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LGBT関連のNGフレーズ集

 セクシュアル・マイノリティを題材に小説を書いていると、時々意味不明なことを言われたり、よく分かってもいないのに「分かっているつもり」で上から目線の評論を書かれることがあります。

 よほどひどいもの(「レズビアン小説を書くならエロスが必要」とか「外国人が書くLGBT小説という枠を越えられていない」など)については都度講演のネタにしたりエッセイで反論しているが、いちいち言い返すのも疲れるし、自分の基準はどこにあるのだろうと自問する時がある。

 この記事では、実にありふれた言説から、実際に言われたことがあるものまで、私が考える「セクシュアル・マイノリティを扱う作品を批評する際のNGフレーズ」や「セクシュアル・マイノリティの人々について語る際のNGフレーズ」を羅列してみる。自分用のメモも兼ねて。思いついた時に都度追加するし、読者の方も、何か思いついたらぜひ教えてください。

 中には絶対に「NG」とは言わないまでも、文脈的に適切かどうか再三確認しなければならないものもある。

※2020/9/13追記:
普段LGBTやセクシュアル・マイノリティについてあまり考えていない人にも分かるように、何故これらの評語はNGか/気をつけなければならないのか、という説明を付け加えました。
怒り指数高め。

・「禁断の恋/恋愛」
 →同性愛は禁断でも何でもないんで。
・「知られざる世界」
 →知らないのはあなただけでしょ。
・「LGBT小説」
・「カミングアウト小説」

 →必ずしもダメではないが、これらのレッテルで片付けて「分かったつもり」にならないことが大事。
・「LGBT枠」
・「ダイバーシティ枠」

 →いやそんな「枠」なんてないって。人を勝手に枠に押し込めようとすな。
・「流行りのLGBT」
 →やはりでもブームでもなんでもない。タピオカみたいに言うな。ずっと昔から存在しているし今も生きている人間だ。流行りとしてしか見られないあなたの感性にがっかり。
・「同性愛は今や全く平凡な題材」
 →同性愛など性的少数者が異性愛と同等の社会的地位と権利を手に入れ、平等が保証されるまでは、「平凡な」などとは安易に言わないこと。
 →もちろん同性愛を書くだけで自動的に「新しい」作品になることはないが、それは異性愛についても同じ。異性愛を描く凡百の作品について誰も「異性愛は今や平凡な題材」なんて言わないでしょ? なんで同性愛についてだけ言いたがる?
・「LGBTという言葉は市民権を得て久しい」
 →いや得てないって。差別されているし権利を保障されていないし苦しんでいる当事者がたくさんいるって。
・「ただの同性愛の恋愛/小説/作品ではない」
 →「ただの」だと悪いんかい?
・「同性愛という枠を超えた」
 →だからそんな枠がないし仮にあったとしても越えなくていいって。
・「性別を越えた愛」
・「女の友情を越えた愛」

 →いやいや越えてない。同性愛は同性愛だよ。むしろ性別を越えてるのは異性愛の方だろうが。
・「新しい愛の形」
 →別に新しくも何もないって。ずっと昔から存在する人間だって。
・「レズビアンの男役/女役」
 →レズビアンとは「女性を愛する女性」のことであり、男役も女役もあるものか!
・「同性愛も異性愛も変わらない/違わない/同じだ」
・「同性も異性も関係なく、愛はみな同じ」
・「異性も同性も隔てることのない『人としての愛』」

 →安易に同性愛を異性愛と同一視し、普遍化し過ぎると、同性愛ならではの性質(差別されている現状、差別されてきた歴史、生きる上での社会的な障壁)を見落としがちになる。「みんな同じ」と思考停止するのではなく、「違いがある」ことを認め、「違いを強要されている」現状を踏まえてものを言った方がいい。
・「同性愛が登場するとはいえ、描かれているのは普遍的な人間の物語だ」
 →「とはいえ」ってなんだ? 同性愛が登場すると普遍的な人間の物語になりにくいとでもおっしゃりたいのか?
 →「普遍」を強調し過ぎると、同性愛にまつわる現実を見落としがちであるというのは、先述の通り。
・「作中人物は親密な関係にあるが、同性愛とは言い切れない」
 →同性愛だと言い切ると何か不都合でも? 「確かにこの人は犯行の疑いがあるが犯人とは言い切れない」みたいに言わないでくれる?
・「登場人物は同性愛という設定だが、別に同性愛である必要/必然性はない(だから異性愛という設定でいいじゃん)」
 →必然性がなくて悪かったね。で、異性愛である必然性はどこにある?
・「1万人いれば1万種のセクシュアリティがある(だから同性愛は特別じゃないしあえて取り上げる必要はない)」
・「みんなどこかしらマイノリティ性を抱えている(だからLGBTのマイノリティ性を取りたてて強調する必要はない)」

 →いずれもセクシュアル・マイノリティが受けている社会的差別、生きる上での社会的障壁を矮小化し、無化することに繋がりかねない。
・「隙間産業」
・「普遍性がない」
・「マイノリティ要素てんこ盛り」

 →死ね。

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作家、日中翻訳者。台湾出身。最新刊『星月夜(ほしつきよる)』⇒ https://amzn.to/3i50f9u。群像新人賞優秀作。芥川賞、野間新人賞候補。 公式サイト→http://likotomi.com