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『となりのせきのますだくん』武田美穂

読みながら、ちょっと、気になっていた。
みほちゃんのランドセルの色に。

ページで色合いが違うものの、青色。

いまは、ランドセルの色として普通の色のひとつではあるものの、
1991年の刊行を考えると、とても先進的なことのように思える。

『ランドセル130年史 : ランドセル130年の軌跡、そして…』(ランドセル130年史編纂委員会 編)という本に、2000年代初めにランドセルのカラフル嗜好が広まったらしい、という記述があり、青色のランドセルが一般的ではなかったことが窺える。

当時では、珍しかったであろう青色のランドセルを選ぶ子ども。
そして、子どもの選択を尊重して買う親。

みほちゃんは、自分の苦手な物ばかり列挙しているけれど、
自分をしっかり把握していて、自分の意見を持っている。
みほちゃんの両親は、そういう、みほちゃんを尊重している。
そういう親子の姿が思い浮かぶ。
みほちゃんが、やだな、と思いながらも学校に行くことができる、
その強さの秘密を垣間見たような気がする。

ますだくんのランドセルは、赤色。

一緒に校舎に向かう「ますだくん」とみほちゃんの後ろ姿で
絵本は終わるが、謎が始まる。

「ますだくん」と呼ばれているし、言動も、服装も、髪形も、
男の子っぽく感じたけれど、もしかしたら、女の子かもしれない。

乱暴だから男の子?
赤いランドセル背負ってると女の子?
男の子が赤いランドセルを選ぶのが意外?
髪が長いのが女の子で、短いと男の子?

男の子とか女の子って考える必要ある?
そう「ますだくん」に、言われている気がする。

女の子は赤いランドセル、男の子は黒いランドセル、
という風景が当たり前だった時代に、新しい子どもの姿を描き、
ダイバーシティが進むいまの時代に、ジェンダーレスを問いかける、
そんな風に読むこともできる奥深い作品だと思う。

<感謝の気持ち>
うちゃこ 様、素敵なイラストありがとうございます。
後ろ姿の「ますだくん」に感じた不思議を、同じ後ろ姿で表現されている!と感じて使用させていただくことにしました。

<すみませんの気持ち>
同じ作品について、別の感想も書いています。
どうしてもランドセルに着目した感想も書きたくなり、かといって、先に書いた感想にくっつけるのも私の力量的に難しく、こうした形にしてしまいました。すみません。

<すみませんの気持ち・続>
シリーズで読むと、「ますだくん」のランドセルの色の理由や容貌、性格がわかります。単独作品として深読みしすぎると、こういう感想を持つ人もいるんだ~~、へ~~~、とスルーしていただけたら幸いです。すみません。

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