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Vol.19 ぎんざNOW! ③お笑い編

「素人コメディアン道場」

この番組でもっと人気があり、またこの番組の功績を語る上で欠かせないコーナーです。
アマチュアによるお笑いコンテストの形式で、5週勝ち抜きでデビューのチャンスが与えられるというものでした。当時人気だった歌手オーディション番組「スター誕生('71~83年)」のお笑い芸人版といったところです。

テレビをみることが若者たちや子どもたちの生活の中心になり、そこで華やかに活躍する歌手やタレントはあこがれの対象でした。
「テレビに出て有名人になりたい」という密やかな思いを当時の誰もが持っていたものです。
またテレビやラジオを通して一般視聴者の文化・創作レベルも向上しはじめていて、制作側にも「金の卵」を捕まえたいという意向も少なからずあったと思います。

それまでテレビや映画の出演者は「特殊な」存在であり、才能もさることながら厳しい訓練(稽古)と経験を積んでスキルを高め、かつ運に恵まれた者だけが勝ち取ることの出来るポジションでした。
ところが70年代になると深夜ラジオをきっかけに視聴者が番組に参加することが一般的になり、これがその後ひとつのスタンダードとなります。
そもそも民間放送はスポンサー企業のCMで成り立っていますので、番組と視聴者(=潜在顧客)の距離が近くなることは喜ばしいことで、「投資の結果」を追求するのであればこれもベストなやり方のひとつと言えます。
ただ、それはアマチュアイズムによるクオリティの低下を伴い、その結果視聴者が離れていくという現象にもつながってしまうこともあります。

プロのしがらみのないアマチュアの自由な発想や手法はその時代をキャッチすることに長けていますが、後々まで残る名作を生み出すということは少ないように思います。時間や流行の変化によって淘汰されてしまうことがほとんどであり、それは今の時代でも変わっていないと思います。
いまのYouTubeの人気者たちが未来に残る作品を生み出すためには、もう少し時間がかかるかもしれません。
YouTubeは何かを残すものではないという見方もあるかもしれませんが、それではもったいないようにぼくは思います。


プロになったアマチュアたち

ぎんざNOWから出てきた人気者たちもその後この試練を通ることになります。中にはすでにデビュー前提で芸能事務所のプッシュにより素人風に現れたタレントの卵もいますが、多くは時代が生んだアマチュアタレントでした。

関根勤(当時はラビット関根)や小堺一機のように今でもお笑いのジャンルで活躍している人もいますし、竹中直人や柳沢慎吾のように俳優としての才能を発揮することに成功したケースもあります。チャンスを捉えるだけでなく、努力を惜しまない才能にも恵まれていた人たちです。
ただほとんどは当時熱狂的人気を得ながらもプロの壁を超えずに消えていきました。
特に80年に漫才ブームを起こした芸人達の訓練されたプロフェッショナルなスタイルは、こういったアマチュアイズムを駆逐していったものです。

ぼくが個人的によく覚えているのは竹中直人です。
漫才やコントというよりも演劇的なアプローチでしたが、圧倒的な存在感がありました。松田優作(ジーパン刑事)のモノマネの「なんじゃ、こりゃあ!」も竹中直人がオリジナルです。


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