見出し画像

RIZIN45を見て

 大晦日のRIZIN45。私は途中から現地観戦したので、気になったカードの感想を。


・元谷vsモラレス

 未知の強豪だったモラレス。元谷は圧力をモロに受けてしまい、ただただ下がらされる展開が2Rの途中まで続きました。セコンドからは、「受けるな」「回れ」の声が盛んに飛んでいましたが、それが実現出来るようになったのは、3Rから。
 ただそれからも、オーバーハンドの左が多かったと思いますが、ほぼ当たらず。寝技に持ち込んでも、ポジションが取り切れないうちに仕掛けてしまい、結果立たれていたように見えました。この辺りは、モラレスの対応力を評価するべきだと思います。
 モラレスは、終盤は疲れからか勢いが落ちたとは思いますが、受けに回り過ぎることなく、時折仕掛け返したことで、確かな判定勝ちを掴んだと思います。

 元谷は復活を期したいところでしたが、手痛い敗戦。中島や佐藤、牛久らが加わって来る中、かなり土壇場に追い込まれた感があります。今後どんな試合が組まれるのか、見て行きたいと思います。下手をすると全然組まれないまま放置される可能性もありますが…


・トッドソンvs扇久保

 下馬評では、世界的な実績のあるドットソン優位の声が圧倒的だったこの試合。
 試合が始まってすぐ、スピードには圧倒的な差があるな、と正直思いました。これは扇久保には苦しい、と思ったものの、1R途中で扇久保が組んでテイクダウンして上を取り続け、終盤にはマウントをとって圧倒的な優位を印象付けました。
 2Rからはほぼ互角でしたが、3Rには扇久保は組んで、テイクダウンには至らなかったものの、自分主導の時間を作りました。これは、地味に効いたと思います。

 判定は、現時点では採点詳細は不明ながら、1Rでの優位が効いたのでしょう、3-0で扇久保でした。トータルマストとは言え、1Rが優位、2,3Rが互角なら、1Rを優位に取った方が勝つのが当然です。扇久保は見事な復活勝利となりました。とは言え、チャンピオンになれるかと聞かれれば、かなり苦しいと言わざるを得ないのですが…


・スダリオvs上田

 日本人ヘビー級に特に思い入れはないのですが、なかなかに見応えのある対決となりました。

 上田には、引退試合の高阪剛に負けてしまった奴、という印象しかなかったですが、蹴りを中心に試合を組み立てつつ、顔面パンチにもしっかり対応出来ていたと思います。ただ、組みに関してはまだまだ改善の余地が多そうに見えました。
 スダリオは、とにかく突進するスタイル。
 この二人の対決、強引にUFCの選手で例えると、上田がシリル・ガーヌ、スダリオがデリック・ルイスだと、私は感じていました。

 ガーヌとルイスの試合同様、勝ったのは上田。スダリオの試合後の記者会見での言い分を見ましたが、蹴りは軽くて効いてないと言う割にはなかなか距離も詰められず、最後のストップにも不満を漏らしていましたが、見ていた身としては、説得力を感じません。
 単なる強がりではないのだとしたら、今後の試合で証明してくれれば良いでしょう。正直、そんな日は来ない気がしていますが。

 上田は、世界云々を言うのはまだ早いとは思いますが、それを視野に海外で練習しないと、そもそも適切な練習相手がいないという問題があります。UFCには拘らず(そもそもこの戦績では契約の話は来ないはず)、外に出て戦って欲しいものです。


・平本vsYA-MAN

 半分エンタメ枠と捉えていたこの試合。YA-MANの打たれ強さと体の強さ、平本の打撃技術と対応力が目立った試合となりました。
 YA-MANの前に出る力、というか根性は凄いものの、接近戦での打ち合いでも平本の技術が一段上。かなり食らっていましたし、組みで耐え切れずにテイクダウンされるようになったのも、そのダメージがあったから、のように見えました。
 平本がテイクダウンしても極めることは出来なさそうでしたが、優位な時間も作れますし、一休みも出来ます。この辺りは、これまでのキャリアで培った対応力を、平本がしっかり見せたと言えます。
 
 ただいくら打たれ強いYA-MANが相手とは言え、競技はMMAであり、キャリアは平本の方が圧倒的に上。近付いてブン回すだけの相手なら、テイクダウンして漬けてしまうか、あくまで打撃で圧倒して見せるか、のどちらかを見せたかったのが本音ではないでしょうか。
 現状、朝倉未来との試合が期待されるのでしょうが、その後の展望はどう考えているのか。MMAで世界的トップを目指すのはもう(実質的に)諦めたように私には見えますが、まだ上を目指すなら、目指すのも良いのではないでしょうか。まあ、勝手にすれば良いのですが。


・クレベルvs齋藤

 金原戦の敗戦で攻略法が知れ渡った感もあったクレベル。しかし、あれを実践出来る日本人選手は金原だけだった、というのが示された試合となりました。

 1R、クレベルが転んだ時に、齋藤は上を取ろうとはせず、寝ているクレベルを蹴るだけだった時に、「ん?」と思いました。
 寝技師の寝技を恐れるあまり、極端にグラウンドを嫌がることは、クレベルに負けた者の敗戦パターン。それに嵌まっているのでは、と感じたのです。

 2R、タックルしてテイクダウンするクレベルに、強い積極性を感じました。齋藤はうまいことスクランブルで上になったものの、パスガードはほぼ仕掛けず、上から殴る体だけ。この点でも、金原よりは数段積極性が劣っているように、私には見えました。

 そして3R、クレベルはタックルに来た齋藤をギロチンに捉えつつ、あっさり足でスイープ。一気にダースチョークで極めたのは、素晴らしい強さでした。
 齋藤も当然、様々な想定をして、準備をしていたはず。金原に次ぐ、もしかしたら互角の対応力を持っているとの評価もあった齋藤相手に、極めて勝ったクレベルは、強さが戻ったと評するべきか、更に強くなったと評するべきか、は私にはまだ判断出来ません。打撃に関しては成長はあるのかも知れませんが、齋藤がかなり消極的だったので、これもこの試合では何とも判断出来ません。
 しかし、クレベルにはまだトップ戦線で戦う力があることは、間違いないでしょう。今後の動きが楽しみです。


・アーチュレッタvs朝倉

 朝倉兄弟には批判的な私でも、ライトヘビー級ならまだしもバンタム級(61.0kg)で2.8kgオーバーした選手を、応援する気にはなりません。
 とは言え、アーチュレッタは積極的に前に出てパンチも当て、動きのスピード感も悪くないように見えました。当日リミットが68kgということで、スタミナに不安があったのかも知れません。

 朝倉は、アーチュレッタの打撃をある程度はもらいつつも、決定打は避けて応戦。レスリング面でもやや最後は元谷戦を思わせる膝蹴り、そこから追撃のパウンドでストップ。 
 本人も
「やっと勝てました」
 と言うほど、大晦日での敗戦が続いた朝倉。試合前のバタバタで気苦労もあったことでしょう。

 アーチュレッタはコンディション面に不調があったかも知れませんが、全て自らが蒔いた種。試合後の空気を読まないマイクも、もう来なくて良いよ、と言いたくなるものでした。

 朝倉には海外挑戦の話もあるようですが、具体的な話があるのでしょうか。あまり詳しくない人は、オリックスの山本由伸がMLBにポスティングで行くのと同じ感覚なのかも知れませんが、正直、日本のMMA団体王者の評価は、そこまで高くないと思います。恐らく、よく分からずに言っているのではないでしょうか。
 ただ本人は、海外でやるならフライ級で、と言っているようなので、かなり現実を見ながら構想を練っているようです。その辺りの地に足が着いた感じは、私は結構好きです。そんなに熱心に応援する気はないですが、今後を見て行きたいと思います。


・堀口vs神龍

 待望の再戦となったこの試合。1Rは神龍のレスリング力、特に前に出て押し潰して行く圧力が素晴らしく、堀口を相手に優勢に進めました。堀口のギロチンもかなり深く入っているように見えたのですが、本人曰く、浅かったとのこと。
 そして2R、試合の流れを持って来たのは、堀口の打撃でした。スタンドでの打撃はもちろん、グラウンドでのパウンドも、凄まじい威力。特にあのパウンドがなければ、神龍がチョークで極められることはなかったのではないか、と思います。

 やはり堀口の幅の広さ、これまで培ったものの深さを知らしめた試合となりました。結婚も、おめでとうございます。


・これから

 今後の大会日程も発表になり、2月、3月、5月と大会があります。カード的にも魅力のあるものが多く、期待出来る点は十分にあります。試合自体は日本トップレベルで、何の問題もないので。
 要望としては、話題性優先の試合、K-1軍団の試合は、それ用の大会にまとめて欲しいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?