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ミュージカル、舞台、クラシック好き。海外観劇派も、働き方改革の恩恵で国内観劇活動を再開…

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ミュージカル、舞台、クラシック好き。海外観劇派も、働き方改革の恩恵で国内観劇活動を再開。 現在はコロナ禍でセレクティブに活動中。 ミュージカル、ストレートプレイ中心に、歌舞伎、オペラ、クラシック、新感線など。

記事一覧

ダブリンの鐘つきカビ人間

 「いい、すっごくいい」「観て」  興味のある演目ではあったものの、諸事情で観劇を諦めていたので、観劇予定だという友人の妹に感想のシェアを依頼した結果、友人が観…

LuLi
7日前
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Moulin Rouge! - 2024 Opening Night

 「貴方には何も感じない。何も」  2幕、サティーンがクリスチャンを突き放すために言った台詞-  大変残念ですが、2024年のMoulin Rouge!初日に対する私の偽らざる感…

LuLi
1か月前
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Show must go on - Endless SHOCK - May 2024

 帝国劇場に初めて足を踏み入れたのはレ・ミゼラブルの初演だった。  あの日から、何度足を運んだかわからない帝国劇場。  だが、その中でどうしてもチケットが取れなか…

LuLi
1か月前
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おかえりなさい、礼さん

 ずっと。  ずっと怖くて書けなかったことがある。  宝塚星組トップスター、礼真琴さんのことである。  昨年8月、礼真琴さんが休演し、わずか数日で舞台に復帰した。 …

LuLi
3か月前
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「RAGTIMEの時代」に終焉を

 その歌を耳にしたのは中学生の時だった。  世の言うところの「普通」の中学生とは「ちょっと違っていた」私には教室に居場所がなかった。自分らしさを失ってまで人の輪…

LuLi
8か月前
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Moulin Rouge! the Musical - Summer 2023 Japan

 ミュージカルへの入り口は幼少期に観た数々のミュージカル映画だった。  雨の日には傘をさしてジーン・ケリーの真似をしていたし、いつかジュリー・アンドリュースにな…

LuLi
10か月前
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観劇記 - October 2022

 私の仕事はとにもかくにも案件次第で、繁忙期というものが存在しない。  にも拘らず、毎年10月は多忙になりがちだ。  とはいえ、観たい演目は目白押し。  日記に詳細…

LuLi
1年前
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Daddy Dear - Daddy Long Legs 2022

 ジョン・ケアードのことが好きだ。  何故そんなにも彼のプロダクションが自分の心をとらえるのか、ずっと思案しているが最終的に分解しきれずに終わるのが常だ。  仕方…

LuLi
1年前
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ノートルダムの鐘 - August 2, 2022 ソワレ

 7年ぶり2回目となるミュージカル「ノートルダムの鐘」を観劇。  なお、日本語での観劇は初めて。  「ノートルダムの鐘」は幼少時に観た映画に始まり、レ・ミゼラブル…

LuLi
2年前
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舞台「千と千尋の神隠し」千穐楽の幕が上がるということ

 7月1日17時、舞台「千と千尋の神隠し」千穐楽のみ公演を実施との報が出た。  私の周囲には、この千穐楽のチケットを持っている方が数人おり。  当然、その誰もが観劇…

LuLi
2年前
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千と千尋の神隠し - 3/5 マチネ&ソワレ (帝国劇場)

 東宝が海外スタッフを招聘して90周年の作品を作る。  それがオリジナルとはいえ、原作もの。  しかも、ジブリとはいえアニメ。  それも、ブラッド・ハークを招聘した…

LuLi
2年前
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神田沙也加さん

 神田沙也加さんが亡くなられた。  深夜、寝る直前に重篤の報を、そして亡くなられたことを知りーその日は明け方まで涙が止まらず。  以来、仕事をしていても、寝ようと…

LuLi
2年前
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余白の美 - 「ナイツ・テイル -騎士物語-」2021 総括

 2021年の「ナイツ・テイル -騎士物語-」が終わりました。  博多座の前楽、そして千穐楽ー  それは何もかもが煌めく、素敵な「何か」にやさしく包まれた愛おしい時間で…

LuLi
2年前
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アテナの掌上 - 「ナイツ・テイル」博多座3階席 11/17 ソワレ

 福岡はおろか、今日撮影をした写真はひとつもない。  劇場に到着したのは開演4分前、劇場を後にしたのは1度目のアンコールが終わったタイミングだった。  昨年の"僕ら…

LuLi
2年前
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Triangle Inferno - 宝塚版「シャーロック・ホームズ」

 宝塚を一番楽しむことができていたのはファンになりたての頃だったなとふと思い出すことがある。当時、宝塚は地上波でも放送されていたので、映像を後輩のお母様が過去の…

LuLi
2年前
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星組「ロミオとジュリエット」#2 - 瀬央ゆりあの「ティボルト」

 宝塚を観劇する楽しみに「ひとりの役者の成長過程を楽しむ」というものがあると思う。もちろん舞台を観ていると気になる役者は出てくる。  だが一方、観劇の間は物語の…

LuLi
3年前
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ダブリンの鐘つきカビ人間

 「いい、すっごくいい」「観て」  興味のある演目ではあったものの、諸事情で観劇を諦めていたので、観劇予定だという友人の妹に感想のシェアを依頼した結果、友人が観劇、その友人から熱烈なレコメンドを受けて観劇となった。  人間社会における普遍的なテーマがファンタジーの形に落とし込まれており、ミュージカルという上演フォーマットを選択したい気持ちがよくわかる作品だった。  友人が劇団四季の子供向けミュージカルにありそうと言ったのが良くわかる(実際結末の変更をすればできそうだ)。  

Moulin Rouge! - 2024 Opening Night

 「貴方には何も感じない。何も」  2幕、サティーンがクリスチャンを突き放すために言った台詞-  大変残念ですが、2024年のMoulin Rouge!初日に対する私の偽らざる感想です。  昨年、13回観劇し、時間をかけて感想をあげたくらいには「楽しく狂った」演目に対し、ここまで何も感じないとは思いませんでした。  「虚無」ではありません「無」なのです。  昨年の感想は以下をご参照ください。  プロダクトが深化する過程にフォーカスしたため長文です。  2023年からの

Show must go on - Endless SHOCK - May 2024

 帝国劇場に初めて足を踏み入れたのはレ・ミゼラブルの初演だった。  あの日から、何度足を運んだかわからない帝国劇場。  だが、その中でどうしてもチケットが取れなかった演目がある。  堂本光一が主演する「SHOCK」である。  BlueskyやXに感想を載せようと思ったが、パフォーマンスに対する好印象とは対照的に、脚本や物語の設定、演出等に対し、シビアな感想を持ったため、短文ではどうしても言葉足らずになりミスリーディングになることからnoteに書き起こすことにした。  演目に

おかえりなさい、礼さん

 ずっと。  ずっと怖くて書けなかったことがある。  宝塚星組トップスター、礼真琴さんのことである。  昨年8月、礼真琴さんが休演し、わずか数日で舞台に復帰した。  彼女が復帰した翌日は私の唯一の「1789」観劇日だった。  漏れ伝わる状況から、彼女が万全の体制ではないことは想像に難くなく。  普段の彼女の舞台ならば、何を考えるでもなくただただ物語の世界に没入するだけなのだが、この日ばかりは「何事も起きませんように」と、祈るような気持ちで舞台を観ることになった。  あの日

「RAGTIMEの時代」に終焉を

 その歌を耳にしたのは中学生の時だった。  世の言うところの「普通」の中学生とは「ちょっと違っていた」私には教室に居場所がなかった。自分らしさを失ってまで人の輪に入っていこうという気概も器用さもなかった。  人の中にいるときほど孤独を感じていた暗黒期ー自分のまま生きるために、何と戦っているのか、自分自身でさえわからなかった時代。  学校に向かう足取りが重くて仕方なかったとき。  一歩前に振り出す手助けをしてくれた曲のひとつだった。  四半世紀を経て「ラグタイム」を観劇する機

Moulin Rouge! the Musical - Summer 2023 Japan

 ミュージカルへの入り口は幼少期に観た数々のミュージカル映画だった。  雨の日には傘をさしてジーン・ケリーの真似をしていたし、いつかジュリー・アンドリュースになれると思っていた。  父は娘にありとあらゆるミュージカル映画を見せ、せがまれるままに新しい映像を与え続けた。そして小学校にあがる頃「もうこれ以上見せられるものはない」と私に告げた。  当時日本とアメリカで手に入るものは見つくしていたのである。  そんな父に連れられて映画「ムーラン・ルージュ」の試写会に出向いたのは口を

観劇記 - October 2022

 私の仕事はとにもかくにも案件次第で、繁忙期というものが存在しない。  にも拘らず、毎年10月は多忙になりがちだ。  とはいえ、観たい演目は目白押し。  日記に詳細な感想をしたためる時間がなかった為、デジタルデバイスに残した観劇記に少し手を入れたものを試験的に公開してみる。 血の婚礼(シアターコクーン / ホリプロ)  嘗て、白黒映画で観た印象もあってか、眼前で繰り広げられる物語に「色がある」ということに不思議な感覚を憶えた本作。  シェイクスピアほどではないが、ともすれば

Daddy Dear - Daddy Long Legs 2022

 ジョン・ケアードのことが好きだ。  何故そんなにも彼のプロダクションが自分の心をとらえるのか、ずっと思案しているが最終的に分解しきれずに終わるのが常だ。  仕方がない。  映画でしかミュージカルを見たことのなかった私に劇場でミュージカルを見せてくれた人こそがジョン・ケアード、その人であり。  ひな鳥が初めて見た成鳥を親だと信じるが如く、演劇作品のベースを作ってくれた親がジョンなのである。  今回、感想をnoteに記すことは避けようと思っていた。  この作品については音楽的

ノートルダムの鐘 - August 2, 2022 ソワレ

 7年ぶり2回目となるミュージカル「ノートルダムの鐘」を観劇。  なお、日本語での観劇は初めて。  「ノートルダムの鐘」は幼少時に観た映画に始まり、レ・ミゼラブルを切っ掛けにヴィクトル・ユーゴーを読破した際に勿論読んだし、フランスで音楽劇を観たこともある。  子供とき―映画を見たときは「醜いという理由だけで嫌われていたカジモドを可愛そう」。そして「エスメラルダのように本質を見られる人になりたい」そう思って見ていた。  自身の成長に伴い、人の傲慢さに思いを馳せたこともあるし

舞台「千と千尋の神隠し」千穐楽の幕が上がるということ

 7月1日17時、舞台「千と千尋の神隠し」千穐楽のみ公演を実施との報が出た。  私の周囲には、この千穐楽のチケットを持っている方が数人おり。  当然、その誰もが観劇を楽しみにしていた。公演が再開されるのか、仕事が手につかない、地に足付かないふわふわとした思いを抱いているのを見てきた。  そんな彼らの観劇が叶うことになった。  公演再開の報に触れた彼らの喜びに「良かったね」「おめでとう」という気持ちが自然と湧き上がった。  ただし。  この「強行」は本当に「正解」なのかー

千と千尋の神隠し - 3/5 マチネ&ソワレ (帝国劇場)

 東宝が海外スタッフを招聘して90周年の作品を作る。  それがオリジナルとはいえ、原作もの。  しかも、ジブリとはいえアニメ。  それも、ブラッド・ハークを招聘したというのにミュージカルではなくストレートプレイ。  そう思った人はひとりやふたりではないと思う。  ジョン・ケアード筆頭に、招聘されたスタッフに瞠目し。  プリンシパルキャストのトップレフトには橋本環奈、醍醐虎汰朗、田口トモロヲ、夏木マリと、映像を主戦場とする面々が並び。  ライトサイドはミュージカルを主戦場と

神田沙也加さん

 神田沙也加さんが亡くなられた。  深夜、寝る直前に重篤の報を、そして亡くなられたことを知りーその日は明け方まで涙が止まらず。  以来、仕事をしていても、寝ようとしてもー  大好きな観劇をしている時でさえ、どこか頭の片隅、心の奥で彼女のことが離れないという状況が続いている。  神田沙也加という人を知ったのは彼女がデビューした時のことだった。  SAYAKAという名の少女は、歌手になりたいと言ってデビューしたにもかかわらず、傍から見るとあまり「幸せそうに見えない」と思ったこと

余白の美 - 「ナイツ・テイル -騎士物語-」2021 総括

 2021年の「ナイツ・テイル -騎士物語-」が終わりました。  博多座の前楽、そして千穐楽ー  それは何もかもが煌めく、素敵な「何か」にやさしく包まれた愛おしい時間でした。  「同じ演目をなぜ複数回に渡り観るのか」という問いに対し「同じ舞台はふたつとしてないから」と答える。そのことを疑ったこともない。  だが、博多座の「ナイツ・テイル」は帝国劇場の千穐楽から大きな変化を遂げており。同じ舞台と評することを個人的には躊躇する。  帝国劇場公演は素晴らしい公演だった。  

アテナの掌上 - 「ナイツ・テイル」博多座3階席 11/17 ソワレ

 福岡はおろか、今日撮影をした写真はひとつもない。  劇場に到着したのは開演4分前、劇場を後にしたのは1度目のアンコールが終わったタイミングだった。  昨年の"僕らこそミュージック"以来の福岡、そして博多座の滞在時間は3時間にも満たないものだった。  コロナ第6波を警戒し、今のうちに必要な出張をとの指令に出張が急遽決まったのは10日ほど前。  沢山の方に「行くべき!」と背中を押されて…ならば、行ってやろうではないか!と博多座の「ナイツ・テイル」チケットを探すことになった。

Triangle Inferno - 宝塚版「シャーロック・ホームズ」

 宝塚を一番楽しむことができていたのはファンになりたての頃だったなとふと思い出すことがある。当時、宝塚は地上波でも放送されていたので、映像を後輩のお母様が過去の映像を沢山貸し下さり、それを観るのが楽しみだった。  自由になるお金のない演劇が大好きだった中学生にとって、劇場に行けなくとも未知の作品に数多く触れられる宝塚はとても魅力的、そして貴重な存在だった。  元々、芝居やミュージカルが好きだったこともあり、前半の芝居が私にとってはハイライトで。どれだけ観てもレビューの魅力や

星組「ロミオとジュリエット」#2 - 瀬央ゆりあの「ティボルト」

 宝塚を観劇する楽しみに「ひとりの役者の成長過程を楽しむ」というものがあると思う。もちろん舞台を観ていると気になる役者は出てくる。  だが一方、観劇の間は物語の世界に没頭しており、特定の誰かを追いかけるという器用さが私にはない。  私の観劇スタイルがこのようなものだから、必ずある瞬間が訪れる。  「いま目の前にいるこの人はいったい誰だ」  それがこの1年ほどの「瀬央ゆりあ」である。 宝塚歌劇団 星組「ロミオとジュリエット」#2  ~ 瀬央ゆりあの「ティボルト」   ~そ