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地域に長く愛される拠点として「食の栄養循環」をつくりたい

2021年4月より、博多と熊本で展開するホテルでコンポストを導入されている、株式会社ミナシア
ミナシアが運営するホテルウィングインターナショナルセレクト博多駅前では、現在、お客様にご提供する朝食の残さを、キッチンのシェフやスタッフのみなさまがコンポストに投入し、できた堆肥を使って作られた野菜を朝食として提供する食の循環を行っています。

私たちLFCとNPO法人循環生活研究所は2社で連携し、本コンポストのメンテナンスと堆肥の回収、そしてその堆肥を使って育てたお野菜をお届けしています。

今回は、その株式会社ミナシア 代表取締役社長 下嶋 一義様とLFC代表のたいら由以子の対談が実現しました。
コンポスト導入のきっかけから、ホテル業界におけるコンポストの可能性、今後の展望についても。ぜひ、読んでみてください。



 お客様にも「食の栄養循環」を始めるきっかけを提供したい

たいら由以子 ローカルフードサイクリング株式会社(以下たいら):
社名である「ミナシア」の語源は、社員のみなさんと一緒に考えた「みんなが幸せに」という意味で、それを実現するために、地域に愛されるホテル運営を目指し継続的な取り組みをされていると伺っております。
その中で、なぜ、今回コンポストに取り組まれたのでしょうか?

下嶋 一義 株式会社ミナシア 代表取締役社長 (以下、下嶋氏):
きっかけは社員です。
私達は、その街に長く愛されるランドマークをつくることを目標として掲げています。これを事業の中で表現する一つの提案でした。
提案してくれたのは、ホテル運営に関わる橋本です。LFCコンポストについて自主的に調べ、自宅で使ってみた上で、会社でも取り組めそうだということで提案があり、始めさせていただくことになりました。

確かに、自分達のレストランからでた生ごみを堆肥化し育てた野菜を、弊社のレストランで提供する「食の循環」ができれば、環境にもとても良いですよね。
まだコンポストをご存じない方も多いと思いますので、私達が取り組むことで、お客様にとっても「食の循環」を始めるきっかけになればと思っています。

たいら:社員の方がコンポストを提案しても、コンポストに理解が得られず、なかなかその提案が通りづらいことがあるかと。
橋本さんの熱意と、それを通された下嶋社長のお二方とも素晴らしいなと感じました。

下嶋氏:会社のバリューの一つに「とにかくやってみよう」という言葉があるんです。もともと会社のカルチャーとして、各現場に権限を委譲していて、自分たちのホテルをどうすればもっとよくできるか、というアイディアを出し合う風土があります。
だから、とにかく社員にはいろんなことにチャレンジしてほしいと思っています。

たいら:そういう土壌がある、形成されているんですね。
今回取り組みで出されている朝食のお客様の反応はいかがですか?

下嶋氏:入口にもLFCコンポストバッグとコンセプトブックが置いてあるので、それを見てから食事会場に入っていただく流れになっています。ご説明をすることによって、お食事の味わいも変わってきますよね。

 「生ごみ」が ただの「生ごみ」ではなくなった

たいら:LFCコンポスト導入後は会社でどのような変化がありましたか?

下嶋氏:実は私自身、現場の運用を理解するためにも、2021年6月からLFCコンポストを自宅で始めてみたんです。そうするとフードロス削減を意識したり、生ごみ焼却の先にある二酸化炭素が気になったり。

あと生ごみに対する意識も変わりました。
ホテルの料理人も、コンポストで分解しやすいように、生ごみを細かく切るようにもなっていきましたね。そうすると、ただの「生ごみ」ではなくなって「コンポスト君にあげる食べ物」という意識になり、分解しやすいものやしにくいものも、きちんと意識するようになりました。

たいら:素晴らしい!
実は、生ごみをすてなくなると、ビニール袋とかレジ袋とか必要なくなるので、ビニール類が一気に減らせる効果もあるんですよね。
さらに、生ごみを堆肥化することで、生ごみに含まれている炭素を凝縮できます。その堆肥を畑に入れることで、土の中に炭素が貯留できるので、低炭素につながるんです。それをまた野菜たちが吸収して緑化にも繋がるので、二重にも三重にも良い取り組みなんですよ。


 堆肥の回収場所が地域の循環拠点へ

下嶋氏:個人で利用する際に難しいと思ったのは堆肥の使い道ですね。
我が家は庭がそんなに大きくないので堆肥が溜まってしまい。受け入れ場所があればもっと始める方も増えるのではと感じました。

たいら:現在LFCでは、個人のご利用者様向けに「MyLFCファーマー」という取り組みをしています。これは、農家さんに堆肥を送っていただくと、その堆肥を使って野菜を育ててくれて、数ヶ月後に野菜になって還ってくるというサービスです。

全国に広がるLFCファーマー

下嶋氏:それはいいですね!

たいら:また、対面のリアルイベントとして、堆肥の相談回収会も各地で行っています。例えば、ミナシア様と連携したら、各ホテルを地域の食の循環拠点に育てていくということもできそうです。

下嶋氏:それぞれの都道府県で完結すれば一番良いですよね。

たいら:そうなんですよ。具体例の一つとして、毎月、東京・赤坂のレストランで農家さんと連携した堆肥相談回収会をやっています。
ユーザーの皆さんが、ご自身の自宅でできた堆肥を持ってきて、そこにきた農家さんが販売している生ごみ堆肥を使った野菜を買って帰る、そんな循環です。
農家さんにとっても、野菜を持ってくるための車のスペースを利用して堆肥を持ち帰り、また畑で野菜を育てることができる。


東京・赤坂の堆肥回収会の様子

ホテルウィングインターナショナルセレクト博多駅前のレストラン前のスペースは、それができるんじゃないかなと思いました。

下嶋氏:私達が取り組んでいる地域連携のプロジェクト「おらが町プロジェクト」というものがあります。それぞれの地域とどうやって連携するかが課題ですが、まさに今おっしゃられていたことはその一つの形になりえますね!


ミナシア社が展開する「おらが町プロジェクト」の公式サイト https://www.hotelwing.co.jp/oragamachi/

たいら:本当に!例えば、福岡の地元野菜「カツオ菜」はお正月の雑煮に入れるんですけど、すごく出汁が出るおいしい野菜なんです。連携する農家さんがそういう地元野菜を育てたりするとより特徴が出ますよね。

 今後に取り組んでいくことは 「いかに知ってもらうか」

対談中のミナシア下嶋氏(右)とLFCたいら(左)

たいら:実は、映画『TERRA』や『もったいないキッチン』でも取材いただきましたが、私自身、コンポストの仕組みを作るにあたっては、ニューヨークやロサンゼルス、ドイツなど海外にも視察に伺いました。
その中で思ったのは、どこも見せ方が非常に上手だということ。ポスター1枚とっても、とてもたのしい仕組みに見えるんです。
だから、私達も現場ではおしゃれな自転車を楽しく漕いで、生ごみ堆肥を集めたりして、たのしく参加してもらえる設計にしています。

下嶋氏:それは個人でやられていたんですか?

たいら:それは私が約30年前に立ち上げたNPOのチームで立ち上げた仕組みです。一般の方が作った堆肥を持ち寄ると、月に1回野菜を少しもらえる仕組みにしたんです。
集まった堆肥は1600㎡のコミュニティーガーデンで私達が追加の熟成をして野菜を育てるんですが、そうしていると野菜が欲しい人も沢山集まってきてくれて、そういう方がコンポストをしたらとってもいいよね、という流れです。
そういう流れを、この場所で作れたら嬉しいです。

下嶋氏:そうですね。そういう活動を知らない人が多いですよね。できることがあればぜひ協力したいです。
私達も去年、福島県の須賀川市で彼らの課題である工作放棄地を一部借り上げて、我々で栽培と収穫をしました。
収穫したニンニクは金沢大学の生徒さんに新しいメニューを開発していただいて、福島県の課題解決も、収穫したニンニクでPRもできました。

福島県耕作放棄地の様子より(提供:株式会社ミナシア)

たいら:地元の生産者さんや学生さんも巻き込んだ課題解決型プロジェクト、素晴らしいです。できた野菜のその先が決まっていると、安心して育てられるというのは農家さんも同じですね。

 最後に : 今後の展望

下嶋氏:今、SDGsやESGという観点でホテル業界も意識が高くなっていて、当社でも脱炭素のためにアメニティを変更したりしています。一方、食の分野ではまだコンポストを取り入れているというのはあまり聞いたことがない。
多分まだ知られていないだけで、良い取り組みであれば積極的に取り入れるチェーンも増えるのではと考えています。
ただ、我々だけで循環する仕組みを作り上げるのはなかなか難しいと感じています。そういった仕組みもセットでぜひ一緒に作り上げていただければとおもっています。

たいら:ありがとうございます。
私達は生ごみ焼却ゼロを目指していて、今ある栄養を持続可能なかたちでしっかり地域で循環し続けるという方向に持っていきたいので、ミナシア様のように先行した取り組みをぜひ発信いただけると追随してくださる企業様も増えていくのではないかと思っています。これからもぜひ、よろしくお願いいたします。


街に愛されるランドーマークとしてのホテルを目指して、一人の社員の熱意から始まったコンポスト活動。それが、会社の中にとどまらず、お客様や社会との関係性にもつながっていく。

そして循環の仕組みは、1社ではなく複数での連携で、という言葉を下嶋様にいただき、私たちも改めて、地域での循環を進めていきたいと考えております。












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