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マレーシア国立公文書館で見つかる「China」とは?

 こちらの記事でマレーシア国立公文書館に所蔵されている「China」関連の史料の規模や調査のクセについて書きましたが、

今回は具体的に「China」で検索するとどんなタイトルがついたファイルや文書が見つかるか、中国とマレーシアの関係にも言及しながら書いていきます。

マレーシア・中国関係

 マレーシアはその地理的な条件から古来より中国文化と交わりがある国です。中華系住人も多く住んでいます。しかし、現代国家としての関係はスムーズではありませんでした。マレーシアの中華系住人が共産ゲリラを組織したこと等が影響して、中華人民共和国との国交正常化は1974年になります。つまり、その前までは中華民国(台湾)と交流を持っていた事になります。
 これらの事からマレーシア国立公文書館所蔵の「China」がタイトルについている史料はマレーシア国内問題としての「China」と外交問題としての「China」が混在しているという事です。

マレーシアにとっての「China」問題

 戦後、建国された東南アジアにとって国内の中華系住人をどのように国民統合するかというのは大きな問題でした。それはマレーシアも例に漏れません。マレーシアの場合、アジア太平洋戦争で中華系住人中心のマラヤ共産党がイギリス植民地政府から合法化され日本と闘い独立に貢献した側面があります。戦後、再びイギリスに対する反植民地闘争やマレーシア政府による民族差別との闘争などもあり現在では反愛国的な治安を見出した不穏分子としてマラヤ共産党は総括されています。1969年にマレーシアでおきた中華系住民とマレー系住民の衝突事件である513事件にも共産党の影響があったと疑われています。
 そして中心メンバーが中華系住人が多数だったため、マレーシアの華人は共産主義テロリストのレッテルが貼られ強制収容区のような所に移住させられたり、マレーシア国内で中国語教育を禁止されたりします。このような状況だったので、中国共産党に対する警戒心もありました。

マレーシア華人研究所に貼られていたポスター。
国民戦線に投票し中国・マレーシア国交樹立を呼びかけるもの。


マレーシア国立公文書館にある「China」

 マレーシアと中国の国交樹立が1974なので、それ以前の公文書における「China」は中華民国か国内の華僑の事を指します。以下の章からは個人的に気になった記録を抜粋して紹介します。

XX1/1966-K25  Formal notes China
XX1/1967-K25 Formal notes china-1967
XX1/1968-K25 Formal notes china-1968
XX1/1969-K25 Nota resmi-Republik china-1969
 
 これらXXから始まるナンバーが降られたファイルはいずれも外交関係の文書で、中華民国クアラルンプール総領事からマレーシア外務省に送信された電報です。パスポートの発行や経済援助や国連外交、他にも中国共産党とマレーシア共産党に関係するゆさぶり工作ともとれる電報などがあります。

(024)206/3/1-7 DIPLOMATIC LISTS PEOPLE REPUBLIC OF CHINA
XX2/1974-K25 People’s Republic of China-1974
 
 こちらは記録の開始が1974年以後なことPeople's Republic of Chinaの名前が振られている事から、こちらがいわゆる中国とのやり取りや関連する記録になります。個人的に興味深いものとしてマレーシアの卓球チームが北朝鮮に訪問するため香港へ滞在し広東省で北京行きのビザ申請をした記録があります。

1983/0006665.R.S.M. 89/68 The Committee of Management for The voice of China and Asia missionary society, Penang;
1983/0006173.R.S.M.359/66 The Selangor Chinese Muslim Association(Persatuan Islam China Selangor)2A, JALAN BATU TIGA KLANG, SELANGOR

 こちらのR.S.Mの番号がふられたファイルは国内行政の文書です。ペナンで登記された中華系キリスト教宣教師の団体に関する記録、セランゴール州の中華系ムスリム(回民)の団体の記録です。


まだまだ紹介しきれないですが、マレーシア国立公文書館における「China」はまだまだあります。自分がマレー語が十分にできないためここで紹介しているのはほんの一部にすぎません。


その他参考文献やVTR
日本マレーシア学会 マレーシア研究。マラヤ共産党の特集号  

http://jams92.org/pdf/MSJ07/msj07_full.pdf

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