読書感想:「暴走老人!」藤原智美

「暴走老人」…老人が他者をどなったり、暴力をふるったり、犯罪行為までするのは何故なのか。「時間」、「空間」、「感情」の3つの視点から描かれている。タイトルから想像されるような、迷惑行為をする老人を非難する内容ではなかった。暴走する老人への対処法などは特に書かれていない。
「時間」の章では特に「待つこと」「待たされること」に関して考察されている。

「待つこと」(「待たされること」)が加速度的に省かれているにもかかわらず、私たちは「待つこと」のストレスから解放されないということだ。時代が待たなくていいように「便利」になるほど、「待つこと」のストレスは膨張し大きくなる。「待たされる」ことに過敏になる。

「暴走老人!」藤原智美

この本の内容からはズレるが、「暴走老人」に対して思った事を書く。
老人が暴走する原因、時代の変化に対応しきれない苛立ちや孤独感からだけで起こるのではなく、単純に加齢による脳機能の衰えから、怒りや衝動を抑えられなくなっている、という理由もあると思う。暴言や暴力をぶつけられる他者から見れば迷惑であり災難なのだが、老いによる衰えと言うのはどうしようもない部分もあると思うし、誰にでもいずれはやってくる事でもある。正直、自分がいつか「暴走老人」になってしまう可能性がとても恐ろしい。衰えて感情のコントロールが困難になっている事にすら、自分では気づけないのが質が悪い。勝手に相手が悪いと思い込み、ますます周囲から疎まれてしまうのは悲しくて恐ろしい。

この本が出版されたのは2007年、ケータイが普及しだした頃のようだ。
今は2024年。それでも本書で上げられた問題は解決するどころか、老人に限らず各世代余裕を失っているような意見を目にする。

#読書 #読書感想文 #暴走老人

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