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李琴峰の2022年振り返り

 先日、33歳の誕生日を迎えました。
 年末に誕生日がある人にとって、歳を取ることと1年を送ることがほぼリンクしており、誕生日になると、また1年が終わってしまったのか、という感慨にどうしても耽ってしまいます。

 2022年は色々なことが起きましたね。ロシアによるウクライナ侵略戦争、神道政治連盟のLGBT差別冊子配布事件、安倍元首相銃殺事件、そしてその後の統一教会をめぐる一連の騒ぎ。Twitter買収によるオンライン環境の悪化、防衛費の増額と増税、台湾と中国の緊張関係など、世界がまたもや歴史的な分岐点に来ているのではないかと感じずにはいられません。

 プライベートでも色々なことが起きました。別れと出会い、悲しみと喜び、傷つきと闘い、そう書くとあまりにも日常的に聞こえるから決して伝わらないだろうけれど、これらのことを含めて、全部、いつかは生きる糧、そして作品のインスピレーションにしてやろうと誓います。

 結局、2022年は何をしたのだろう? ふと振り返ると、ずっと忙しくて何かに追われていたような気もするし、何もしていなかったような気もします。傍からはそう見えないかもしれませんが、個人的には、2022年は雌伏の時だったように感じ(「雌伏」という言葉は女性差別的であまり好きじゃないですが)、何かを急ごうと思っていたが様々な事情でエネルギーを削られ、仕方なく静かに力を蓄えるしかなかった1年でした。しかし、ここで蓄えた力は決して無駄ではなく、いつかより高く跳ぶための準備になれればいいと考えています。

 以下、2022年の仕事をまとめてみます。
 未読のものがあったら、ぜひ年末年始の読書にいかがでしょうか?

 仕事関係の皆さま、2022年お世話になりました。
 2023年も、引き続き宜しくお願い致します。

【出版した書籍】

『ポラリスが降り注ぐ夜』中国語版(台湾、尖端)
『独り舞』英語版(イギリス、World Edition)
『彼岸花が咲く島』中国語版(台湾、聯合文學)
『ポラリスが降り注ぐ夜』文庫版(ちくま文庫)
『独り舞』文庫版(光文社文庫)
『透明な膜を隔てながら』(エッセイ集、早川書房)
『向日性植物』(李琴峰が日本語訳した小説、光文社)

【連載中のもの】

小説『肉を脱ぐ』(『ちくま』2022年6月号から連載中)
エッセイ『日本語からの祝福、日本語への祝福』(『一冊の本』2022年5月号から連載中)

【発表した小説】

「怨念花が呪う島」(『ことばと』Vol.5)
「プロジェクト・バベル」(東京新聞・月刊掌編)

【発表したエッセイ・書評・評論など】

※連載や、既に『透明な膜を隔てながら』に収録したものは除く

「年の始まりで令和を偲ぶ」(『赤旗』)
「家飲み派のためのブックガイド」(『dancyu』2022年4月6日号)
「九つの鮮やかな世界」(週刊文春、『「その他の外国文学」の翻訳者』書評)
「作家を作った言葉」(『STORY BOX』2022年5月号)
「差別に加担しないためのインターネット・リテラシー」(『シモーヌ』Vol.6)
「夜の闇が、すべてを受け入れてくれる」(『東京人』2022年6月号)
「誇れる母校」(『早稲田学報』2022年8月号)
「無自覚の「真実」への問い」(『共同通信』配信、村田沙耶香『信仰』書評)
「死より生まれ出づる始まりの物語」(『tree』)
「生き延びる物語」(『小説宝石』2022年8・9月合併号)
「私は古里を持たない──鹿児島市を歩く」(ニッポンドットコム)
「配慮の歪み 現代の空気映す」(朝日新聞、高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』書評)
「より良い未来を目指す希望の書」(『赤旗』、ショーン・フェイ『トランスジェンダー問題』書評)
「歌舞伎町の夜に抱かれて」(『すばる』2022年12月号)
「行けなくなった地獄――桜島を巡る」(ニッポンドットコム)

……書き出してみると、それなりに仕事をした気がしてきました。自己の客観視は大事ですね。

それではみなさん、よいお年をお迎えください。

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