見出し画像

進々堂で、朝食を。

京都の原宿こと、北山にて。

 「ここが京都の原宿だぞ。」
 そう言ってゼミの指導教員に連れてこられたのが、北山だった。奈良から近鉄京都線に乗り、竹田駅で乗り換え、地下鉄北山駅へ。京都府立植物園の最寄り駅でもあり、田舎生まれの自分でも分かる品のいい空気を感じたことを覚えている。原宿の事も東京の事も京都の事も詳しく知らないのに、関東の地名で例えられてもいまいちピンとこなかったのだが。
 何かの調査があって京都を訪れたはずだったが、自分たちの足は進々堂北山店へ向かっていた。現地調査のはずがグルメ旅へと目的が変わる、本末転倒な旅は自分と教授の旅ではしょっちゅう起こることだったので特に疑問も生じない。慣れない早起きをしたのだから腹ごしらえをしたかった。

 進々堂。関西にお住いの人はご存じかもしれない。京都市内で複数展開しているパン屋さんである。北は北山、南は京都駅まで。ただ単にパンを売るだけの店舗やカフェスタイルでドリンクと共にパンを楽しめる店舗、そしてモーニングやランチなど豊富なメニューを揃えるレストラン形式の店舗など様々なバリエーションがある。何といっても上品な香りがする。こんなパンが食卓に並ぶ家庭は、たぶん成城石井で食料品を買いこむし、車はフィアット500だろうし麻のシャツとか着てレコードで音楽聞いてる。偏見ですけども。
 そんな進々堂の中でも、北山店は最上級のサービスを揃えるレストランスタイルの店舗だった。そこでモーニングを食べる。そもそも朝食を外食することが滅多にないので、興奮を覚えつつ店内に入った。欧風な雰囲気がする店内に入ると、パンとコーヒーの入り混じった匂いがこれでもかというほど胃袋を刺激してきた。
 一番高いモーニングセットを注文した。分厚いハムに、ふわふわのスクランブルエッグ、焼き立てパンとコーヒー。周りを見渡すとマダムたちが朝食をとっている。そんな中で男二人でモーニングを食らう。
 「どうだ、これが京都の朝食だぞ」
 いろんな所に行っていろんなご飯を食べたけど、ご当地チェーン店というのは心をくすぐる旅のアイテムである。
 自分は、京都といえば進々堂。たった一度味わっただけでも覚えている。
 全国チェーン店と個人経営の狭間で、地元意識を絶妙にくすぐるアイテムだと思う。同胞意識といいますか。ケンミンショーが根強い人気がある理由が分かる気がした。

朝ごはんを食べるという事

 朝ごはんなんて一人暮らしを始めてから数えるほどしか食べていない。大学生のころは夜通し遊んでいたし、社会人になってからは朝はギリギリまで寝ていたい。行きつけのパン屋さんを見つけてコーヒーを淹れて朝食をとる、そんな理想はいつまでも理想のままだと思う。京都の北山で、朝ごはんに、2000円使うというのはもはや異文化体験に近かった。だから4年経った今でも進々堂の事を覚えている。忘れられない朝食のひとつである。

 皆さんも印象的な朝食はありますか?もしあればお聞かせください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?