彼と別のパーティーに/青春物語23
会社と、会社に隣接する倉庫が見えてきた。
私たちはその近くのマンション前でタクシーを降りた。
雪がフワフワと舞い始めていた。
「101号室で二次会するって言ってたけど まだいるかな?」
「どうしよう。ついて来ても良かったのか今頃、心配になってきた」
「大丈夫だよ。みんな歓迎するって」
彼はドアから少し離れてインターホンを押した。
その後ろに隠れるように私は立っていた。
「こんばんは。永尾です」
「おお〜待っていたよ」
そう言って何人か玄関に顔を出した。
と同時に私の顔を見て驚いていた。
その中の一人が「永尾が女の子連れて来たぞ〜」と振り向きざまに言った。
「こんばんは桜田と申します。私もお邪魔していいですか?」
「どうぞどうぞ。入って入って」
私の声を聞いて同期の女の子二人がやって来た。
「わあ桜田ちゃん。久しぶり。こんな所までどうしたの」
「なんかこっちでパーティーするって聞いたから着いて来ちゃった」
「あれ?本社もパーティーじゃなかった?」
「そうなんだけどこっちのが楽しいかな?と思って」
私は好奇の目にさらされながら同期の天野ちゃんの隣に座った。
そこには萩原さん始め、何度か本社に来ていた黒田課長、古賀主任たち男の人が数人いた。
私にビールを差し出しながら古賀主任が言った。
「永尾の彼女?」
「いえ違います、違います」
私はぶんぶん首を振った。
マンションは独身寮も兼ねていて、101号室はワンルームで集会所に使われていた。
「まさか桜田ちゃんが永尾さんと来るとは思わなかったよ」
だいぶ馴染んだ頃、天野ちゃんはお菓子を手渡しながら言った。
「うん。ここで二次会するからって永尾さんに聞いてはずみで着いて来ちゃった」
「永尾さんが来るって聞いていたけど まさか二人で来るなんてさ」
「なんか急にそう言う流れになっちゃって」
「永尾さんとだから来たんでしょ」
天野ちゃんとは去年の研修で仲良くなっていた。
最近の永尾さんへの気持ちを彼女だけが知っていた。
「うん。一緒に行こうと言ってくれたから嬉しくて」
「気持ち、伝えたの?」
「まだ。今のところ片想いでいいやと思ってる」
「そっか」
「見て。この乙女心を知らずにバカやってるよ」
私は向こうで騒いでいる永尾さんを見つめていた。
「今日どうするの?」
「考えてなかった。天野ちゃんは?」
「私はこの上の寮に泊まるんだ。先輩の部屋に」
「みんな泊まるの?」
「男の人たちはここで雑魚寝するって。飲み明かすんだって」
「私も泊めてもらえないかな?帰れないもん」
そう言って私は天野ちゃんに手を合わせた。
気に入ったものがあれば、サポートしていただけますと大変ありがたく思います。 この先の執筆活動の励みになります。 どうぞよろしくお願い致します。