Money - 4:お金のムダ遣いってなんだろう?
ここまでの話をまとめるテストとして、景気対策をシミュレートしてみましょう。
インフレ対策
インフレ対策として効果的なのは、実体価値に合わせて「お金の発行量を抑える」、つまりマネーストックを抑えることがキーになります。
具体的な方法としては、金利を引き上げることです。金利が高くなればお金を借りたい人は減りますよね。一般的に日本銀行の金利と民間銀行の金利は連動する傾向があるので、政府は日本銀行の金利を引き上げることで民間銀行の金利上昇を促すのです。
次に、増税することです。税収を増やすことで民間からお金を引き上げることになるからです。
そして、国債の発行を抑え政府の支出を抑えることです。民間に流れるお金が減ることになります。いわゆる緊縮財政と言われるものです。
デフレ対策
デフレ対策として効果的なのは、実体価値に合わせて「お金の発行量を増やす」ことがキーになります。
インフレ対策の逆をやればよいということになります。金利の引き下げ、減税、そして国債の発行を増やし、政府支出を増やすことです。
税金のかけ方を工夫し、動いているお金に回すために、動かないお金に対して税金をかけ、内部留保を吐き出すよう促すといった手法もあるかもしれません。
*
めちゃくちゃ簡単なシミュレーションで拍子抜けしてたらすみません。ただ、このような理解を持っておくだけでも、まったくわからなかった財政政策の良し悪しを測る簡単な指標くらいにはなりませんか?
財政赤字ってなんだろう?
政府の「借金」という表現が、ややこしくしているのかもしれません。政府の借金とは、社会の経済力に応じて「お金の量を維持する」ということです。ですので、政府の赤字や黒字とは、言い換えればお金の量を「増やした」か「減らした」かということです。
政府の赤字(政府が減税して支出を増やす)は、民間経済の黒字になります。逆に、政府の黒字(増税して支出を抑える)は、民間経済が赤字になります。
目先の「財源の負担」「税金の無駄遣い」「財政破綻」などというキャッチーな言葉に流されてしまうと、本質が見えなくなってしまいます。難しい経済理論を熟知する必要はなくて、簡単な相関を理解できればよいのです。
政府のムダ遣い
すると、政府のムダ遣いとはなんでしょう?民間にお金を供給するという観点からするなら「税金のムダ遣い」という批判は、少し的を外しています。財政支出の目的はマネーストックを増やすことです。マクロな視点で見れば、お金は使ったらなくなるものではなくそれは回り回って誰かの黒字になるからです。
もちろん、どうせお金を使うなら意味のあることがいいに決まってます。だから、民間では手が出せないような未知の事業や、クリーンエネルギーの問題、後世の遺産となりそうな文化や芸術活動などに潤沢な資産を出資すればよいのです。もったいないなどと支出を削らせることこそ本末転倒です。
政府に任せられないのであれば事業を無理やりつくる必要もありません。何もせず給付金としてばら撒いても同じことです。ベーシックインカムなどの考えもこの延長にあると言っても良いと思います。
税金 = 財源ではありません。税収がなくとも財政支出はできるからです。実際に今でもそのように予算を作っています。これは個人的な意見ですが、税金とはみんなの生活の「今」を決めることです。何に税金をかけ、どこを緩めるのかによってそこに暮らす人の生活が守られたり自制されたりするからです。そして財政支出は「未来」を創ることです。国内でいくら「ムダ遣い」しようともお金はぐるぐる回るだけです。何に使うかが重要なのです。
つまり、本来政治とは税金と財政支出により、国のカタチ=夢や未来のビジョンを描くものでなくてはならないのです。
*
ここまでが現代のお金のしくみです。ただ、しくみを正しく知ることと、このしくみがわたしたちの社会にとって望ましいモノなのかは別です。しくみそのものを変える必要はないのか?マネーストックとは言え借金じゃないか?支出を増やすだけで生活が本当に楽になるのか?みなさんのモヤっとした直感や感覚は大事に持っておいてほしいのです。現代の資本主義の多くの問題の原点はお金の発行のしくみにあります。そのしくみを知った上で、どのように是正すべきか、その道筋を描くためにこれから必要なのが「思想」だからです。みなさんの思想が社会を創るのです。
次回は、このお金のしくみをベースにして、このしくみの課題や問題、そしてお金の本質的な議論に少しずつ話を進めていきたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?