シェア
この記事はマガジンを購入した人だけが読めます
源沖継は、有り余るほどの才能を持つ高校3年生。模試の成績は全国でもトップクラス、スポーツをやればプロからの誘いが引きも切らず、地元の不良たちからも尊敬の念を集めている。当然ながら大勢の女子生徒にも慕われていたが、どうした訳か沖継はそれらの女の子たちの告白に一度たりともOKをしたことがなく、彼女いない歴=年齢という不名誉な記録を更新し続けていた。 そんな沖継の転機は、18歳の誕生日に訪れる。 親類縁者勢揃いで大々的に開催された誕生パーティ――かと思いきや、実は結婚披露
俺は源沖継。東京近郊の芳沢市在住、高校三年生。歳は十七だけど、明日、五月二十一日が誕生日でさ。もうすぐ十八歳って言った方が早いかも。 世間的には、十八歳ってひとつの節目らしいよな。 たとえばうちの両親は「十八になったらさすがにもう子供扱いできないな」だの「法的にも結婚できる歳ですしね」だの言いながら昔日を偲ぶ遠い目をしてたし、たまたま俺と生年月日が同じ親友の拓海も「競馬やパチンコ、車の免許、そして何よりエロ方面もついに全面解禁だな!!」なんて嬉しそうにはしゃいでたっ
1-1:華麗かつ平穏な俺の日常 言い忘れてたけど、俺の通学風景は同級生の女友達・滝乃コノとセットで成り立ってる。昨日は用があったらしくて学校を休んでたんだけど、俺が十八歳の誕生日を迎えたこの日はちゃんと通学路の途中でいつも通り俺を待っていた。 「おはよ、沖継くん。相変わらず時間ぴったり」 「それはお互い様」 コノは徒歩通学なので、俺は愛用のMTBモドキ号を降り、押して歩く。 で、昨日あった出来事を何となく一通り話してみたんだけど。 「ふーん、じゃあ、今年の沖継く
2-1:それが俺の正体なんだってさ 俺はその時、和服を着流しで粋に着こなしつつ、ダブルクラッチ必須の旧型自動車をクーペからダンプまで自在に乗り回し、右手には旧軍の三八式小銃、左手には形式不明の大口径拳銃を携えて、何とも表現しがたい醜悪な姿をしたバケモノどもの群れを片っ端から撃ち殺しまくっていた。 何だそりゃ意味わからん滅茶苦茶じゃねぇか、と誰しも突っ込みを入れたくなるだろうけど実際に無茶苦茶で、目につく人たちの生活様式や文化レベルも、江戸時代、明治、大正、戦前戦後が入り
3-1:ほころび 1 ガキの頃の俺は、いつも、ひとりぼっちだった。 「また沖継か……」 「邪魔なんだよな、あいつ……」 「おい、別んとこ行こうぜ」 「沖継がいたら、面白くないんだよ」 サッカーでも、野球でも、ゲームでも、絵を描いても、プラモを作っても。俺に叶うヤツはいなかった。みんなで一緒に楽しむ、競い合う、そんな形には絶対ならない。いつも俺が一人勝ちして終わっちまう。だから、避けられて、疎まれて、嫌われて。 しょうがないよな、だって俺は特別なんだし――そう割り切
4-1:追憶 俺が拓海と初めて出会ったのは、今からちょうど五年前。 中学一年の一学期、ある日の昼休み。 第一印象は最悪だった。 「源沖継とか言うヤツ、このクラスにいるんだよな。どいつ? ……ああ、お前か。何だか全然凄そうに見えないな。ケンカとかめちゃくちゃ強いらしいけど、お前、どうやって鍛えてんだ? ちょっと教えろよ」 見たことない顔だなと思ったら、この日に九州は熊本から転校してきたばかりらしい。しかも転入したのは俺と違うクラス。そんな転校生がいきなりやってきて