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「乗車拒否」と声を上げた女性の生き方と私達のできること

SNSで少々話題になったので存じている方もいるかもしれません。
電動車椅子を使っている女性が旅行の際、JRの駅へ赴き希望の駅へ乗せて行って欲しい旨を伝えたところ「希望駅には人手もなく連れて行けない。手前の駅だったら」というJRの提案に女性が再度強く希望の駅へ行きたいと要望したところ、結果的にJRの好意で目的地まで辿り着けたという内容の記事についてです。
これは見出しに「乗車拒否」という強い言葉が選ばれていた事もあり、大きく賛否が分かれました。目につくのはどちらかというと否の方が多かったようにも思え炎上とも言える状態だったやもしれません。

まずこの問題で大きな部分として、

JRの対応は不適切だったのか。
要求した女性のやり方は不適切だったのか。

というところ。

正直に言えば、私は事前連絡の手間を省いて当日JRの職員に対応してもらおうとした顧客のやり方が不適切だと思う。
なぜならJRは「如何なる場合も貴方を目的地へとは導けない」ではなく、「事前連絡さえもらえればそれなりの準備をしたうえでやれる事をやる」という姿勢であったからだ。

そして無人駅というのはそうでもしなければ採算が合わず、運営の善意に基づいてなんとか維持されている駅であるからだ。こんな事になるのなら、廃駅にしてしまおうと運営がいえばただそうなるだけである。
(実際には廃駅にするには審議があるだろうけれど)


そして車椅子ユーザーに関わらず、障害を持つ人のひとつの言動でその界隈全てが批判されかねず、この問題に関係無かった障がい者の方に肩身の狭い思いを強いてしまう場合がある。


けれど、悲しいかな障がい者の為のより良い環境を手に入れる為には力技の様な行為も必要だった時代があると思う。
障がい者の事を思ってではなく、クレームなどの面倒な思いをするくらいならこれを準備しとこう。という健常者の考えによって設置されたり、準備しておいてもらえるものもあったと思う。決して良いやり方では無くても、自分たちの、これからの、障がいを持ちながらも生きやすい世界を作るために敢えて無茶な注文をつける。無理矢理周りを動かす。
いまよりもずっとずっと障がい者に対して厳しく辛く酷くそんな時代もあったろう。

でもいま、この2021年ではその行動は時代に即しているんだろうか?


あらゆる人種や趣向を受け入れ合い、他人の劣るところも秀でたところも認めていこうというこの時代に、その力技は必要なんだろうか。それは本当に障がい者にとって生きやすい世界へ繋がるんだろうか。

いまSNSの発達もあり、これまで人目につかなかったような病気やその人への対応の仕方などのツイートも度々目にする。
例えば視覚障害者の方で、白い杖を持っている人が必ずしも全盲でない事や見える人でも小指の先程度だったりする…
なんて事をわたしは知らなかったし
席に誘導する時突然引っ張るんじゃなく、先に声をかけたり肩を軽く叩いたりしてからだと驚かせなくて済む…
なんて事もSNSで見かける。

これは障がい者の方に限らず、困っている人か声を上げやすくなっているということなんだと思う。

そしてそれが敢えて探さなくても目につきやすくなっているんだと思う。


勿論声をあげても助けてくれない人は山ほどいるけれど、それはどんな力技を使ったって助けてくれない人なのだ。むしろ自分の状況を説明したり、助けを求める事で動いてくれる優しい人達に感化されて力技では動いてくれなかった人が助けてくれるかもしれない。

全ての事柄がそうだとは言えないし、力技でなければ変わらない事もたくさんあるだろうけど

今回のJRと車椅子のユーザーについての問題は力技ではない方がずっとずっと世間が背中を押してくれたと思う。

JRの職員さんたちは、その場でできる精一杯の対応をされたのだろうからお疲れ様とありがとうと言いたい。

当事者である彼女にも、大丈夫ですよと世界は前よりずっと前向きに貴方達と生きて暮らしていく事を目指していますよと言いたい。けれど当事者はそう思っていないからこうなったのかなと思うと、ごめんなさいとも言いたい。

彼女の年齢や病気の重さを考えると、いま心を強く持って発信する力がある事は本当に凄いこと。
健常者にとっての当たり前が当たり前でないという事が、どれほど人生で重く苦しい壁となるか想像もし得ない。

そういう多くの経験たちが彼女のそうした行為へと導いてしまったのなら、私の不甲斐なさを謝りたい。

でもこうして考える機会を与えてくれたのだから何もかも無駄では無かったのかなと思うので、これからも彼女が発信し続ける事を願います。

そして遠くない未来に、人種や、趣向や、年齢や、障がいという立場の違う人達が対等に暮らしていける世界になるように願います。


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