インボイス制度が与える住宅業界への影響とは?
みなさんこんにちは。
リブ・コンサルティングの篠原です。
本日は、インボイス制度が与える、特に住宅業界への影響と、それに向けたDX化のポイントとして「電子帳簿保存法」について話したいと思います。
これから大きく住宅業界に影響を与えるインボイス制度にまつわる内容になりますので、住宅・不動産業界テックの企業の方々には参考になる情報になっているかと思います。
インボイス制度とは
簡単にお伝えすると、政府が消費税を確実に回収するための新しい仕組みです。
インボイスと呼ばれる「税率」と「消費税額」を記した請求書(あるいは領収書や納品書)を用いて、消費税の控除の申請を行う新しい仕組みのことです。
インボイス制度が住宅業界に与える影響とは
このインボイス制度で大きく変化するポイントは「免税事業者」と「課税事業者」の関係性です。今までは、年間1,000万円以下の売上事業者は「免税事業者」と呼ばれ、消費税を支払う義務が免除されていました。
注文住宅やリフォームの業界では、発注元から一人親方と呼ばれる個人事業主の大工や内装屋に工事を発注する事はよくある話です。職人不足が深刻になりつつある住宅業界では信頼できる発注先となる腕のいい大工や内装屋は不可欠な存在です。
しかし、今回のインボイス制度は、インボイスを発行するために、消費税を納める「課税事業者」となり、公的な登録を受ける必要があります。
これがどういう事を意味するかと言うと、「免税事業者」と今まで通り取引を行う場合は、インボイスを発行しない取引となるため、発注元の業者(主に工務店)は、消費税の控除申請をすることができなくなります。
発注元の業者が、消費税の控除申請を行うためには、発注先からのインボイスの提出が必要となるので、免税事業者に「課税事業者」としての登録をしてもらう必要があります。
つまり、今まで免税事業者だった取引先に課税義務を負ってもらわないといけないのです。
消費税の免税ができないという事は、どのような事を意味するのか。
例えば、税抜2,500万円の新築工事を年間10棟請け負う工務店の場合は、年間売上が税抜2.5億円となります。
年間の仕入・外注費が税抜2億円とし、その内の15%(3,000万円)が複数の一人親方など免税事業者への支払い分だと仮定します。
そうすると、3,000万円に関わる消費税300万円分が消費税納付時に控除できなくなり、工務店への負担となる事に繋がります。これはとても大きな負担ですよね。
ただし、職人不足に悩まされている住宅業界の中では、取引先を無下に扱う事も憚られるのが現状です。
場合によっては、税負担を自分たちで負う覚悟の上で、「免税事業者」と今まで通りの付き合いを行う意思決定をする工務店も出ています。
このように、取引先との関係性の見直しを行わざるを得なく事業者や、税負担の増加を受け入れざるを得ない状況に追い込まれる事業者が出てくるというのが、インボイス制度が住宅業界に及ぼす影響の1つです。
また、インボイスが住宅業界に及ぼす影響の2つめは「手続きの手間」です。
インボイスを発行する為に「課税事業者」となった事業者には。以下の三つの義務が発生します。
・消費税の申告
・納税義務
・帳簿書類の保存義務(7年)
上記のように、帳簿書類を7年間保存する義務が生じますので、書類の管理の手間が生じたり、書類の申請の際には課税事業者となった際の登録番号を書類の1つ1つに明記する必要が出てきます。
小さな作業ではありますが、1つ1つの慣れない作業負担が増える事で、社員1人あたりの生産性の効率が落ち、粗利の低下に繋がっていきます。
このように、インボイス制度は、少なからず住宅業界に影響を与えているのです。
知っておいた方がいい「インボイスの電子化対応」と「電子帳簿保存法」
では、このインボイス制度に対応していくためにはどのような方法があるのでしょうか。
それがDXツールでの対応です。いわゆる電子インボイスによる請求書等処理業務の効率化を行うのです。
インボイス制度では、電子データ形式の適格請求書(電子インボイス)の送付や保管が認められているため、電子インボイスに対応したシステム・ツールを利用することで請求書等処理業務の効率化が期待できます。
電子インボイスに対応することで、請求書の印刷や郵送費用・保管スペースの削減などによりペーパーレス化を進められ、請求業務の負担を軽減できます。
システムの導入や、既存システムの改修コストがかかりますが、書類作成や管理の手間が大幅に軽減されると考えられるので、有効な手法と言えるのです。
しかし、この電子対応を進めるためには、1つのハードルがあります。
それが「電子帳簿保存法」です。
電子帳簿保存法では、電子上でやりとりした請求書・領収書・契約書などの帳簿書類は電子データのまま保管することが義務化されています。
現在は猶予期間中ではありますが、2024年1月以降から完全移行となり、それ以降は電子上でやりとりした請求書・領収書・契約書などの帳簿書類のやりとりは、電子データで保管していかないといけません。
このようにインボイスを電子対応するためには、「電子帳簿保存法」で定められた内容をクリアできるようにしておかないといけません。
インボイスへの完全対応が迫る今日この頃で、インボイスを電子化し、対応を進めたいという事業者は多く存在し、効率化できるDXツールを求める声はかなりの数が上がってきております。
「電子帳簿保存法」の内容をしっかりと抑えて、自社のSaaSサービスに組み込むことは、外部環境の変化の対応に苦しむ工務店や住宅会社に対して、求められるサービスへと昇華するための足掛かりの1つになるかもしれません。
このように、常に外部環境の変化に目を向けて、工務店や住宅会社の経営者が、手の届かない痒い所をポイントとして抑えてあげる事こそが、業界特化型のバーティカルSaasとしての存在感を増していく1つのヒントになるのではないでしょうか。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、「インボイス制度」と「電子帳簿保存法」という住宅業界にこれから影響を及ぼしてくるキーワードについて、話をしてみました。
自社のサービスを差別化していく上で、業界の経営者が気になっているが、対応に手が回らなそうなポイントを抑えておくのはかなり有効な手法です。
皆様のサービス改善がこの記事によって、少しでもいい方向に進んでいくことができればと思います。
株式会社リブ・コンサルティング
住宅・不動産インダストリーグループ
マネージャー
篠原健太
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