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ファンによるファンのためのカルチャーイベント「DoKomi」@ドイツに行ってきました。

6月28~30日に、ドイツ・デュッセルドルフでオタクカルチャーイベント「DoKomi」が開催されました。3日間で累計約18万人がイベント会場に集まった巨大イベントで、個人クリエイターのブースから出版社による書籍販売、刀などのグッズ販売、コスプレイベント、ワークショップとオタクが楽しみたいことがすべて詰まったイベントです。個人で参加しても、クリエイターとして参加しても楽しいので、是非後続の方が続くことを願って。

※私自身は普通に入場チケットを購入し、一般参加者として参加しました。

DoKomi とは?

DoKomi はドイツで開催される大型のコミック・コンベンションです。ドイツではいくつかの年でコミコンが開催されていますがその中でも大規模なもののひとつ。日本のアニメ・漫画好きが集まる中で、日本カルチャーのアピールの場にもなっています。特徴は中日である土曜日の夜にDJライブとコスプレありのダンスパーティーがあること。ドイツを中心に多くの人が集まり、2024年は18万人以上の来場者が訪れたそうです。会場はMesse Düsseldorfという巨大な見本市会場の9ホールを活用。行ったり来たりするだけで体力を消耗しました。


コスプレーヤー、大集合

参加者の特徴はとにかく「コスプレーヤー」が多いこと。このコスプレーヤーはかなり幅が広く、日本人のコスプレのようにキャラクターそっくりに作り込んでくる人もいれば、キャラクターの洋服を着るだけの人もいる。キャラクターが印刷されたTシャツという人も目立ちました。3日間いる間に「私も着てくるべきだった」と思わされました。コスプレをしたまま自動車や公共交通機関に乗って会場まで来るので、街を歩いている中で「あ、あの人DoKomiに行くな」とわかります。(そしてついて行きました)以下、いくつか撮影させていただいたものです。


ジブリのキャラクター。すばらしかった
この方は奇跡的に見つけた、刀剣乱舞の大和守安定。舞い上がってやっかいオタクムーブをしてしまいました。
ジョジョの奇妙な冒険より。のりのりだった


会場外に「RAMEN」のフードトラック

ちょっと小腹が空いたら、ホール外のフードトラックコーナーへ。ドイツらしいソーセージに加え、日本の漫画・アニメファンが多い会場ということで、Ramen、YAKISOBA、Takoyakiのブースも。みな思い思いのものを買って座って食べていました。会場が広いので座ってゆっくりするところが十分あるのもうれしい。



グッズや漫画が買える企業ブース、アーティストブース

イベントのメーンは企業や個人が出すブースです。ホールごとにテーマが分かれており、「漫画・アニメ系」「ゲーム系」「ファッション系」「個人ブース」。漫画・アニメ系の中心は、日本語版の翻訳作品を扱う出版社や書店です。通信販売があるとはいえど、なかなか街中の書店では日本の漫画を手にすることは限られているということで、こうしたイベントはファンにとってコレクション対象となる紙の書籍を買っていきます。

同時に人気なのはフィギュアなどの漫画・アニメ関連グッズ。公式化非公式かははっきりしないのですが、勢いよく売れていきます。タイトルごとにグッズをまとめ、福袋のようにして売るお店もありました。意外に人気なのが刀。古今東西、人は刀を振るいたいのですね。



漫画・アニメ以外で大きなブースを占めたのはゲームです。なんといってもNintendo of Europaが大きなブースを出し、マリオカートなどを実際に楽しめるようにしていました。大画面でプレーする人の後ろには椅子が置いてあって、自然とeSportsのように楽しめるようになっています。あとゲームコーナーの一角では、ダンス関係のゲームを使ってダンスする人が。




このダンスコーナー以外にも、ダンス専用ステージがあり、みんなよく踊る。面白いのはランダムで音楽が流れて、踊れそうならぱっと飛び出してみんなで踊る、というコーナー。みんなよく踊れるなと感心していました。


アーティストブースは、個人のクリエイターが自分の創作物を展示・販売するブースです。会場が広いのですが一人ひとりのブースのスペースが広いので、意外に数は多くなく、ブースをぐるりと回って楽しめます。どちらかというと一次創作が多いので、コミケというよりはコミティアや文学フリマに近い雰囲気が。漫画や小説よりもイラストやタペストリー、ポスターやステッカーが多い印象でした。

ちなみに、このアーティストブースが非常に「健全」なのは「18+」という18歳以上限定のコーナーがあるからです。こちらはパスポートなどで年齢確認をしてもらえるバンドで年齢確認のうえで入れるホールです。「制限がかかると人の欲望には制限がかからないのだな」と実感させられる作品が並びます。と同時に、日本酒含むアルコール販売、縄師の実演、tatooのサービスなどが行われていました。ここはすべてを受け入れられる大人のためのスペースです。


イベント全体を彩るのがステージイベントです。ほぼすべてのスペースにミニステージがあるのと同時に、会場にある大きなステージを使い、アニメ制作会社のプロデューサーらのトークイベントやVtuberのライブ、ダンスライブ、アニソンライブが行われます。




私が参加したのはアニメスタジオOrangeのトークイベント。気合いの入ったトライガンのコスプレをした人が一番前を陣取っており、熱意がすごいと思いました。



DoKomiには個人の情報発信の場も用意されています。それがワークショップ。それぞれ熱心なファンが自分の話したいことを思いっきり話すというもの。DoKomiのワークショップはどちらかというと、ファンのためのノウハウ的な側面が強く、漫画の単行本を出す方法やアーティストブースを出す方法、BLをかくための解剖学などの講座がありました。目を引いたのは日本旅行のためのワークショップで「サムライとポケモンのいる国へ」とかかれていて、「すみません、どちらもいません」となりました。

個人のアピールが多いコミコンですが、来場者に向けた企業のアピールも。日本企業では伊藤園とJALのブースを出展しました。アーティストブースのそばには、おなじみのWacomのブースも。


伊藤園はおーいお茶をアピール


https://www.handelsblatt.com/adv/presseportal/ito-en-ltd-launch-des-ungesuessten-oi-ocha-gruentees-im-tetra-pak-auf-der-anime-convention-dokomi-in-duesseldorf/29867554.html

しかし商品アピールという点では、完全食品販売のスタートアップ、YFoodがうまかった。Genshin Impactとくんで、会場で試供品を配布し、一緒にGenshinのサービスにアクセスできるようにしていました。



なお、中日の土曜日の夜には、別途チケットを購入してDJイベント&コスプレダンスパーティー。アルコールも入って盛り上がりは最高潮になります。

DJライブの様子はこちらの投稿がよくわかります。


企業がまだ様子見のファンの聖典


 ここ10年以上、各国のコミック・コンベンション(コミコン)に参加してきた身としては、今回の「Dokomiにはファンによるファンのためのコミコン」の基本を三滝がしました。世界の大規模なコミコンといえばフランスのJapan Expo、米国のAnime Expoなどがあります。これらはアニメファンが世界中から集まる場所として企業の注目を集め、アニメ制作会社や出版社のパネル発表が急増、日本から漫画家やアニメの声優、アニメ制作会社のクリエイターを呼び、クリエイティブについて話すのが定番になりつつあります。入場料を取っているとはいえども、多くの人が動くコミコンは採算が厳しく、コロナ前後で休止状態となったものもあることを考えると、企業を呼び込んでより多くの人を集め収支を改善するのは悪いことではありません。

それでも企業という「公式」の目がないところでファンだけがファンとしての欲望を解放する場所というのはその熱意が気持ちがいい。そんな熱気を直接味わえる場所としてドイツのコミコンは貴重でした。もしかしたら将来、企業のパネルなどが増えて個人のファンの発信は減るかもしれませんが、「ファンによるファンのための場所」は残ればいいなと思います。

またこれは米国も共通かもしれませんが、とにかく来場者が若い。「これがZ世代に日本の漫画・アニメが人気ということか」と実感しました。

参加を考える方へ

まず一般参加を考える方へ。行きましょう。何も損はありません。言葉がわからなくても大丈夫。「すみません」「ありがとう」さえわかれば十分です。開催の数カ月前から入場チケットの発売が始まりますので観光がてらまずは1日分のチケットを購入し、気軽にふらりと立ち寄ってみる。コスプレイヤーを見て、ステージでのライブをみて、時間があればふらりとアーティストコーナーに行く。思わぬ好みのアートが見つかるかもしれません。勝手に写真を撮ると行った行為をしなければ「just looking」でも相手は歓迎してくれます。見せてくれたら「ありがとう」、気に入ったがあれば「ください」でいいでしょう。

雰囲気をもっと知りたい方は是非この動画を。そうそうこんな雰囲気だったと思い出しました。

そしてアーティストとして参加される方へ。制作物を海を越えて持って行くなど少しハードルがあがります。しかし今回のDokomiでも日本からアーティストコーナーに参加されている方がいらっしゃいました。

例えばMasakiさん

ドイツ以外にもフランスのJapan Expoにも出展されている猛者です。X(旧ツイッター)で今回のイベントの様子を発信されているので是非ごらんになってください。

 
もうひとかたは、嶋永ののさん


彼ら以外にもポーランドやフィンランド、スペインといったドイツ以外からアーティストコーナーにブースを出されている方がいらっしゃいました。もちろん現地在住とおもわれる日本人の方も少なくありません。チケット代を払って会場に参加している日本の漫画・アニメファンおよび日本を感じられるイラストやアートへの関心が高いファンは、常に自分の感性にひっかかるものを探しています。

ポイントは並べるものです。残念ながら漫画や小説とした冊子形態のものは少ない。売れにくいのではないでしょうか?ステッカー、キーホルダー、シール類、ポスターなど1枚画はかなり売れていました。そしてそれぞれ、Youtubeやインスタグラム、Xなど日ごろの情報発信をしているアカウントの情報を提供。ここでファンと接点を作る取り組みをしていました。


といろいろかいてきましたがいいたいことはひとつ。みな海外のコミコン行きましょう。仲間がたくさんいますよ。


メモ
私はdokomiで見損ねたのですが、ドイツには「マンガやアニメの内容を演劇にする」というショーアクトというカルチャーがあります。dokomiでも上演されていたもよう。こちらに詳しい記事があります。

コスプレじゃ物足りない! ドイツ


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