コスパな家なんて
2000年に自宅を新築。その時、最初に学んだのが「半値八掛け」というショッキングな業界用語でした。住宅メーカーは、施主が捻り出した資金の半値八掛けのコストの家を、堂々と販売しています。しかし、断じて違法ではありません。なぜなら、企業が利潤を追及していくのは、ごく当然のことだからです。
一般社会には「利益率」という言葉があります。売買に、利益が発生するのは、当然です。住宅メーカーでも、同じことです。ちなみに、テレビCMの料金は、1回の放映でも5000万だと聞いたのは、確か西暦2000年の時でした。そして、テルマエロマエの彼のギャラなど考えると、何度も放映する広告料だけで、天文学的数字になるでしょう。
また、社員に給与及び賞与を支払わなければなりません。福利厚生も必要不可欠。どんな企業においても、同じことです。私の経験は、車のディーラーでのこと。半額の250万で下取りした車が、380万の中古車として出されてすぐに売れたそうです。130万の利益です。驚きましたが、普通の売買だと聞き流されて終わりでした。
「半値八掛け」の世界は、現実です。
その言葉を知る前に、大失敗をするところでした。家を建てると決めてから、有名メーカーが競って展示している、住宅展示場通いが始まりました。どのメーカーのモデル・ハウスでもセールス・トークは、バスとキッチンの自慢話に集中していました。どちらも、その住宅メーカーの製品ではありません。その時何かが変だと思いました。
いわゆる「口車に乗る」寸前まで行きましたが、急に冷静になりました。なぜ、真っ先に自社の住宅のPRをしないのだろうか?展示場を出る時、モデル・ハウスの裏側を見て驚きました。1件のモデル・ハウスなのに、尋常ではないエアコン室外機の数。如何にして豪華さをPRして、客の購買欲を刺激するか。苦心の様子が、ミエミエでした。
夫婦の話題は、夢物語から現実に戻り、電気料金の話になりました。この家だけで、1ヶ月の電気料金は、いくらなのだろうか。素敵な家具やインテリアなどは、住宅に備え付けではない。当然、自分で買い揃える必要があるなど、施主となるには知らないことが多すぎることに気づかされました。
そこで、日頃から懇意にしてもらっている地元工務店の棟梁に、相談してみました。やはり「餅は餅屋」と言うとおり、半値八掛けの事実を教えてくれました。例えば、施主が2000万支払ったとするとどうなるか驚くべき事実が判明したのです。これが商売の常識だと、教えられました。避けられない現実は、ここに示すとおりです。
① 住宅メーカーの利益が1000万
② 下請工務店に200万のキックバック
③ 実際の住宅建築費は800万也!
建築に携わるのは、多種多様な職人さんたちです。基礎工事屋さんから大工さんに続いて、電気、水道、塗装、内装など、書ききれないほどの職人さんたちが出入りします。そして1人の職人さんが、1日働いたら、相場は2万円が常識です。延人数×2万=?
家の装備と言えば、まずはキッチン、トイレ浴室、洗面所といった水回りでしょう。さて、お風呂で入浴できるまで、いくらかかるでしょう。まずは、給湯設備が必要です。我が家は、石油ボイラーでしたが、通常1台40万です。お風呂設備は、ピンキリでしょうが、だいたい150万とします。その代金を支払って終了ではなく、施工費用もかかり、締めて200万と単純計算ができます。
棟梁さん曰く、「住宅という箱作りなどはせいぜい300万程度の材料費で済む。ただし、外壁のサイディングやガリバリウム合金製の屋根は、意外に高い。だから、定期的な保護塗装が必要になってくる。困るのが、ユニット・バスやシステム・キッチン、そしてトイレなどのメーカー品の買い入れだ」と聞きました。
そして、想像以上の費用がかかるのは、建物を支える「基礎」なのです。ちなみに、普通サイズの我が家で500万!ただし、手抜き無く施工するという条件での話です。いわゆる「建売住宅」などでは、基礎がどうなっているかについては、確認のしようがありません。ちなみに、手抜きの基礎で建てられた家は、寿命がたったの25年だそうです。
新築住宅に住んでいらっしゃる方。床下を見る方法は、ありますか?ある人は、「床下収納があるからわかる」と言いますが、床下の地面である基礎部分は見えますか?そこだけプラスチックの桶状態だったら、本当の基礎部分は確認できませんよ。
住宅の基礎は2種類あります。「布基礎」と「ベタ基礎」です。これを知らずに家を持つのは、非常に危険です。先ほど述べたように、住宅の寿命に大きく影響するからです。まず「布基礎」とは、家の枠組みを受け止める目的だけで作られている構造です。それ以外は、土丸出しの地面です。優良なる「ベタ基礎」は、家の下全面がコンクリートで、当然床下もコンクリートで、地面とは完全に遮断されています。
もう、おわかりかと思います。土には、自然そのものの水分が含まれています。それが住宅の床面に与える影響など、容易に想像できるでしょう。基礎部分の横に、申し訳程度の通気口があっても、良いことなどあり得ません。しかし、コンクリートによって地面と遮断されているとすれば、どうでしょう。ここが、運命の分かれ道なのです。
私は、新築内覧会に出かけるのを趣味?としています。まずは、セールスの方に「基礎は何ですか?」と質問。建築を担当していないからなどと言うようでしたら、既に怪しいです。更に「床下を見ることは、できますか?」と畳みかけると「当社の住宅は、床下が密閉されていますので」という回答で、布基礎判明。アウトの宣告をしてもいいですが、あくまで冷やかしなので「そうなんですか」と、驚いた演技を見せるだけにしておきます。
更に「断熱は、どうなっていますか?」と、尋ねます。「FPです」という回答なら、70点。そうでなければ、グラスウールという綿状の物が、壁に詰め込まれています。これは、夏場の輻射熱の元凶です。しかも、隙間ができやすく、結露も発生しやすくなり、断熱性も問題があります。夏暑く、冬寒い家のできあがりです。ですから、「外断熱ですか?それとも内断熱ですか?」という質問でバッターアウトが宣告されます。
お風呂やキッチンなどは、別メーカー製ですので、住宅業者が自慢するのは、おかしな話と言えます。注文住宅ならば、オプションに当たるので、予算に合った物を指定するのが、当然でしょう。セールス担当が、その便利さをPRするのは、筋違いです。もし、住宅の優れた点を言うならば、住宅の機密性を数字で示すのが一番良心的でしょう。その計測は今や容易になっているはずです。
2000年頃は、地元の不動産会社や工務店以外の大手住宅メーカーの家は、限られていました。今は、雨後の筍現象で、林立状態になっています。どの会社に頼めば良いのか、素人判断では、どうにもなりません。
私は、先の棟梁さん(二級建築士)にお任せして、設備費、材料費、人件費、工務店の利益に至るまで明らかにしてもらいました。明らかな予算オーバーでした。そこで、工務店の利益は操作せず、設備や材料のコストダウンをじっくりと相談しました。
まずは、水回り設備。棟梁さんは、展示場から、安く買い取って来てくれました。車で言うと、試乗車に当たります。まず、ユニットバスが、150万→80万。食洗機付きキッチンやトイレ2セットは、マイナーメーカーの展示品を直接買ってくる。お客さんの指紋付きでしたが、水を流したり、裸のお尻が触れたりしていない物です。そして、大型のサッシは10万→5万。ほとんど、半額で仕入れてくれました。
そして、究極の選択。壁紙なしの家。ただしトイレ、洗面所、キッチン+食堂だけは防水の壁紙にしてもらいました。家中が、ベニヤ板にラッカー塗装のみの壁。このコストダウンは、想像以上でした。新築時は違和感があったものの、24年の歳月でいい感じになっています。
ここまで書いて、HPのブログに同じようなことを書いていたことを思い出しました。文章もダラダラと長くなりましたので、紹介させていただきます。翻れば、家は買わぬが一番で、借家やアパートで充分なのです。
このブログを読んでも家を買うつもりの方には、「カウンセリング本荘」にて、コンサルテーションの要請をお受けします。どうぞ、ご利用ください。 fin.
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