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プライド・クルーズ大阪2024 スピーチ原稿

 2024年5月25日、「プライドセンター大阪」主催のイベント「プライド・クルーズ大阪2024」に、私・李琴峰はスペシャルゲストとして参加し、スピーチをしました。

 以下、スピーチ原稿をここに掲載します。3分間くらいの短いスピーチです。
 この原稿は、日本のクィア・コミュニティに広く伝えたいことでもあります。ぜひご一読ください。

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 皆さんこんにちは。小説家の李琴峰です。
 スピーチをしてほしいと言われましたが、プライド・クルーズは初めてでどんな話をすればいいのか分からないので、原稿を書いてきました。
 
 皆さんもご存じの通り、ここ5年間で、日本のクィア・コミュニティを取り巻く状況に大きな変化がありました。
 同性婚訴訟が行われていて、違憲判決が積み重なっています。トランスジェンダーが強いられてきた不妊化手術は最高裁で違憲判決が出され、無効となりました。
 私たちが書いている歴史は、間違いなく正しい方向へ、少しずつ進んでいます。
 
 しかし一方、私たちの権利を頑として認めようとせず、私たちの存在を消し去ろうと企んでいる人たちもいます。
 政治の場では、保守派の政治家によるヘイトスピーチが繰り返されています。ネット上でもヘイトが溢れています。いくつかの出版社が臆面もなくヘイト本を出し続け、街でもヘイトデモが行われています。
 私たちが存在しているというこれ以上にないほど明白な事実を受け入れるための、最低限の知性すら備わっていないような人間が、かくも多いのかと、悲しい思いをする方もたくさんいらっしゃるでしょう。
 
 しかし、どうか希望を持ってください。私たちが対抗しているのは、人類の数千年の歴史に根差した、3つの神話なのです。
 人間は必ず異性に欲情するという、異性愛規範の神話。人間は生まれてから死ぬまで決して性別が変わることがないという、シスジェンダー規範の神話。そして、男女が子どもを生み育てるために婚姻制度があるのだという、伝統的家族観の神話。
 この3つの神話は人類の歴史の中で、ごく最近までまったく挑戦されてきませんでした。そんな途方もなく長い歴史を考えると、私たちはすでによくやっているのです。誇りを持っていいのです。
 私たち――総人口のたった5%くらいしかないと言われている、クィアの私たちが、歴史を変えようとしているのです。
 
 私たちにはそれができます。なぜなら、神話が定着するよりもずっと前に、太古の昔から、私たちはすでに存在しているのです。過去に存在したし、今も存在しているし、これからも存在し続けるでしょう。
 だからこそ、私たちの存在を消し去ろうという反知性的な試みは、決して成功しえないのです。
 
 来週で6月になります。6月は、クィアの私たちが自らの存在を祝うプライド月間です。来週を待たずに、今日から祝いましょう。存在を、人生を、私たちが作ってきた歴史を、ともに祝いましょう。
 ハッピー・プライド!
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こちらはイベントの報道動画です。

https://www.youtube.com/watch?v=oES-dATew98

※動画の中で私を「LGBTであることを公表」と紹介していますが、これは問題のある紹介の仕方です。私は「レズビアンであることを公表」しているのであって「LGBTであることを公表」しているわけではありません。「LGBT」は総称なので、この書き方だと「老若男女であることを公表」と同じで、正確性を欠く表現です。 

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