ数年そんな風潮が芽吹き始めています。

Twitterを眺めているだけでも、phaさん、プロ奢さん、レンタルなにもしないさんの「ただ生きる」という当たり前のことを当たり前にできない世の中への挑戦が目立つようになってきました。(本人たちからすると挑戦ですらないのだろうけれど)

レールの上を歩くことしかできなかったわたしたちの世代にとっては勇気ある挑戦です。ただ生きて良いという「場」に対しての安心こそが、クリエイティビティーの源泉であり、次の大きな潮流を生み出す土台になるとわたしは思うのです。

そして、その土台が作られて初めてここから更により能動的な運動に向かっていくでしょう。そこには、まだ社会は到達できていませんが、具体的には以下のようなステップをたどる必要があるでしょう。

(1)やりたくないことはやらなくていい
(2)個々人が楽しく楽に生きる
(3)能動的に「みんなで」作り上げる

この3つのステップを経てはじめて「場」としての喜びのあり方が完結するとわたしは思います。いまはまだ(1)の段階、これから社会はより楽しく能動的なモチベーションにシフトしていくはずです(2)。そしてそれがいずれは組織やコミュニティーとしてより構造的な「形」を持つようになるでしょう(3)。

仕事がなぜ楽しくあってはいけないのか?報酬のために成果をあげなければならいのか?苦労しないとスキルアップしないのか?それはなぜなのか。いまわたしたちが辛いと感じている仕事にまつわる「あたりまえ」に科学的な根拠はありません。

りなる

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