見出し画像

2013年の日本に転生した非モテ

※この物語はフィクションです

北関東の栄えている都市部に住む36歳
JTC勤務の中堅社員で独身
仕事ではそこそこ成果を出して認められてはいるけど彼女はいない。
元々恋愛に奥手な僕は、そのうち彼女ができて結婚できると思っていたけど結局そういう未来はやって来ずに今に至る。

最近は異世界転生系のコンテンツが流行っている。
アイドルの子供に生まれ変わるという転生ものまで出てきて日本は本当にこの手の創作に関して得意な人種なのかもしれないなと思う。
これだけ流行っているということは異世界転生して活躍するという話に共感する人が多いのだと思うが、僕は異世界に行きたいとは思わない派である。
思考が現実的というか、まだ恵まれた方の環境にいるからそう思うに至らないのかもしれない。

ただ、もっと恋愛に力を入れておけば良かったなと思うことがある。
真面目に働いて旅行などの趣味を謳歌してこの年齢、周囲の友人知人が家庭を持っているのを見ると少し思うところはある。
結婚は個人の自由であるという風潮が強くなっているが、可能であれば自分が理想とするような女性と一緒になって家族を作ってみたいという気持ちはある。僕には遠く及ばないとわかっていても気持ちを完全に消すことはできないのが辛いところだ。

そうして今年もGW前の4/28(金)
いよいよ明日から休みでテンションが上がるのを抑えながら車で家に向かうも、いつも通り渋滞していて帰宅まで30分近くかかった。
僕が住むのは築浅の1LDKだが、立地がすごく気に入っている。
近くにショッピングモールがあり、窓からかろうじて見えるのだ。
ショッピングモール好きな僕としてはこのアパートは神立地である。
さて、今日は事前に購入してある大好きなビール、ヒューガルデンホワイトを飲みながらアニメでも見ようかと夕飯の準備を進める。
グラスにビールを注いで飲もうかというその時、急に胸に激痛が走り息ができない…視界がちらつく…床に倒れ込むも視界が真っ白になり意識が遠のいていく…僕は死ぬのか?
終わる時は結構呆気ないものだな……
……普通の恋愛……したかったな………………

頭がぼーっとするがゆっくり目を開けると違う部屋にいた。
自分が何をしていたか、どこにいたのかもあやふやで頭が回らない。
あれ、見覚えのある部屋だ…そういえば僕は夕食の支度をしていて、それで倒れたような…待てよ、ここはどこだ?
意識がしっかりして来たところで目を開けると、どこにいるかハッキリとわかった。あり得ないことだが、自分が昔住んでいた東北にある1Kのアパートの部屋だった。
えっと…これは夢か?
時間を確認しようとスマホを探すといつも使っているiPhone12ではなくiPhone4sである。日付を見ると2013年のGW初日土曜日、時刻は7:25。
ちょうど10年前にタイムスリップした?
いや、死んだから転生と言うのか?
タイムスリップだとしたら未来のことが丸わかりで大儲けできる!

・・・あれ?
ぼーっとして未来に何が起こるか思い出せない。
なんだろう、遠い過去のことが思い出せないような感じ。
でも、恋愛に関する内容だけは鮮明に覚えている。

あんな失敗したな、こんな失敗したな…という記憶。
概ね失敗しかなかった辛い記憶たち。
これは恋愛についてやり直せという神様からのプレゼントなのか?
仕事のこともぼんやりしか思い出せないが、それについてはなんとかなるだろう。逆に地獄のような時を鮮明に覚えていたらその方がキツイ。

それから1時間ほど当時を思い出すためにあれやこれや調べ、概ね思い出して感覚のチューニングが完了した。

さて、せっかく過去からやり直せることだし、死ぬ前に後悔した恋愛方面でスキルUPできるように何かしなくては。
僕はとりあえず女性の口説き方や、ナンパ関連の情報を探すべくネットを漁り、いくつもヒットする中でとても面白い内容のブログを見つけた。

「六本木でナンパしながら起業する」

タイトルもさることながら内容が非常に面白い。
ロジカルかつリアリティのある文章。
読んでるだけで心が熱くなり、その華々しい成果に感動を覚えた。
まるでアーティスト…

僕もこんな風になれたら恋愛コンプレックスなんてなくなるだろうな。
できるなら僕もこの人に近づきたい。
心の底からそう思い、ブログの内容を数日かけて読破した。
そして、ブログの中に出てくる「THE GAME」という書籍を購入して何度も読み込んだ。

ただ、その本を読むに初心者の僕には色々なことが足りないとわかった。
女性を口説く技術だけでなく、ファッションや髪型、会話や距離感、体型や姿勢、所作などの普通の人ができるだろうことが足りないと感じた。
それに、いきなりナンパはハードルが高かったので、僕は2023年では絶滅したと思われる街コンと合コンに参加しながら少しずつPDCAを回してスキルアップしようと考えた。


それから8ヶ月が経過
2014年2月

このタイミングは明確に覚えている。
僕は1歳年下のとても素敵な女性を紹介されたが、結局振られて終わってしまった。
僕にとっては理想的で、当時のドラマ「失恋ショコラティエ」に出てくる石原さとみのような印象を受けたので、心の中で勝手に役柄の名前を取ってサエコさんと、その理想の女性を呼んでいた。
あまりにも理想的だったので僕はその後7年間も引きずったのを今でも鮮明に記憶している。

しかし幸いなことに今は転生してやり直せる状況にある。
それに、この8ヶ月間で恋愛スキルは大幅に向上したと思うし、せっかく過去に転生したからにはこの状況から変えていきたい。
強くそう思った。
ただ、結果から言うと振られてはいないが上手くも行かなかった。
上手くデートできたと思ったが脈なしだなとわかってしまったので今回は告白せずそのままスルーした。やはり経験値が足りなかったのだと思う。
もっと街コンや合コンなどでブログの主人公であるasapenさんのように女性をゲットできるような男になる必要があると実感した。

その3ヶ月後、こちらに来て丁度1年くらいが経つ頃、僕は初めて女性を家に連れてくることができた。これまでにないアツイ展開。街コンでLINEを交換し、メッセージを続け、夕飯デートをしてここまで辿り着いたが意外とスムーズだった。
しかし、これまで沢山ブログを読んでいたのに緊張もあってどう振る舞えば良いか全くわからなくなった。
そして相手は全然帰る気配がない。
どうしよう…部屋に来て1.5時間程度は話している。
女性と距離を詰めるなんてどうすれば良いかわからない。
いや、知識はあるので本当は頭ではわかっているけど行動できない。
時刻は22時半、もたもたしていると相手が帰ってしまう。

ここで僕はどこかのブログで読んだ方法を思い出した。
「どんなキスが好き?」
この質問が突破口になり、相手の答えに対して
「じゃあ試してあげるよ」
と切り返して距離を詰めることに成功した。

そこからは上手く最後まで進めることができた。
僕の歴史上で非常に大きな一歩だったと思う。
ただ、好きになれる相手かと言うと別にタイプではない。
なので、よく言うセフレという感じで付き合いが継続した。

2014年9月

僕の28歳の誕生日に奇跡が起きた。
最初の人生?では何も起きずに同僚と飲みに行った記憶しかないが、今回の人生では2月に振られたかと思っていた理想の女性から連絡がLINEが来た。
びっくりして内容を見ると、
「誕生日おめでとうございます、素敵な一日を(^ ^)」
しかも僕の誕生日の時刻に送ってきてくれていた。
これは確実に意識している…絶対無駄にしてはいけないチャンスと思い、デートに繋げようとメッセージを繋いだ。

2014年9月28日(日)

理想的に好きな人とのデート。
修行の中でデート自体は何回も経験しているが、理想的な女性とデートすることがこんなに緊張すると初めて知った。
東北なので都市部に住んでいると言っても当然車が必要となり、僕の車で彼女の家まで迎えに行った。
到着すると、彼女は僕の大好きな日本酒をプレゼントしてくれた。
しかも、僕の好みの日本酒。
事前に伝えたわけではないが、きっと万人ウケする美味しいものをチョイスしてくれたのだと思う。彼女の気遣いは終始他の女性と比較して頭抜けていたし、それについても僕は心から感動していた。

初回のデートはなんとか上手く行った。
「THE GAME」やブログで読んだ知識を拙い状態であるが活用して彼女を魅了できたと思う。
そして問題なく次回のデートにつながった。

2014年10月14日(火)

2回目のデート
今回も彼女は喜んでいたし、僕はとても満たされた気持ちになった。
そして、3回目のデートを待たずに僕は彼女の家の前で告白し
なんと驚くことにOKをもらうことができた!

あまりにも嬉しくて、2週目の人生に心から感謝した。
これが好きな人と付き合うということか。
恋愛修行をして良かった…本当に良かった…

これで僕の思いは成就したようなものだ
転生した僕だが、この後はどうなるのだろう?
死んでいるのだから未来に戻るという話はないだろう。
では、このまま人生をやり直せるということか。
それは本当に、控えめに言っても最高過ぎた。

それから10月中には彼女の両親に挨拶をし、11月には僕の両親に会ってもらった。この子と結婚すると思っているのだから何も問題ない。
ディズニーシーにも遊びに行き、好きな女性との初めてのお泊まりも経験した。何もかもが夢のようで、今まで少し馬鹿にしていたディズニーの世界が本当に夢の世界のようだった。

2014年12月20日(土)

クリスマスということで、僕にとっては少々高いと思うお店のディナーに彼女を連れて行った。金額にして2人で1万円程度のイタリアン。そのお店で僕は彼女にクリスマスプレゼントを渡してプロポーズの言葉を添えた。
彼女は泣いて喜んでくれた。
あぁ、こんな幸せがいつまでも続きますようにと心から願った。

2014年12月末

彼女が僕の実家の方に遊びに来てくれた。
東北から埼玉までは少々遠かったと思うが、彼女は積極的に遊びに来たいと言ってくれた。
僕は先に車で帰省していたので、帰り道は車で一緒に東北まで帰った。
いよいよ結婚か…年齢的にも丁度良いし、隣には理想的な彼女。
何も言うことはない。

2015年1月年明け

彼女が体調不良になった。
具体的には明かされなかったが精神的なものらしい。
LINEの返信も辛い状況とのこと。
僕は心配しながら彼女に何かできないか考え、とりあえず彼女の家に行くも母親が出てきただけで、彼女は顔を見せなかった。
思ったより症状が重いようだ。
確かに11月中旬に帯状疱疹になったと言っていたし、仕事を辞めたいなと言っていたのでストレスが高かったのかもしれない。

2015年3月

彼女の体調は一向に良くならない。
薬を飲んでいるとは聞いたが、簡単には治らないらしい。
月に2、3通に減ってしまったLINEのメッセージ。
心配するメッセージを送ると「頑張るから嫌いにならないでほしい」とメッセージが返ってきた。
僕は何があっても彼女を支えようと決心した。

2015年5月

僕は振られた。
彼女の症状が悪化したようで、僕と付き合っているという事実も負担なようだった。「別れてください」とメッセージが来た。
もう少し様子を見てからでもと食い下がったが彼女の気持ちは固かった。
僕は目の前が真っ白になった気分だった。

どこにぶつけて良いかわからないこの気持ち。
病気による判断だとしたら、まだ望みはあるかもしれない。
でもダメかもしれない。前にも後ろにも行くことができない牢獄にぶち込まれ終身刑を喰らったようだった。最初の人生では振られて7年も引きずったが、今回の結末の方が更に辛かった。

僕は1つ決意した。
望みがあっても、ダメでも恋愛スキルは必要だ。
再会することがあれば彼女を魅了できる男になっている必要がある。
例えダメでも彼女を超える女性を魅了する必要がある。
僕は「ナンパ」の世界に本格的に踏み込むことを決めた。

そしてネットでナンパブログを読み漁り、1つ素晴らしい成果を出している人を見つけた。
その人は白沢という男で、ミッドタウンレジデンスに住む富裕層。
ブログの内容が本当であれば美女ばかり頻繁に持ち帰っている。
そしてその手法がロジカルでわかりやすい。
ブログ内で無料で公開するにはあまりに有益な内容だった。
これが本当ならどんな男なのか会ってみたいと強く思った。

その男はナンパ講習を行なっており、3つのメニューを提供していた。
座学コース、実際の声かけコース、コンサルコース。
僕の目的はその男に会うことなので最も安い1万円の座学コースを選択して予約を入れた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?