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あした、本屋さんにいきたくなる。「あしたから出版社」を読んで。


わたしが本を読み始めたのは、小学生の頃。
休日の午前中に図書館に行って、1週間分の本を借りる。
とくべつ本を読むことが好きな子どもだったわけではないが、
ひまだったからなんとなく読んでいた。

小学校高学年になると、もっぱら漫画が好きになって
ちゃお・りぼんといった少女まんがの連載を心待ちにしていた。
その頃には、ブックオフに行って何時間でもまんがの立ち読みをしていた。

小学生のころは本屋さんが身近にあって、
ひまなときは、近所の小さな本屋さんに通っていた。
いまでも鮮明に思い出すことができる、古びた店内にすこし暗い照明。

そんな小さい頃に通い詰めた近所の本屋さんは、
今はコインパーキングになった。
自転車で通ったブックオフは、コンビニになってしまった。

中学にあがってからは部活に忙しく、活字を読むことはなくなったが、
高校で帰宅部になり、ひまになると、また本を読み始めた。

高校のときは、ケイティペリーやワンダイレクションの洋楽にはまり、
本も海外文学を手にとるようになった。

「赤毛のアン」を読んで、カナダのプリンスエドワード島にいきたくなったり
「シャーロックホームズ」を真夏に、汗だくになりながら夢中に読み耽ったり
「シェイクスピア」で世界史を学びたいと思うようになったり・・・

本を読むことは、自分の世界を開いてくれる、夢の扉だった。


社会人になって自己啓発本やビジネス本を貪り読み、
本の中の「かっこいいビジネスウーマン像」を
演じてみたりもした。


わたしにとってのものがたりは、
ものがたりの生き方を追体験できる乗り物であり、
空想と現実世界の橋渡しのような存在。

もともと本を読むことが好きだったけれど・・・
本好きがつくる本、『あしたから出版社』に出会って
猛烈に、本を読むことへの渇望が込み上げてきた。

もっと早く出会いたかった・・・
そんな気持ちになるエッセイ本を紹介したい。

『あしたから出版社』 あらすじ

本当は就職をしたかった。でも、できなかった。33歳のぼくは、大切な人たちのために、一編の詩を本にすること、出版社を始めることを決心したー。心がこもった良書を刊行しつづける「ひとり出版社」夏葉社の始まりから、青春の悩める日々、編集・装丁・書店営業の裏話、忘れがたい人や出来事といったエピソードまで。生き方、仕事、文学をめぐる心打つエッセイ

あしたから出版社

作者が「ひとり出版社」をはじめた経緯、
ものづくりへの想いが綴られている。

自分自身の感情を言葉にするのは難しいし、
文面にすると整えられてしまうことが多い。
でも、このエッセイ本は、ありのままの言葉で伝えられている。
恥ずかしいことも隠してしまいたいことも、全部、等身大の言葉で。
紡ぐ言葉が、なんとも愛に溢れているのが、なんだか悔しい。

大好きな音楽、本の装丁、文学・・・
綴る表現は、愛に溢れていて、きっと素敵なものなんだろうなって
不思議と思えてしまう。
お気に入りがたくさんあることに、嫉妬してしまうくらいに。

ひとやものに、真摯に向き合ってきたことが伝わってくる文章。
そして、好きに向き合う、スタンスに憧れる。

文学にすべてがある。

つまり、「私」の言葉とはちがう、だれかの言葉を、その文章を、一所懸命、読み続けること。その言葉で、世界をもう一度、体験すること。思い出すこと。それが文学のいちばんの魅力であり、おもしろさなのだと思う。
すばらしい作品を読んだあと、世界は、これまでよりも鮮やかに見える。人々は、よりかけがえのないものとして、この目に映る。

あしたから出版社

いちばん共感して、大好きな表現。
時代背景のちがう文学を読むことは正直、たいへんだ。
挫折しそうになることもたくさんあるし、作者との相性もある。

けど、読後感の恍惚さがある。
はじめて太宰治を読んだとき、息がとまった。
ゴッホの「糸杉」を目の前にして、動けなくなったように。
圧倒的な才能と、運命に圧倒された。

類い稀なる才能を持つ人たちは、世界がどう映っているんだろう。
一生わからないけれど、文学を通じた対話は、すこしだけできる気がする。

文学を通じた想像は、自分だけのものだから。

決心さえすれば、だれでも、あしたから、あたらしい肩書きくらいはつけることができる。

あしたから出版社

さて、わたしは自分にどんな肩書きをつけたいのだろうか。
大人になるにつれて、自分の向き不向きを知って、
どんどん自分を小さな箱に押し込めているようにおもう。

そんな小さな箱から飛び出して、自分はなにをしたいのだろうか。
すべてを白紙にして、もっと向き合いたいな。

あしたから、なにがしたいのか、まだわからないけれど・・・
ひとつわかるのは、夏葉社の本が読みたい。

本屋さんにいって、自分だけのお気に入りを見つけたい。

来月からはじまる新しい生活、
あたらしいおうちの近くか、職場の帰りに本屋さんがあるような
おうちに住みたいな。

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