見出し画像

峠の茶屋にて

 国道46号線は、秋田県と岩手県を結ぶローカルな交通の要衝。しかし、県境には奥羽山脈が立ちはだかっている交通の難所です。そこに建設されたのが、長ーい仙岩トンネルです。このトンネルを通る度、いつも思い出すことがあります。

 年に3回は、この道を通り、岩手大学での日本学校心理士会北東北支部の研修会に参加しています。これに出ないと、ライセンス失効になってしまいます。この資格は、1998年に取得しましたが、当時の研修会の会場は全て東京でした。ちょうど第一子誕生の年で、2年後には第二子、3年後の2001年には、第三子と続きました。

 まさに「イクメン」真っ最中で、11年ぶりに転勤したこともあり、結局は研修会の出席ゼロ。2003年で資格失効となりました。後々ステップアップして、次は心理臨床学会の「臨床心理士」資格取得という構想も崩れて、人生設計図の改変となりました。

 さて、仙岩トンネルの秋田方面出口の近くに「峠の茶屋」があります。ここのグルメは、おでん。確か田沢湖近くの駒ヶ岳が噴火した年、父の車で山の中に連れて来られ、おでんを食べた記憶があります。1970年頃なので、遠い遠い記憶ゆえ「なんで、山の中におでん?」と思っただけで、味などの記憶は消えています。

 さて、この店のおでんは、人気抜群と聞いています。しかし、それ以来50年余、訪れたこともありませんでした。2022年10月。学校心理士の資格復活制度により、面接試験を受けに岩手大学へ行くことになりました。なぜか妻と末の娘もついてきました。3人の面接官に37年間の教職キャリアで身に付けたスキルや知見を話し、まあまあの内容と自己評価。

 ただ、昼飯のタイミングを失ってしまい、峠の茶屋に寄りました。当然、おでんを注文。メニューに「おでん定食」という表記があり、きっと濃い味なのだろうと予想できました。ベランダ風の席に座り、壁に新幹線こまちの時刻表を見つけました。時間どおりに遙か下の谷底に列車が通過するとのこと。

 おでんが運ばれてきました。予想どおり、甘塩っぱい昔の味でした。最近の「塩分控えめ」に慣れた舌には、白飯が欲しくなるのも、当然のことだと思いました。ただし、私は味噌汁だけでご飯を食べた世代。久しぶりに「そうこなくっちゃ」と思いました。

 特に味が染み込んだ大根やゆで卵などは、通常の半分ぐらいの大きさで食することを、お勧めします。ここは、標高の高さやスリリングな眺めも味のうちです。谷底を秋田新幹線こまちが通過して行った時、田沢湖や角館方面を回ってきたと思われる隣席の人たちが、歓声を上げていました。満足そうに見えました。

右方向に走行中。後部に接続の跡が。

 そういえば、昔は「ドライブイン」と称する飲食店が、あちこちにあったものです。駐車場は狭く、供されるラーメン類も素人料理だったことも少なくなかったという記憶があります。今は「道の駅」が主流ですね。温泉やら特産物やらと、セールスポイントがないと、トイレの利用のみになってしまうようです。国道46号線沿いには、「森の駅」を名乗る場所がありました。今度寄ってみようと思います。

 最近は、高速道のSAに旨いものありと聞きます。例えば、東名の海老名SAが、ドライブの目的地になっているそうです。東北道にも、おもしろいメニューがたくさんあります。その探索も、楽しそうです。

 高速に限らず、知る人ぞ知る名店が、田舎にも点在しています。例えば、新潟県上越市に、誰もが驚く超美味なラーメンあり!また、羽田空港内に、ロールキャベツ・シチュー&ライスの名店「アカシア」あり!楽しみは、尽きませんね。すばらしきかな、B級グルメの世界!

 さて、旅行した場所で極めて美味だった物をおみやげとして持って帰るのは、いつものことです。しかし、自宅で食べてガッカリ経験はないでしょうか?私は、そんな思いを繰り返した末に、ご当地ポッキー等に行き着きました。すなわち、たわいのない物で済ませることにしているのです。なぜ、場所によってこんなに異なるのでしょうか?

 私は、なぜかスパゲティが嫌いです。何かトラウマがあるわけでは、ありません。嫌いな理由を明確に言うこともできません。せいぜい、弁当の付け合わせのナポリタンを一口で食べきるぐらいです。誰もが不思議がります。偏食は学生時代で卒業しました。よく、椎茸が入った料理は食えない人を見ますが、心理的な問題点を感じます。こうした偏食は、厄介ですね。

 嫌いな原因は、解決済みです。昔、フライ&ステイ9万円でローマをうろついた時、スパゲティを食べてはウマイを連発していました。本場だからという意識はなく、周りの人々が旨そうにすすっているのに吊られたのでした。食感や味に大きな違いはなく、雰囲気に飲み込まれたというところでしょう。「郷にいれば郷に従え」ということです。

 ご当地グルメは、ご当地で食べるのでうまいんです。土曜日夜に「ウマイ!」を連発する食レポ番組があり、通販の呼びかけもしていますが、注文したいという気になったことは、ありません。もし本当に食べたいなら、わざわざ出かけるつもりです。

 勝手な結論を言うならば、日常的に食べている物こそウマイと思います。生活している場の空気に合った物を、無意識的に食べているからです。少々味が足らなければ、ためらいなく醤油でもかけて食べたら良いのです。そして、近所には、必ずお気に入りに店があるはず。

 終わりに、私作の特製カレーをどうぞ。中身は、ヒ・ミ・ツ。これを炊きたてのツヤツヤした新米にかけると、あなたは昇天します。

具は意図的に隠してあります。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?