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近づく相続登記の義務化開始。不動産業界に影響を与える「相続登記の義務化」と不動産テックとの関係性とは

みなさんこんにちは。
リブ・コンサルティングの篠原です。

本日は、日本の不動産に大きな変化を与えるポイントになるかもしれない「相続登記の義務化」について話したいと思います。昨今の日本の不動産産業の課題にもなっている空き家問題にまつわる内容になりますので、住宅・不動産テックの企業の方々には参考になる情報になっているかと思います。

相続登記の義務化とは

簡単にお伝えすると、今まで任意であった相続発生時の”不動産所有者を被相続人から相続人に変更する登記”である「相続登記」の手続きが2024年の4月1日から義務化されます。

2021年4月28日に「民法」と「不動産登記改正法」の改正として交付され、いよいよその開始が近づいてまいりました。

内容としては、相続人が相続する財産に、土地や建物があると知ったときから、3年以内に相続登記することが義務化されるという内容です。

相続した財産の中に土地や建物があることを知らなかった場合については、そのことを知ったときから3年以内に登記をすれば法律上の問題はありません。
気を付けないといけないのは、過去に相続した不動産も義務化の対象となりますので、気を付けないといけません。

相続登記を3年以内に行わずに放置した場合は、100,000円以下の過料を支払う事になります。

相続登記の義務化が行われる背景

今の日本には、不動産登記簿を調べても、所有者の居住地や生死がわからない「所有者不明土地」が全国の約2割にもなる事が、2016年の国土交通省の所有者不明土地の調査で判明しております。
このような現状になってしまった理由の1つとしてあげられているのが、相続登記になります。
現在の法律では、相続登記を行わなくても罰則が特にないため、わざわざ費用がかかり、手続きの手間もかかる相続登記に手を付けない方がいいと思ってしまう方が一定数存在したという事です。

相続登記が行われないと何が起きるのか

では、そもそも所有者不明土地が存在する事で何がいけないのか。
1つ目は不動産取引に支障が出る事があげられます。
日本では、不動産登記簿で所有者が不明の土地は、同意が得られない為、売却・賃貸借などの不動産取引が原則できません。
隣接する土地の所有者が不明であることで、境界確定ができずに売却が進まないなどのケースも存在します。
特に昨今、多く散見されているケースとしては地方の不動産を相続した方の事例です。
地方の土地の資産価値が低下している事から、相続した土地を処分したくても、なかなか売れない。固定資産税や管理の負担だけが掛かってしまうという状況が、相続登記の未実施という結果を起こしてしまっている事があります。

また、管理者が誰かわからない空き家や空き地となると、草木の手入れが行われない事や、不法投棄先となったりすることで、近隣に住まわれる方々の住環境に影響を及ぼしてしまう事もあります。

このように、相続登記がされないことが、日本の不動産活用にとって、大きなハードルになっている現状があります。

相続登記の義務化が不動産業界に与える影響とは

冒頭でも触れましたが、日本の不動産課題の1つして議題に上がる「空き家問題」については、影響があるのではないでしょうか。

2018年に総務省が調査したデータでは、日本の空きや数は848万9千戸と言われており、全国の13.6%が占めています。

上述したデータでは日本の不動産土地の約2割が所有者不明との事なので、約170万戸もの空き家は、所有者がわからないというのが現状の実態ですが、これらの所有者が判明するだけでも空き家活用の市場がより活性化していく事が予想されます。

すでに活性化の事例として、空き家活用の領域では様々な事例が出始めております。
サブスク型を採用した賃貸ビジネスモデルでの活用や、コンセプトを強めたカフェや居酒屋としての飲食店利用。コロナが落ち着いてきたことから、旅行の活性化を見据えた地方空き家のヴィラ化などのリゾート展開なども活用の1つだと思います。

このように、現時点でも空き家を基軸としたさまざまなビジネスモデルが出てきている中ですが、これらの領域に参入してくるプレイヤーが増えてくることで、より日本の空き家活用領域に日の目が当たってくるのではないかと考えられます。

知っておいた方がいい「相続登記の義務化」と不動産テックの関連性

では、この不動産登記の義務化と不動産テックの事業との関連性はどのように出てくるのか。
 
それは、これらの不動産にまつわる情報の管理を、個人のエンドユーザーが、自分自身で情報の管理を徹底していかないといけない世の中になってきているという点にあります。
 
今までは、地場の不動産会社に管理を丸任せしていても問題は特にありませんでした。
それくらいの緩い規制だったものが、どんどん厳しくなってきています。
相続登記はその1つの例で、他にもこのような事が多く是正されていくことが、レガシー産業である不動産業界の今後と言えるでしょう。
 
エンドユーザーはこれから個人での情報を管理する為に使いやすいアプリケーションを求めてきます。
その商流をうまくつかむ事ができ、ユーザーとのリレーションを構築し、深めていく事ができれば、対エンドユーザー向けの事業を展開している工務店やハウスメーカーから求められるサービスになり得るという事に繋がるのではないでしょうか。
 
登記は今後、様々な技術で電子化されていきます。
不動産IDの存在や、NFT技術の台頭、法務省からの公図の電子データの無償一般公開などもその足掛かりではないでしょうか。
 
皆様が今、力をいれて展開しているSaaSのビジネスモデルや、これから思い描いている新規事業にこれらの要素を取り入れる。
すぐに取り掛かれなくても、事業構想のロードマップに組み込んでいくなどをしてみるのはいかがでしょうか。
先々の変化を見据えながら、これらの要素を取り入れていく事が、皆様の持プロダクトをよりとがらせていくための武器になり得るのではないでしょうか。

おわりに

いかがでいたでしょうか。
今回は、「不動産登記の義務化」という不動産業界に違いを生み出す内容について触れてみました。

不動産の領域は、エンドユーザーにとって身近な領域でありながら、専門性の高い領域です。
エンドユーザーもついていくのに精一杯な中で、個人で不動産にまつわる情報を管理し、自分自身の身を守らないといけない状況になってきています。
工務店やハウスメーカー軸だけでなく、エンドユーザーの軸に少し目を向ける事でも、新しい事業展開に向けたアイデアが出てくる事もございます。

今回の情報が、皆様の展開している事業や手がけるプロダクトへの成長に貢献できていれば幸いです。

株式会社リブ・コンサルティング
住宅・不動産インダストリーグループ
マネージャー
篠原健太

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