過去の取り組み〜ハラスメント防止ガイドライン等施策

こんにちは、合同会社Level 19です。

本日は、昨年弊社が公演の制作業務を行なった際に実施した「ハラスメント防止」のための施策についてご紹介させてください。


どんな公演で施策をうったの?


昨年2021年12月、黒澤世莉が主宰する
あたらしいあつまりの “演劇サークル” 「明後日の方向」
の 行き先を探すための公演『赤目』 を上演し
弊社は、その制作業務を担当いたしました。


本年(2022年)、演劇界・映画界ではハラスメントに関する様々なニュースが、主にSNS上でたいへん話題となっています。

その影響を受け、業界内をより良い場所にするために、ワークショップ参加者募集や公演の出演者募集オーディションのタイミングで、「ハラスメント防止ガイドライン」を発表(または防止の意思表明などを)する団体が、少しづつ増えてきたように感じます。

ところで、昨年上演した『赤目』では、一足早くカンパニー内におけるハラスメント防止のための施策をうちました。

●施策1:ガイドラインの共有


イギリスの劇場ロイヤルコートシアターが、2017年に発表した「ハラスメント防止のための行動規範」を、日本語訳したものを座組み内で共有しました。

上記リンク先は原本です。

『赤目』カンパニーでは、常田景子さんが翻訳された日本語版を使用しました。
このガイドラインには、
・ハラスメントを防止するために一人一人が持つべき心構え
・どのようなことがハラスメントに該当すると定義するか
などについて書かれています。
皆様も、ぜひ一度、GoogleやDeepLなどで翻訳してみてくださいね。


●施策2:契約書の締結


各スタッフ・出演者と契約書を締結しました。
これまで多くの「小劇場」と言われる現場では、契約書を結ばずに口頭やメールでのやりとりのみで仕事の依頼が成立することがほとんどだったように思われます。
昨今、労働者保護から契約書の必要性が問われていました。
ですが当然、契約書があれば、ハラスメント対策の一つとしても大きく作用します。

『赤目』の公演制作に際して、弊社と契約関係に当たる全キャスト・スタッフと、契約書を締結し、公演に臨みました。
これは、弊社にとっても初めての試みでした。

契約書には、出演料や細かな権利関係の取り扱いのほか、新型感染症の影響により公演を中止せざるを得なくなった場合の取り扱いについても記載されました。

例)〇〇の時点で中止の場合、報酬の△△パーセントを支払う、など明記


なお、契約書の締結に際し、キャストとスタッフは早めに契約を結べたものの、一部のスタッフ(主に制作・演出周り。若手も含む)については、正式な文面のやりとりが遅くなってしまった、という失敗もありました。

(内輪の手続きなどが遅きに失するのは、団体としての甘えであり、大いに反省すべきことです。この場をお借りして、該当者の皆様に再度のお詫びを申し上げます)

しかしながら、このような失敗を経て、改めて契約書の大切さを認識しました。
契約書を取り交わすことで、まず、フリーランスをはじめとしたアーティストの皆様が守られます。
そうすると皆様は、より安心してそれぞれのお仕事に臨めます。

一方、会社もまた契約書によって守られ、信頼という、何にも替えがたい大切な資産を築けるようになるのだと、実感しました。


●施策3:報告システムの設置


オープンで明確な報告システムを、組織内に設置しました。

万が一、ハラスメントだと感じることがあったり不安を感じた場合、それを報告できる場として、男女一人ずつ「相談相手」を設定しました。

ハラスメントは、男性から女性に対して行われるパターンの他にも、男性から男性に、女性から男性に、女性から女性に…その他にも、いろいろな状況が想定されます。
同性にしか報告したくないケース、異性に相談したいケースもあると思われたので、男女一人ずつを設定することになりました。

「相談相手」の氏名と直通の連絡先がカンパニー内で共有され、同時に(当然ながら)報告者が望む限り、秘密は保持されることも伝えました。

また、ハラスメントに加えて様々なご意見があった場合に備え、気軽に文字ベースでの相談(報告・意見の投げかけ)ができるよう、Googleフォームでの「ご意見窓口」も設定しました。

結果、相談者も、ご意見窓口もどちらも使用されることなく終わりました。

外部機関への相談窓口の設置なども含め、今後も、より安心できるようなシステム作りをしていきたいと思っています。

これからも


さて。
一般的には、ハラスメントを防止するためには、
主催団体、主催者、演出家やプロデューサーや制作、その他あらゆる「権限」を持つもの、(実態はさておき、持っているように見えるもの)が、これまでよりも一段と強い意志を持って、ハラスメント防止を意識しながら行動することが求められている…
と、言えると思います。

冒頭ご紹介した、ロイヤルコートシアターのガイドラインの中には、それに加え、
参加者一人一人も、自主的に責任感を持つ必要がある
という主旨のことが書かれています。

例えば、このような1文があります。

オープンで明確な報告システムを持つこと。一つの組織内に、三種類の報告システムを持つべきである。直属の上司や経営陣のみならず、仲間や同僚を活用すること。組織内の全員に責任がある。(訳・常田景子)

困ったことがあったら、周りに助けを求める。
そして参加者全員が、仲間や同僚が困っていたら、それを助ける意志を持つことが望ましい。
そういった意味での「責任がある」という意味だと、読めると思います。

日本の小劇場界のハラスメント対策は、まだ始まったばかりです。
これからも、より安心して稽古・本番に臨める環境づくりを、積極的にしていきたいと思っています。


このような活動を積極的にしている黒澤と、一緒に作品作りがしたい方は、以下のお問い合わせから、ご連絡をいただければ幸いです。